地震保険の基礎知識

地震保険と火災保険の違いは?地震保険に入る必要はある?

投稿日:2021年12月9日 更新日:

住宅や家財に損がが発生したときに備えて加入する火災保険や地震保険ですが、地震保険は火災保険とセットで加入する保険ということもあり、いまいち違いが理解できていないという方もいるのではないでしょうか。地震保険と火災保険にどのような違いがあるのか紹介します。

火災保険と地震保険の違い

保険の対象

火災保険も地震保険も保険の対象は大きくまとめると建物と家財なのですが、地震保険の方が火災保険よりも保険の対象となるものが少ないです。

建物

まず、建物に関してですが、地震保険に加入できるのは居住用の建物(店舗併用住宅も含む)に限定されます。1階が飲食店で2階が自宅となっている場合などの併用住宅は対象となりますが、工場や事務所専用の建物など住居として使用されない建物については対象外となります。また、空き家で居住用の建物とみなされない場合も加入できません。門や塀、物置などは建物に含めて契約をすることができますが、門や塀などにしか損害が発生しなかった場合は補償の対象外となります。

家財

続いて家財についてです。火災保険と異なるところとして、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、宝石、書画、骨董等(いわゆる明記物件)は対象外となります。火災保険では契約時に申告して保険証券に明記すれば補償対象となりますが、地震保険では補償対象外となります。

補償される損害

火災保険では火災のほか自然災害(地震・噴火・津波を除く)などによる損害でも補償を受けられます。それに対し、地震保険では火災保険で補償対象外となる地震・噴火またはこれらによって発生した津波による損害に対して補償を受けられます。

火災保険

火災保険の主な補償内容は以下の表の通りです。火災、破裂・爆発、落雷は基本的に外すことはできませんが、その他の補償内容は保険会社によっては有無を選択できる場合があります。

損害の種類内容
火災、破裂・爆発落雷失火・延焼・ボヤなどの火災、ガス漏れなどによる破損・爆発の損害、落雷による損害を補償。
風災・雹災・雪災台風等の強風による損害、雹(ひょう)や霰(あられ)による損害、豪雪の際の雪の重み、雪の落下などによる事故または雪崩により生じた損害を補償。
水災台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、高潮、土砂崩れなどにより生じた損害を補償。
水濡れ給排水設備の故障や他人の戸室で生じた事故による水濡れ損害(水漏れ)を補償。
物体の落下・飛来・衝突車の飛び込みや飛び石など建物外部から物体が落下・飛来・衝突したことにより生じた損害を補償。
盗難家財の盗難や盗難に伴う鍵や窓ガラス等の建物の損害を補償。
騒擾・集団行動等に伴う暴力行為集団行動などに伴う暴力行為・破壊行為による損害を補償。
破損・汚損など子どもが室内でボールを投げ、窓ガラスが破損してしまった等、事前に予測して防ぐことができず、突発的な事故によって生じた建物や家財の損害を補償。

地震保険

地震保険は火災保険では補償されない地震・噴火・津波を原因とする火災、損壊、埋没または流出による建物や家財の損害を補償します。

補償を受けられる事例

  • 地震による揺れで外壁や基礎にクラックが生じた
  • 地震による揺れで建物が倒壊した
  • 地震による揺れで食器が割れた
  • 地震による揺れで家具・家電などが倒れて破損した
  • 地震による揺れでストーブが倒れ、火災になった
  • 地震による揺れで液状化現象が起こり、建物が傾いた
  • 地震や火山の噴火で津波が起こって建物が流出した
  • 噴火による溶岩流や噴石、火山灰、爆風によって倒壊・埋没した
  • 噴火による火砕流で建物が燃えた
  • 地震や噴火による土砂崩れで建物が流出や埋没した

保険会社ごとの差異

火災保険は保険会社によって保険料や契約できる特約、補償内容の有無の選択などに差異がありますが、地震保険は政府と民間の保険会社が共同で運営している保険なので契約する保険会社によって補償内容や保険料は変わりません。地震保険はどこの保険会社で契約しても同じなので、契約する保険会社は火災保険で選ぶとよいでしょう。

支払われる保険金

火災保険

火災保険で支払われる保険金は契約時に定めた保険金額を上限として、損害額から免責金額(自己負担額)を除いた金額です。免責金額は契約時に定めた金額で、保険会社によって選択できる金額が異なりますが、0円や1万円、3万円、5万円などといった金額です。昔の契約でよくみられたフランチャイズ方式の場合は、損害額が20万円未満だと保険金は支払われず、20万円以上の場合は免責金額による減額なしに支払われます。

また、契約している内容や受けた損害によっては、損害保険金に追加して、臨時費用保険金や残存物取片付け費用保険金などの費用保険金も支払われます。

地震保険

地震保険では損害の程度によって全損、大半損、小半損、一部損の認定が行われ、その認定に沿って保険金額に対する一定の割合の保険金が支払われます。損害の程度が一部損に満たない場合は保険金は支払われません。

地震保険の保険金額(支払われる保険金の上限)は、契約している火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で決めます。ただし、上限が決まっており、建物は5,000万円、家財は1,000万円です。

建物
損害基準保険金支払額
全損主要構造部の損害額が建物の時価50%以上建物の地震保険の保険金額の100%
(時価額が限度)
焼失または流出した床面積が建物の延床面積の70%以上
大半損主要構造部の損害額が建物の時価の40%以上50%未満建物の地震保険の保険金額の60%
(時価額の60%が限度)
焼失または流出した床面積が建物の延床面積の50%以上70%未満
小半損主要構造部の損害額が建物の時価の20%以上40%未満建物の地震保険の保険金額の30%
(時価額の30%が限度)
焼失または流出した床面積が建物の延床面積の20%以上50%未満
一部損主要構造部の損害額が建物の時価の3%以上20%未満建物の地震保険の保険金額の5%
(時価額の5%が限度)
建物が床上浸水または地盤面より45㎝を超える浸水を受け、損害が生じた場合で全損・大半損・小半損に至らないとき

注意ポイント

建物における主要構造部とは、土台、柱、壁、屋根等の建築基準法施行令第1条第3号に掲げる構造耐力上主要な部分のことをいいます。生活に必要な部分であっても、塀、垣、エレベーター、給排水設備のみの損害など主要構造部に該当しない部分のみの損害は補償されません。

家財
損害基準保険金支払額
全損損害額が家財全体の時価の80%以上家財の地震保険の保険金額の100%
(時価額が限度)
大半損損害額が家財全体の時価の60%以上80%未満家財の地震保険の保険金額の60%
(時価額の60%が限度)
小半損損害額が家財全体の時価の30%以上60%未満家財の地震保険の保険金額の30%
(時価額の30%が限度)
一部損損害額が家財全体の時価の10%以上30%未満家財の地震保険の保険金額の5%
(時価額の5%が限度)

平成29年1月1日以降始期の地震保険
※地震保険に関する法律施行令の改正(平成29年1月1日施行)により、「半損」が「大半損」および「小半損」に分割されています。

保険期間

火災保険と地震保険の保険期間はどちらも最長5年です。満期を迎えたのちも引き続き補償を受けたい場合は更新するか別の保険会社の火災保険・地震保険を契約することになります。

保険料控除

現在の制度では地震保険については保険料控除がありますが、火災保険については保険料控除の対象となっていません。以前は火災保険も損害保険料控除の対象となっていましたが、2006年(平成18年)12月31日をもって損害保険料控除は廃止されています。

地震保険に入る必要はある?

他の保険では地震による被害の補償を受けられない

一部の少額短期保険を除き、地震による建物や家財の損害の補償を受けられる保険は地震保険しかありません。地震の発生確率と損害額の予測が難しいことや、巨大地震が発生した際に広範囲に莫大な被害が発生する可能性があることなどから、民間の保険会社のみで地震に対する広範な保険を提供することは難しいです。被災後にまとまった保険金を得て生活を建て直すには地震保険の必要性が高いといえます。

公的支援だけでは不足する

地震などの大きな自然災害が発生したときには被災者に対して公的支援がありますが、それだけでは再建に足りずに自分で何らかの備えが必要だというのが現状です。

例えば、公的支援のメインとなるものの一つに被災者生活再建支援制度がありますが、この支援金で支払われるのは最大でも300万円です。この金額では住宅の再建築や再購入には足りないでしょう。

対象世帯

10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等の自然災害により
①住宅が「全壊」した世帯
②住宅が半壊、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
③災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
④住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯
⑤住宅が半壊し、相当規模の補修を行わなければ居住することが困難な世帯

基礎支援金
(住宅の被害程度)
加算支援金
(住宅の再建方法)
①全壊
②解体
③長期避難
100万円建設・購入200万円300万円
補修100万円200万円
賃借(公営住宅を除く)50万円150万円
④大規模半壊50万円建設・購入200万円250万円
補修100万円150万円
賃借(公営住宅を除く)50万円100万円
⑤中規模半壊建設・購入100万円100万円
補修50万円50万円
賃借(公営住宅を除く)25万円25万円

※世帯人数が1人の場合は、各該当欄の金額の3/4の額

実際、内閣府の防災情報のページによると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は平均して約2500万円なのに対し、公的支援として受給できるのは善意による義援金をあわせても約400万円にとどまりました。また、生活の再建のためには建物を新築するだけでなく家具や家電の購入が必要となります。東日本大震災の際には、被災者生活再建支援制度を申請した人の45.5%が家電・家具・寝具の購入など、住宅再建以外に50万円以上の費用をかけています(出典:平成24年度被災者生活再建支援法関連調査報告書)。

公的支援+義援金では約2100万円不足する

地震保険の世帯加入率・付帯率

地震保険にどれくらいの人が加入しているのか、世帯加入率と付帯率を紹介します。

世帯加入率:当該年末における地震保険保有契約件数を翌年1月1日時点の住民基本台帳に基づく世帯数で除した数値
付帯率:当該年度に契約された火災保険(住宅物件)契約件数のうち、地震保険を付帯している件数の割合

世帯加入率

地震保険の世帯加入率

損害保険料率算出機構統計集2020年度版によると、2020年における地震保険の世帯加入率は33.9%です。都道府県別にみると、2020年の地震保険世帯加入率が最も高いのが宮城県で51.9%、逆に最も低いのが沖縄県で17.2%です。地震保険の世帯加入率は東日本大震災前は愛知県が最も高かったのですが、それ以後は宮城県が愛知県を抜いて1位となっています。

付帯率

地震保険の付帯率

損害保険料率算出機構統計集2020年度版によると、2020年度の地震保険の付帯率は68.3%です。都道府県別にみると、2020年度の地震保険付帯率が最も高いのが宮城県で87.5%、逆に最も低いのが長崎県で53.6%です。世帯加入率だと3割程度ですが、付帯率でみると最も低い県でも50%を超えています。古くからある家では地震保険に加入していないことが多い一方で、最近火災保険に加入した家では3分の2ほどの契約で地震保険も契約していることになります。

加入率
地震保険の加入率はどれくらい?

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地震保険の必要性が高いのはどんな人?

地震保険にはどのような人が入った方がいいのでしょうか。次のような人は、地震保険の加入を検討することをおすすめします。

  • 住宅の築年数が浅い人
  • 住宅ローンの残債が多い人
  • 地震発生リスクが高い地域に住む人
  • 預金が少ない人
  • 頼れる身寄りがいない人

地震保険は、地震等で被害を受けた場合に生活の再建を助けるための保険です。その目的に沿って、地震・噴火・津波の被害を受けた後、生活の再建が難しいようであるのならば地震保険の加入を考えた方がよいでしょう。また、地震によって住宅を失っても住宅ローンの支払いは免除されません。住宅ローンが残っている場合は特に地震保険の必要性は高いといえるでしょう。

地震で自宅が倒壊…住宅ローンはどうなる?

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まとめ

地震保険は火災保険で補償されない地震・噴火・津波による損害の補償を受けることができます。地震保険は生活再建の助けとなることを目的としており、火災保険と違って受けた損害をそのまま穴埋めすることはできません。しかし、地震の被害を受けたときに補償を受けられる保険は一部の少額短期保険を除くと地震保険だけであり、また、公的支援だけでは生活を建て直すのに十分ではありません。地震保険の内容をしっかりと理解し、地震等の被害を受けたときに生活を建て直すのに十分な蓄えがない場合はぜひ地震保険の加入を検討するようにしましょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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  • この記事を書いた人

インズウェブ

「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず火災保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。

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