火災保険の更新をきっかけに地震保険への加入を検討している方もいるかもしれません。築年数が古い家では保険料が高くなり、保険金もあまり支払われないというイメージがあるのではないでしょうか。そんな疑問を詳しく解説していきますので、地震保険の加入について考えていきましょう。
目次
古い家でも地震保険に入った方がいい?
地震保険は火災保険と違い、実際の修理費用や再建費用が全額補償されるわけではないため地震保険は不要と感じる方もいるかもしれません。築30年や築40年などの古い家の場合でも地震保険に入った方がいいのでしょうか?
古い家も新築も保険金額は変わらない
地震保険では建物や家財の損害の程度(全損、大半損、小半損、一部損)に応じた割合で保険金が支払われます。保険金額は火災保険の保険金額の30%~50%の間で設定し、建物は5000万円、家財は1000万円が限度となります。
支払われる保険金 | |
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地震保険の保険金額の100% (時価額が限度) | |
建物の基準 | 家財の基準 |
地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、 または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合 |
支払われる保険金 | |
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地震保険の保険金額の60% (時価額の60%が限度) | |
建物の基準 | 家財の基準 |
地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、 または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合 |
支払われる保険金 | |
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地震保険の保険金額の30% (時価額の30%が限度) | |
建物の基準 | 家財の基準 |
地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、 または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合 |
支払われる保険金 | |
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地震保険の保険金額の5% (時価額の5%が限度) | |
建物の基準 | 家財の基準 |
地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、 または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合 |
地震保険で支払われる保険金は「時価額が限度」または「時価額の〇%が限度」となっています。古い家の場合は新築よりも家の劣化や消耗が進んでいるため、時価額が低くなり受け取れる保険金額が少なくなると思う方もいるのではないでしょうか。よく誤解されやすいのですが、保険金額から時価に応じた分が支払われるということではありません。
火災保険では適切に維持管理がされていて実際に居住されている家なら、築年数が古くても同レベルの新築住宅価額の50%を時価の下限とするのが一般的です。時価額が地震保険金額を下回ることは少なく、損害認定された金額がそのまま支払われます。
2,000万円の家の場合
例えば、新築時の評価額が2,000万円の家で、火災保険の保険金額を2,000万円に設定し、地震保険の保険金額は1,000万円(火災保険金額の50%)で設定することにします。
地震によって家が大半損した場合の保険金は「地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度)」となり、600万円が支払われます。古い家で消耗が進み仮に建物の時価が1,200万円(60%)であったとしても、保険金600万円のうち60%分(360万円)しか支払われないという訳ではありません。建物の時価額(1,200万円)の60%(720万円)が限度になるという意味ですので、支払われる保険金は600万円となります。
一般的に人が住んでいて適切に維持管理されている家であれば築年数が古い家でも時価額が50%を下回ることは少なく、新築時と支払われる金額は変わらないので安心しましょう。
地震による火災や津波、噴火をカバーする
地震保険でカバーされるのは地震だけではありません。地震や噴火による火災や津波も補償されます。特に築古の家は木造住宅のことが多く、火災が起きた時に周りの家から延焼したり火の手が早く全焼してしまったりする可能性が考えられます。
また、地震の際に停電が発生し、停電から復旧する再通電時に出火するケースがあります。地震によって避難をしていると自宅で火災が発生しても気が付きにくいです。火災保険では地震が原因の火災は補償されないため、地震保険で備えておくことが大事になります。
公的支援だけでは足りない
地震で被害に遭っても公的支援は少なく、「被災者生活再建支援制度」で受けられる支援金は最大でも300万円です。善意による義援金を合わせても400万円ほどで住宅の再建費用には大きく不足してしまいます。
地震保険では損害の程度に応じた割合が補償され、その使い道は再建費用に限らず自由に活用することができます。特に今の住宅に住み続けることが難しい場合はホテル等の仮住まい費用や新しい住宅への引っ越し費用が必要になり、家電や家具、生活用品の買い替えの費用など出費が増えることが考えられます。地震保険に加入していれば被災後の生活費用にも使えるため、貯蓄だけで生活するのは難しい場合には必要性が高くなるといえるでしょう。
古い家でも地震保険に加入できる?
築30年以上や築40年以上などの築年数が古い家でも地震保険に入ることができます。しかし、家の状態によっては新規加入を断られたりする可能性があります。
耐震基準は1981年や2000年に改正されており、家が建てられた時期によっては大きな地震に耐えるほどの耐震性能が足りない可能性があります。そのため、古い家では地震が起きた時に被害を受けやすく地震保険で備えていく必要があるでしょう。
築年数が古いと保険料は高くなる?
地震保険では築年数によって保険料率は変わりません。火災保険では建物の築年数によって保険料率が変わり築年数が古いほど保険料が高くなる傾向にありますが、地震保険では新築の家でも築古の家でも保険料率は同じです。ただし、1981年(昭和56年)6月1日以前に建てた場合は建築年割引(10%割引)の適用が受けられないため注意しましょう。
また、地震の発生リスクが高い地域ほど保険料が高くなります。さらに、建物の構造によっても保険料は変わり、鉄骨・コンクリート造や耐火建築物は保険料が安く木造の建物は保険料が高くなっています。築年数によって保険料率は変わらないものの、古い家の多くは木造住宅のため地震保険の保険料が高額になる可能性があります。
保険料を安くするには?
地震保険は地震の発生リスクや建物の構造等によって保険料が変わります。住宅によっては保険料が高額になることもありますが、安く抑える方法はあるのでしょうか?
長期契約をする
地震保険の保険期間は最長5年です。1年契約を毎年更新するよりも5年分の保険料を一括払いにすると割安になります。まとまった金額が必要になるものの、長期契約の方が保険料の総支払額は安くなるのです。なお、一括で支払っても途中解約の際には、残りの契約期間分の保険料が返ってきます。
耐震等級を高くする
地震保険では建物の性能に応じて割引制度が用意されています。その中の一つに「耐震等級割引」があり、耐震等級が高いほど地震に対する建物の強度が強く保険料も安くなるというものです。耐震等級3では50%割引、耐震等級2で30%、耐震等級1で10%割引となります。新築住宅だけでなく、リフォームをおこない耐震等級を高めた場合でも保険料の割引を受けられます。
築年数50年以上の家の中には1981年に制定された新耐震基準を満たしていない住宅もあり、大規模な地震が起きた時に損害を受けてしまう可能性があります。耐震等級を上げる工事や耐震等級の認定を受けるためには多くの費用がかかる等のデメリットもありますが、住宅の安全性を高めるという点では耐震補強も検討してみましょう。
家財のみ補償する
地震保険は①建物のみ②家財のみ③建物と家財両方にかけることができます。保険料が高額になってしまう場合は地震保険を家財だけにして保険料を抑えるという方法もあります。
過去に発生した地震では建物よりも家財の方が全損・半損認定される割合が多く、東日本大震災では建物の半損割合が16.4%に対し、家財の半損は41.8%と2倍以上になっています。家財の方が損害が大きくなりやすい傾向にあることが分かります。
全損 | 半損 | 一部損 | |
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建物 | 4.8% | 16.4% | 78.8% |
家財 | 5.3% | 41.8% | 52.9% |
出典:財務省 地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書(平成24年11月30日)
※2016年12月31日以前始期の地震保険の損害認定基準は「全損」「半損」「一部損」の3区分となっていました。2017年に地震保険制度が改定され、現在は「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4区分となっています。
なお、地震保険の限度額は建物が5,000万円、家財は1,000万円となっており、家財の方が保険金額を低く設定することがほとんどです。家財のみ補償にすると保険料は抑えられるものの、生活の再建に必要な金額には足りない可能性もあるため注意が必要です。
火災保険を見直す
地震保険は政府と民間の保険会社が共同で運営している保険のため、どの保険会社でも補償内容や保険料は同じです。
しかし、火災保険は保険会社によって補償内容や保険料が異なります。築年数が古くなるほど損害リスクが高くなるため保険料も高額になる傾向にあります。さらに直近10年間で火災保険は何回も改定されており、更新の際には保険料が値上がりする可能性があります。そこで、不必要な補償内容を外せる保険会社を探す、同じ補償内容でも保険料が安い保険会社を探すことで地震保険と合わせた全体の保険料を安くすることができます。一括見積もりサービスを利用して複数の会社の保険料や補償内容を比較してみましょう。
まとめ
家に長く住み続けていると家の劣化や消耗が進むのは避けられません。家の構造にもよりますが、もし地震が発生したら新築の住宅よりも大きな被害を受ける可能性もあります。一般的に築年数によって保険金が少なくなることはあまりないため、古い家でも地震保険への加入を検討してみましょう。ただ、築年数が古いと火災保険の保険料が高額になる傾向にあります。地震保険は火災保険とセットで加入する必要があるため、火災保険も見直すことで全体の保険料を抑えることができます。