地震による損害は火災保険では補償されず、地震保険に加入している必要があります。地震大国である日本ではできれば地震保険に加入しておきたいですが、追加でかかる保険料はできる限り安くしておきたいですよね。実は、耐震等級が高いと地震保険の保険料が割引されるのです。
目次
耐震等級はどのような基準で決まる?
耐震等級とは、地震による倒壊・崩壊に対する強さを表しており、耐震等級が高いほど地震に対して強くなります。耐震等級は1~3の3段階に分かれていて、それぞれ以下の基準となっています。
耐震等級 | 基準 |
---|---|
耐震等級 1 | 建築基準法による規定と同程度
※数百年に一度発生する地震とは、阪神淡路大震災程度の地震を指します。 |
耐震等級 2 | 耐震等級1で想定する1.25倍の地震力に対抗できる |
耐震等級 3 | 耐震等級1で想定する1.5倍の地震力に対抗できる |
耐震等級1の場合、震度6強~7クラスの地震には倒壊、崩壊しない程度なので一定の損傷を受けることは許容されています。
耐震等級2では耐震等級1の1.25倍の地震力に対抗できる強度です。長期優良住宅の認定にも耐震等級2以上が必要です。災害時の避難場所として指定されている学校・病院などの建物では耐震等級2以上が確保されるようになっています。
耐震等級3では耐震等級1の1.5倍の地震力に対抗できる強度です。災害時の救護活動の拠点となる消防署・警察署などの建物の基準にもなっています。震度7の揺れが2度襲った熊本地震でも大きな損傷が見られず、大部分が無被害でした。
耐震等級が高いほど地震保険が割引される
地震保険は他の保険と同じように保険金を支払う可能性や支払う額が低くなるほど保険料や安くなります。耐震等級が高ければ地震による損害を受けにくいので、地震保険には耐震等級割引が用意されています。
耐震等級割引
適用条件
住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)に基づく耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)を有している場合、または、国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に基づく耐震等級を有している場合
割引率
耐震等級 | 割引率 |
---|---|
耐震等級1 | 10% |
耐震等級2 | 30% |
耐震等級3 | 50% |
割引適用に必要な書類
耐震等級割引の適用を受けるには、以下のような確認書類が必要です。「耐震等級3相当」を謳う建物でも確認書類が用意できなければ50%の割引は受けることができません。
- 品確法に基づく登録住宅性能評価機関により作成された書類のうち、対象建物の耐震等級を証明した書類※1
- 独立行政法人住宅金融支援機構が定める技術基準に適合していることを示す適合証明書
- ①「認定通知書」など長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく認定書類および②「設計内容説明書」など耐震等級を確認できる書類
※1 例えば、以下のような書類が対象となります。
- 品確法に基づく建設住宅性能評価書または設計住宅性能評価書
- 耐震性能証明書
- 独立行政法人住宅金融支援機構が定める技術基準に適合していることを示す「現金取得者向け新築対象住宅証明書」
- 長期優良住宅の認定申請の際に使用する品確法に基づく登録住宅性能評価機関が作成した「技術的審査適合証」
- 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置を受けるために必要な「住宅性能証明書」
- 品確法に基づく登録住宅性能評価機関が、マンション等の区分所有建物の共用部分全体を評価した場合に作成する「共用部分検査・評価シート」等の名称の証明書類
他の地震保険の割引制度
地震保険には耐震等級割引以外の割引制度も用意されています。耐震等級割引も含めて4種類あり、条件に当てはまる割引制度のうち最も割引率が高いものが適用されます。
地震保険にある割引制度は以下の4つです。
- 免震建築物割引(割引率:50%)
- 耐震等級割引(割引率:等級1 10%、等級2 30%、等級3 50%)
- 耐震診断割引(割引率:10%)
- 建築年割引(割引率:10%)
免震建築物割引
適用条件
住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)に基づく免震建築物に該当する建物であること
割引率
50%
確認書類
- 品確法に基づく登録住宅性能評価機関により作成された書類のうち、対象建物が免震建築物であることを証明した書類
以下のような書類が対象となります。- 品確法に基づく建設住宅性能評価書または設計住宅性能評価書
- 独立行政法人住宅金融支援機構が定める技術基準に適合していることを示す「現金取得者向け新築対象住宅証明書」
- 長期優良住宅の認定申請の際に使用する品確法に基づく登録住宅性能評価機関が作成した「技術的審査適合証」
- 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置を受けるために必要な「住宅性能証明書」
- 品確法に基づく登録住宅性能評価機関が、マンション等の区分所有建物の共用部分全体を評価した場合に作成する「共用部分検査・評価シート」等の名称の証明書類
など
- 独立行政法人住宅金融支援機構が定める技術基準に適合していることを示す適合証明書
- 「認定通知書」など長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく認定書類※および「設計内容説明書」など免震建築物であることが確認できる書類
※認定長期優良住宅であることが確認できる「住宅用家屋証明書」および「認定長期優良住宅建築証明書」を含みます。
耐震等級割引
適用条件
品確法に規定する評価方法基準に定める「耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)」または国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に定められた耐震等級を有していること
割引率
耐震等級3:50%
耐震等級2:30%
耐震等級1:10%
確認書類
- 品確法に基づく登録住宅性能評価機関により作成された書類のうち、対象建物の耐震等級を証明した書類※1※2
以下のような書類が対象となります。- 品確法に基づく建設住宅性能評価書または設計住宅性能評価書
- 耐震性能証明書
- 独立行政法人住宅金融支援機構が定める技術基準に適合していることを示す「現金取得者向け新築対象住宅証明書」
- 長期優良住宅の認定申請の際に使用する品確法に基づく登録住宅性能評価機関が作成した「技術的審査適合証」
- 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置を受けるために必要な「住宅性能証明書」
- 品確法に基づく登録住宅性能評価機関が、マンション等の区分所有建物の共用部分全体を評価した場合に作成する「共用部分検査・評価シート」等の名称の証明書類
など
- 独立行政法人住宅金融支援機構が定める技術基準に適合していることを示す適合証明書※1
- ①「認定通知書」など長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく認定書類※3および②「設計内容説明書」など耐震等級を確認できる書類※2
※1 以下に該当する場合には、耐震等級割引(30%)が適用されます。
- 書類に記載された内容から、耐震等級が2または3であることは確認できるものの、耐震等級を1つに特定できない場合。ただし、登録住宅性能評価機関(「適合証明書」は適合証明検査機関または適合証明技術者)に対し対象建物の耐震等級の証明を受けるために届け出た書類で耐震等級が1つに特定できる場合は、その耐震等級割引が適用されます。
※2 以下に該当する場合には、耐震等級割引(新築は30%、増築・改築は10%)が適用されます。
- 「技術的審査適合証」において、耐震等級が確認できない場合
- 「認定通知書」など上記①の書類のみ提出した場合
※3 認定長期優良住宅であることが確認できる「住宅用家屋証明書」および「認定長期優良住宅建築証明書」も含みます。
耐震診断割引
適用条件
地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす建物であること
割引率
10%
確認書類
- 耐震診断の結果により、国土交通省の定める基準(平成18年国土交通省告示第185号)※に適合することを地方公共団体、建築士などが証明した書類
- 耐震診断または耐震改修の結果により減税措置を受けるための証明書(耐震基準適合証明書、住宅耐震改修証明書、地方税法施行規則附則に基づく証明書など)
※平成25年国土交通省告示第1061号を含みます。
建築年割引
適用条件
昭和56年6月1日以降に新築された建物であること
割引率
10%
確認書類
- 建物登記簿謄本、建物登記済権利証、建築確認書、検査済証など国、地方公共団体、地方住宅供給公社、指定確認検査機関等が発行する書類
※建築確認申請書など公的機関等に届け出た書類で、公的機関等の受領印・処理印が確認できるものを含みます。 - 宅地建物取引業者が交付する重要事項説明書、不動産売買契約書、賃貸住宅契約書
- 登記の申請にあたり登記所に提出する工事完了引渡証明書等
なお、各割引の確認書類について、対象建物について既にいずれかの割引が適用されている場合には、地震保険割引の種類(さらに耐震等級割引の場合は耐震等級)が確認できる保険証券、保険契約証、保険契約継続証、異動承認書、満期案内書類、契約内容確認のお知らせ、またはこれらの代替として保険会社が契約者に対して発行する書類を確認書類として提出することができます。
地震保険料を安くするなら割引制度と保険期間を確認しよう
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建築年割引の適用条件は昭和56年6月1日以降に新築された建物であることなので、新築で住宅を建てる場合は基本的に10%の割引は受けられます。
耐震等級3でも地震保険は必要?
耐震等級3の場合、50%という高い割引率を得ることができますが、熊本地震のときにも大きな損傷が見られなかったようにそもそも被害を受けない可能性も高くなります。この状況では「地震保険に入る必要もないのでは?」と思うかもしれません。しかし、住宅再建や新しい地で生活を始めるのに必要な貯蓄が十分にない場合は地震保険の加入を検討した方がよいでしょう。
地震保険が必要と考えられる理由としては2つあります。それは津波・噴火による損害と隣家からの損害です。
津波・噴火による損害
耐震性能が高くても津波が発生してそれに巻き込まれれば損害を受ける可能性があります。津波による損害も火災保険のみでは補償されず、補償を受けるには地震保険の加入が必要となります。津波の被害を受ける可能性がある地域にお住まいの場合は地震保険の加入を検討しましょう。また、火山が近くにある地域も注意が必要です。噴火による損害も火災保険のみでは補償されません。
隣家からの損害
いくら自分の家の耐震性能が高くても隣家が倒壊してそれによる被害を受けたり、地震によって隣家から出火してそれが延焼して被害を受けたりする可能性があります。火災による損害であっても火災の原因が地震であった場合には火災保険では補償されず、地震保険が必要となります。火災保険には地震火災費用保険金というものもありますが、地震火災費用保険金で保険金を受け取れるのは一般的に建物が半焼以上となったときで、受け取れる額も保険金額の5%(上限300万円)と心もとない金額です。地震による火災に備えるには火災以外の損害も含めて地震保険で備えるのがよいでしょう。
火災保険も安くしよう
地震保険は政府と民間の保険会社が共同で運営している保険で、保険会社ごとに補償内容や保険料の差はありません。割引制度や長期契約による割引はありますが、さらに保険料を安くするにはセットで契約する火災保険の方に目を向けましょう。
火災保険は地震保険と同じように保険会社が提供する割引制度を利用したり長期契約にしたりすることで保険料を安くすることができます。
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また、地震保険と違い補償内容や保険料が保険会社によって異なります。不必要な補償内容を省ける保険会社を探したり、同じ補償内容でも保険料が安い保険会社を探したりすることで地震保険と合わせた保険料を安くすることができます。
保険料が安い保険会社を探すには火災保険の一括見積もりサービスが便利です。一度の情報の入力で複数の保険会社から見積もりを取ることができます。利用は無料なので、ぜひ一度ご利用ください。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。