火災保険で家財に対しての補償を付けていても1個30万円を超える貴金属や美術品、書画などのいわゆる明記物件は補償されない場合があります。明記物件とはどのようなものか、補償を受けるためにはどうすればよいのかなど、火災保険における明記物件について紹介します。
明記物件とは
明記物件とは、1個または1組の価額が30万円を超えるような貴金属や宝石、書画、骨董、彫刻物その他の美術品や稿本や設計書などのことをいいます。これらは家財を対象とする火災保険を契約していても、契約時に申告して保険証券へ明記していなければ保険の対象とはなりません。なお、保険会社によっては明記物件の申告を不要とし、1事故あたりの補償額の上限を定めている場合もあります。
30万円超ならばすべて明記物件というわけではない
1個または1組の価額が30万円を超えるようなものはすべて明記物件として申告する必要があるかというとそうではありません。例えば高額な家具・家電や通常使用する楽器などは30万円を超えていても明記物件として申告する必要はありません。ただし、骨董的または美術的価値が高いようなもので30万円を超えるものであれば明記物件として申告する必要があります。判断に迷う場合は保険会社や代理店に確認してみましょう。
また、明記物件でなく申告しなくても補償される場合、家財の保険金額がいくらになっているのか確認する必要があります。保険金額とは支払われる保険金の上限額です。複数の家財が損害を受けた場合、そこに高額な家財が含まれていると保険金が不足する可能性があります。保険金額がいくらの契約になっているのか、いくらであれば足りるのか事前によく確認しておきましょう。
なぜ別途申告する必要がある?
明記物件はなぜ別途申告する必要があるのかというと、その価値の評価が難しいからです。例えば絵画は素人目でみれば同じようなものに見えても誰が描いたものかによって大きく価値が変わります。また、その画家の技法が評価されて価値が急激に上がることもありますし、逆に画家本人が描いたものか疑わしいという情報が発見されて価値が下がることもあり得ます。このように、金額の評価が難しいものについては、保険の設計上、他の価値がはっきりとしている家財と一緒に保険の対象とすることは難しく、別途明記が必要としているのです。
保険金はいくら支払われる?
明記物件が損害を受けた場合、多くの会社では時価額で評価して補償されます。ただし、すべてが補償されるわけではなく、1回の事故につき100万円を限度とするのように支払われる保険金に上限が設けられています。いくらまで補償されるかは保険会社によって扱いが異なるので納得のいく補償を受けるためには各保険会社の条件を比較する必要があります。火災保険一括見積もりサービスを利用して、各社を比較してみるとよいでしょう。
なお、火災保険の時価額とは新価(同等のものを再度調達するのに必要な額)から年数の経過による減価や使用による消耗分を差し引いた額を基準にした評価額です。
申告を忘れていた場合は?
明記物件として申告していなかったものの補償については保険会社によって扱いが異なります。全く補償を受けられないという場合も、保険期間を通じて1回に限り1個30万円として補償するというような場合もあります。どのような内容になっているのかは保険会社や代理店に確認するようにしましょう。
地震保険では対象外
火災保険では保険証券に明記することで明記物件も補償を受けることができますが、地震保険では明記物件に該当するものは補償の対象外です。地震保険は地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的としています。明記物件に当たるようなものや通貨、有価証券(小切手、株券、商品券等)、預貯金証書、印紙、切手などは地震保険の補償の対象外となります。
地震保険の対象となるのは?
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まとめ
明記物件といわれる1個または1組30万円を超えるような貴金属や宝石、書画、骨董、彫刻物その他の美術品や稿本や設計書などは申告して保険証券に明記しないと火災保険の補償の対象とはなりません。明記物件に対する補償は保険会社によって変わり統一した対応となっていません。火災保険を契約する場合は、火災保険一括見積もりサービスで各保険会社の見積もりを取り、明記物件の扱いについて保険会社または代理店にしっかりと確認しておくようにしましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。