火災保険の基礎知識

自然災害被害の補償は火災保険・地震保険を確認しよう

投稿日:2022年3月10日 更新日:

日本では台風や地震、大雪など毎年のように何らかの自然災害の被害が発生しています。こうした自然災害の被害を受けた場合、その補償の第一番手となるのが火災保険や地震保険です。火災保険や地震保険の補償内容や、公的支援だけでは足りないのかといった情報について紹介します。

自然災害被害への補償は火災保険が基本

住宅が自然災害の被害に遭ってしまったときに、その補償の基本となるのが火災保険です。火災保険は火災だけでなく自然災害や盗難など住宅に関する幅広い補償を受けることができます。

損害の種類内容
火災、破裂・爆発落雷失火・延焼・ボヤなどの火災、ガス漏れなどによる破損・爆発の損害、落雷による損害を補償。
風災・雹災・雪災台風等の強風による損害、雹(ひょう)や霰(あられ)による損害、豪雪の際の雪の重み、雪の落下などによる事故または雪崩により生じた損害を補償。
水災台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、高潮、土砂崩れなどにより生じた損害を補償。
水濡れ給排水設備の故障や他人の戸室で生じた事故による水濡れ損害(水漏れ)を補償。
物体の落下・飛来・衝突車の飛び込みや飛び石など建物外部から物体が落下・飛来・衝突したことにより生じた損害を補償。
盗難家財の盗難や盗難に伴う鍵や窓ガラス等の建物の損害を補償。
騒擾・集団行動等に伴う暴力行為集団行動などに伴う暴力行為・破壊行為による損害を補償。
破損・汚損など子どもが室内でボールを投げ、窓ガラスが破損してしまった等、事前に予測して防ぐことができず、突発的な事故によって生じた建物や家財の損害を補償。

落雷補償

落雷によって火災が起きた場合や屋根が破損した場合だけでなく、過電流によってテレビやパソコンなどの家財に損害があった場合も補償を受けられます。なお、落雷によってパソコンが故障してしまった場合、パソコンそのものは補償されますが消失してしまったデータは補償対象外となりますので注意が必要です。また、保険会社によってはノートパソコンは対象外となっている場合もありますので確認しておきましょう。

保険の対象
建物家財
落雷により火災が起きた
落雷により屋根瓦が破損した×
落雷による過電流で家電が故障した×
落雷によりパソコンのデータが消えた××

風災・雹(ひょう)災・雪災補償

火災保険では風災補償、雹災補償、雪災補償がセットになっています。風災とは、台風、旋風、竜巻、暴風等により生じた損害のことを、雹災とは、雹またはあられにより生じた損害のことを、雪災とは豪雪の際の雪の重み、雪の落下などによる事故または雪崩により生じた損害のことをいいます。

保険の対象
建物家財
台風による強風で屋根瓦が破損した×
強風で飛んできた物が壁にぶつかって破損した×
強風で軒下に置いてあった自転車が倒れて壊れた×
雹で窓ガラスが割れた×
雹で太陽光発電のソーラーパネルが破損した×
雪の重みでカーポートがつぶれた
(※自動車は対象外)
×
雪崩に巻き込まれて自宅が倒壊した
融雪洪水で床上浸水の被害を受けた××

※融雪洪水は水災補償での補償となります。

水災補償

台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石などによって、建物や家財に所定の損害を受けた場合に補償を受けることができます。火災保険の水災補償では一般的に、次のような支払基準が設けられています。洪水などの被害に遭っても支払基準に満たない場合は保険金は支払われません。

  • 建物(家財)の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合
  • 「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」によって損害が生じた場合
保険の対象
建物家財
豪雨による洪水で床上浸水の被害に遭った
豪雨による土砂崩れに自宅が巻き込まれた
台風による高潮で床上浸水の被害に遭った
雪解け水で川が増水・氾濫して床上浸水の被害に遭った
洪水の被害に遭ったが、床下浸水にとどまった××
洪水により自動車が水没した××

地震・噴火・津波の被害は地震保険

地震・噴火・津波は火災保険では補償されず、火災保険とセットで加入する地震保険の契約が必要となります。地震保険は政府と保険会社が共同して運営する公共性の高い保険で、どこの保険会社で契約しても補償内容や保険料は変わりません。

地震保険では地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失による被害を補償します。

保険の対象
建物家財
地震による揺れで建物に損害が生じた×
地震による揺れで家具・家電などが倒れて破損した×
地震による揺れでストーブが倒れて火災になった
地震による津波が発生し、建物・家財が流された
噴火による溶岩流や噴石などで建物・家財が破損した
地震による避難生活中に盗難被害に遭った××

保険金はいくら受け取れる?

自然災害による被害を受けたときに保険金はいくら受け取れるのでしょうか?火災保険と地震保険に分けて紹介します。

火災保険

火災保険で受け取れる保険金は損害保険金と費用保険金に分けられます。

損害保険金

損害保険金は風災や水災などで損害を受けたときに、その損害に対して支払われる保険金です。損害保険金として支払われるのは損害額(修理費用や再購入費用)から免責金額(自己負担額)を差し引いた額です。ただし、契約時に定めた保険金額が上限となっています。

損害保険金=損害額-免責金額

※支払われる損害保険金は保険金額が上限です。

なお、免責金額について昔の契約の風災補償などでは20万円未満の損害では保険金が支払われず、20万円以上の損害では損害額全額(保険金額が限度)が支払われるという契約(フランチャイズ方式)になっている場合があります。契約内容をよく確認しておきましょう。

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費用保険金

火災や自然災害の被害を受けた場合、片付けにかかる費用や修理している間ホテルに泊まる費用など追加でかかる費用があります。そうした費用に対して支払われるのが費用保険金です。

費用保険金にはいくつか種類がありますが、主として自然災害の被害に関係がある費用保険金を紹介します。

臨時費用保険金

火災や自然災害などによる事故が起きて損害保険金が支払われるときに、損害保険金とは別に支払われる保険金です。臨時の出費に充てるものですが特に使い道は指定されていません。

支払われる保険金は保険会社や契約内容などによって異なりますが、1事故あたり損害保険金の10%~30%(限度額100万~300万円)であることが多いです。

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残存物取片づけ費用保険金

火災や自然災害などで損害を受けた建物や家財の焼け残りや瓦礫などの残存物を片付けるための費用(建物の取り壊し費用、清掃費用、搬出費用など)の実費(損害保険金の10%が限度)が保険金として支払われます。

支払いの迅速化のために損害保険金としてまとめて支払うとする保険会社もあります。

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地震火災費用保険金

地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災で建物が半焼以上、または保険の対象の家財が全焼した場合に保険金額の5%(300万円が限度)が支払われます。

あくまでも「火災」が対象で、地震で建物が倒壊したり津波で流出したりしても保険金は支払われません。それらに備えるには地震保険が必要です。また、火災についても補償される条件が厳しく、補償される額も限られています。

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地震保険

地震保険では受けた損害の程度に応じて「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の認定が行われ、その認定に沿って保険金が支払われます。損害の程度が一部損に満たない場合は保険金の支払はありません。また、各損害基準は、どこの保険会社で契約しても同じです。

以下の表にある保険金額とは保険金の支払われる上限額を意味します。地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30%~50%の間で設定することになっています。ただし、地震保険の保険金額の上限は建物が5000万円、家財が1000万円です。

建物

損害基準保険金支払額
全損主要構造部の損害額が建物の時価50%以上建物の地震保険の保険金額の100%
(時価額が限度)
焼失または流出した床面積が建物の延床面積の70%以上
大半損主要構造部の損害額が建物の時価の40%以上50%未満建物の地震保険の保険金額の60%
(時価額の60%が限度)
焼失または流出した床面積が建物の延床面積の50%以上70%未満
小半損主要構造部の損害額が建物の時価の20%以上40%未満建物の地震保険の保険金額の30%
(時価額の30%が限度)
焼失または流出した床面積が建物の延床面積の20%以上50%未満
一部損主要構造部の損害額が建物の時価の3%以上20%未満建物の地震保険の保険金額の5%
(時価額の5%が限度)
建物が床上浸水または地盤面より45㎝を超える浸水を受け、損害が生じた場合で全損・大半損・小半損に至らないとき

注意ポイント

建物における主要構造部とは、土台、柱、壁、屋根等の建築基準法施行令第1条第3号に掲げる構造耐力上主要な部分のことをいいます。生活に必要な部分であっても、塀、垣、エレベーター、給排水設備のみの損害など主要構造部に該当しない部分のみの損害は補償されません。

家財

損害基準保険金支払額
全損損害額が家財全体の時価の80%以上家財の地震保険の保険金額の100%
(時価額が限度)
大半損損害額が家財全体の時価の60%以上80%未満家財の地震保険の保険金額の60%
(時価額の60%が限度)
小半損損害額が家財全体の時価の30%以上60%未満家財の地震保険の保険金額の30%
(時価額の30%が限度)
一部損損害額が家財全体の時価の10%以上30%未満家財の地震保険の保険金額の5%
(時価額の5%が限度)

平成29年1月1日以降始期の地震保険
※地震保険に関する法律施行令の改正(平成29年1月1日施行)により、「半損」が「大半損」および「小半損」に分割されています。

公的支援だけでは不足する

地震などの大きな自然災害が発生したときには被災者に対して公的支援がありますが、それだけでは再建に足りずに自分で何らかの備えが必要だというのが現状です。

例えば、公的支援のメインとなるものの一つに被災者生活再建支援制度がありますが、この支援金で支払われるのは最大でも300万円です。この金額では住宅の再建築や再購入には足りないでしょう。

対象世帯

10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等の自然災害により
①住宅が「全壊」した世帯
②住宅が半壊、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
③災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
④住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯
⑤住宅が半壊し、相当規模の補修を行わなければ居住することが困難な世帯

基礎支援金
(住宅の被害程度)
加算支援金
(住宅の再建方法)
①全壊
②解体
③長期避難
100万円建設・購入200万円300万円
補修100万円200万円
賃借(公営住宅を除く)50万円150万円
④大規模半壊50万円建設・購入200万円250万円
補修100万円150万円
賃借(公営住宅を除く)50万円100万円
⑤中規模半壊建設・購入100万円100万円
補修50万円50万円
賃借(公営住宅を除く)25万円25万円

※世帯人数が1人の場合は、各該当欄の金額の3/4の額

実際、内閣府の防災情報のページによると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は平均して約2500万円なのに対し、公的支援として受給できるのは善意による義援金をあわせても約400万円にとどまりました。また、生活の再建のためには建物を新築するだけでなく家具や家電の購入が必要となります。東日本大震災の際には、被災者生活再建支援制度を申請した人の45.5%が家電・家具・寝具の購入など、住宅再建以外に50万円以上の費用をかけています(出典:平成24年度被災者生活再建支援法関連調査報告書)。

公的支援+義援金では約2100万円不足する

自然災害でどれだけの保険金が支払われている?

自然災害による被害は火災保険で補償されると説明しましたが、実際にどれくらいの件数・金額の補償がされているのでしょうか?損害保険料率機構「火災保険・地震保険の概況(2023年度版)」より紹介します。

事故種別2020年度2021年度2022年度
件数
(件)
保険金
(百万円)
件数
(件)
保険金
(百万円)
件数
(件)
保険金
(百万円)
火災、破裂・爆発7,76235,8097,81636,9317,96338,134
落雷36,94712,47037,02712,21443,51514,478
風災・雹災196,41894,417116,44847,566218,640108,617
雪災78,74845,72587,06255,09497,18059,206
水災4,44425,1962,55512,3964,79720,510
水濡れ57,69339,20254,29836,54657,06638,850
その他277,11146,363282,83544,820322,90952,111

出典:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況(2023年度版)」を加工

車の被害は自動車保険の車両保険

台風や地震などの自然災害の被害を受けるのは住宅ばかりではありません。自動車についても同様に自然災害の被害を受ける可能性があります。

火災保険や地震保険は住宅や住宅内にある家財の損害を補償する保険であり、自動車が自然災害の被害を受けても補償を受けることはできません。自動車に受けた損害は自動車保険の車両保険で補償されます。車両保険には補償範囲の狭い代わりに保険料が安いエコノミー型もありますが、自然災害の被害についてはエコノミー型でも補償されます。

車両保険については火災保険・地震保険にない注意点もあります。次に紹介する2点に気を付けておきましょう。

等級が下がる

自動車保険には火災保険にない等級制度があり、保険金を請求すると翌年度の等級が下がって保険料が高くなってしまいます。自然災害による被害で車両保険を使用した場合は1等級ダウンなので通常の対人事故や対物事故などの3等級ダウンよりも保険料の上り幅は小さいですが、頭に入れておく必要はあります。

地震・噴火・津波は対象外

火災保険と同様に、地震・噴火・津波による被害は自動車保険の補償の対象外となっています。そのため、地震・噴火・津波で車に損害が発生しても車両保険から保険金を受け取ることはできません。

なお、一部の保険会社では地震・噴火・津波により車が全損した場合に一時金を支払う特約を用意しています。ただし、地震発生後の生活に欠かせない移動手段を確保することを目的に、代替車両購入時の頭金」または「中古車の購入費用に充当できる金額」が目安となっているため、受け取れる保険金は50万円(車両保険の保険金額が50万円未満の場合は、車両保険金額)という額になっています。

まとめ

住宅が自然災害による被害を受けた場合、その被害に対する補償の第一番手となるのが火災保険や地震保険です。公的支援を当てにしている人もいるかもしれませんが、私有財産を税金で補償することになるので公的支援だけで元通り生活できるとはいきません。自分の家は自分で守ることが大切となるので、そのためにも火災保険や地震保険の契約内容が十分なものになっているのか、今のうちに見直しておきましょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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  • この記事を書いた人

インズウェブ

「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず火災保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。

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