地震保険の基礎知識

地震保険の基礎知識

投稿日:2019年3月7日 更新日:

日本は地震大国であり、甚大な被害をもたらす規模の地震もたびたび起こっています。しかし、地震で受けた被害については火災保険のみでは補償を受けることができません。火災保険とセットで加入する地震保険が必要となります。地震保険についての基礎知識を紹介します。

地震保険とは

地震保険とは、火災保険のみでは補償されない地震・噴火・津波を原因とする火災・損壊・埋没・流出による損害を補償する保険です。地震保険は単独では申し込むことができず、火災保険の契約に付帯する形になっています。

保険料は?

地震保険は国と民間が共同で運営する保険で、どこの保険会社で地震保険に入っても補償内容や保険料は変わりません。国と共同という形をとっているのは、地震による被害は広範囲かつ甚大になることがあり、その場合、民間の保険会社のみで保険金を支払うことが困難であるからです。

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地震保険の世帯加入率・付帯率

どれくらいの方が地震保険に入っているのでしょうか。損害保険料率算出機構の統計データより地震保険の世帯加入率(全世帯に対してどの程度の世帯が地震保険を契約しているか)と付帯率(「当該年度に契約された火災保険(住宅物件)契約件数のうち、地震保険を付帯している件数の割合」)を紹介します。

世帯加入率

地震保険の世帯加入率は2021年時点で34.6%です。毎年わずかながら上がっています。

なお、2021年の世帯加入率を都道府県別でみると、世帯加入率トップ5は宮城県(52.7%)、愛知県(44.2%)、熊本県(43.9%)、岐阜県(40.1%)、福岡県(38.7%)、ワースト5は沖縄県(17.6%)、長崎県(20.3%)、島根県(21.0%)、青森県(23.9%)、秋田県(24.9%)となっています。大きな地震が起こるといわれている地域や実際に大きな地震が発生した地域で世帯加入率が高くなっています。

世帯加入率が高い都道府県世帯加入率が低い都道府県
順位都道府県世帯加入率順位都道府県世帯加入率
1宮城県52.7%43秋田県24.9%
2愛知県44.2%44青森県23.9%
3熊本県43.9%45島根県21.0%
4岐阜県40.1%46長崎県20.3%
5福岡県38.7%47沖縄県17.6%

出典:損害保険料率算出機構統計集_2021年度版地震保険統計

付帯率

地震保険の付帯率は2021年度の数字で69.0%です。こちらも加入率と同様、年々増加傾向にあり、東日本大震災や熊本地震といった大きな地震があった年には付帯率の伸びも大きくなっています。

また、2021年度の付帯率を都道府県別にみると、高い順に宮城県(88.7%)、高知県(87.8%)、熊本県(85.3%)、宮崎県(84.2%)、鹿児島県(83.6%)です。逆に、低いのは、低い順に長崎県(54.4%)、沖縄県(58.0%)、北海道(61.8%)、東京都(62.1%)、佐賀県(62.3%)です。低い都道府県でも50%以上付帯されています。

付帯率が高い都道府県付帯率が低い都道府県
順位都道府県世帯加入率順位都道府県世帯加入率
1宮城県88.7%43佐賀県62.3%
2高知県87.8%44東京都62.1%
3熊本県85.3%45北海道61.8%
4宮崎県84.2%46沖縄県58.0%
5鹿児島県83.6%47長崎県54.4%

出典:損害保険料率算出機構統計集_2021年度版地震保険統計

地震保険でいくら補償される?

地震保険の保険金額は建物と家財に対して火災保険で設定した金額の30%~50%の範囲内で設定することとなります。なお、上限額は建物が5,000万円までで家財は1,000万円までです。このような保険金額になっているのは、地震保険は建物を建て直す費用を補償する保険ではなく、「被災した人々の生活の安定に貢献する」ことを目的にできた保険だからです。

上乗せの補償が欲しい場合

保険会社の中には独自で地震保険の上乗せ補償を特約として用意しているところもあります。また、少額短期保険業者の中には地震被害を補償するものがあるので、追加で契約して補償を上乗せする方法もあります。

いずれの方法にしても、追加で保険料がいくらかかるのか、貯金などで賄うことはできないかなどを考慮して加入を検討してください。

地震保険の保険金の支払いは?

地震保険では、常に設定した保険金額の全額が出るわけではありません。保険の対象の建物・家財が受けた損害の程度によって、全損・大半損・小半損・一部損の4段階に判定されて、その判定に応じて保険金が支払われます。

地震保険の補償額
損害の程度補償額
全損地震保険の保険金額の100%(時価額が限度)
大半損地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度)
小半損地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度)
一部損地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度)
損害区分の認定基準<建物>
損害の程度基準
全損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合
大半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合
小半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合
一部損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合
損害区分の認定基準<家財>
損害の程度基準
全損地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合
大半損地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合
小半損地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合
一部損地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合

地震保険料控除について

地震保険の保険料は「地震保険料控除」の対象となっているため、所得税・住民税の控除を受けることができます。長期契約の保険料を一括で払った場合は保険料総額を契約期間で割った金額が1年分の控除対象となります。

地震保険料控除の控除額
年間支払保険料所得税住民税
5万円まで保険料全額保険料の1/2
5万円超一律5万円一律2万5千円

公的支援だけでは不十分

地震のような自然災害の被害を受けた場合、何か公的制度によって補償されるのではないかと思うかもしれません。確かに「被災者生活再建支援制度」という公的支援制度はあるのですが、その支援額は十分な金額とは言えません。受けられる金額は住宅の被害の程度と住宅の再建方法によって異なりますが、最大でも300万円までしか支援を受けられません。

対象世帯

10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等の自然災害により
①住宅が「全壊」した世帯
②住宅が半壊、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
③災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
④住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯
⑤住宅が半壊し、相当規模の補修を行わなければ居住することが困難な世帯

基礎支援金
(住宅の被害程度)
加算支援金
(住宅の再建方法)
①全壊
②解体
③長期避難
100万円建設・購入200万円300万円
補修100万円200万円
賃借(公営住宅を除く)50万円150万円
④大規模半壊50万円建設・購入200万円250万円
補修100万円150万円
賃借(公営住宅を除く)50万円100万円
⑤中規模半壊建設・購入100万円100万円
補修50万円50万円
賃借(公営住宅を除く)25万円25万円

※世帯人数が1人の場合は、各該当欄の金額の3/4の額

300万円では元の住宅と同程度の物件の再購入や再建築は難しいでしょう。地震保険など何らかの手段で地震に対して備えておくことが必要だといえます。

東日本大震災で全壊した住宅では約2100万円不足した

内閣府の防災情報のページによると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は平均して約2500万円なのに対し、公的支援として受給できるのは善意による義援金をあわせても約400万円にとどまりました。また、生活の再建のためには建物を新築するだけでなく家具や家電の購入が必要となります。東日本大震災の際には、被災者生活再建支援制度を申請した人の45.5%が家電・家具・寝具の購入など、住宅再建以外に50万円以上の費用をかけています(出典:平成24年度被災者生活再建支援法関連調査報告書)。

公的支援+義援金では約2100万円不足する

まとめ

日本は数多くの地震が発生し、今後も南海トラフ地震や首都直下地震が高い確率で起こるとされています。地震による損害は火災保険では補償されないので、万一の際の負担を少なくするために地震保険の加入を検討しましょう。

また、地震保険の補償額は最大でも火災保険の保険金額の50%です。更なる補償が欲しい場合は、追加でかかる保険料を天秤に掛けつつ上乗せ特約や少額短期保険の加入も検討してみましょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず火災保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。

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