火災保険の基礎知識

火災保険の水災補償とは?補償範囲と必要性

投稿日:2019年3月7日 更新日:

近年、台風に限らず記録的な短時間集中豪雨による洪水などの被害を耳にすることが増えてきました。洪水などによる床上浸水の被害や大雨による土砂災害の被害を補償してくれるのが水災補償です。水災補償の補償範囲や必要性などについて解説していきます。

火災保険における水災とは

水災とは、台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、高潮、土砂崩れなどにより生じた損害のことをいいます。水災といって思い浮かべやすい洪水や高潮だけでなく土砂崩れも含まれていることに注意が必要です。なお、水にかかわる災害ですが、津波による損害は水災補償では補償されません。津波による損害に備えるのであれば地震保険が必要です。

海や河川、山から離れている場所であっても、都市部では短時間に多量の雨が降った場合、マンホールや側溝から雨水が地上にあふれる都市型の洪水も起こり得ます。温暖化や都市化の進行で昔にはなかったリスクが増えている可能性があります。どのような被害を受ける可能性があるのか今一度確認してみましょう。

水災補償でどこまで補償される?

火災保険の水災補償では、台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石などによって、建物や家財に所定の損害を受けた場合に補償を受けることができます。なお、火災保険の対象を建物のみにしていた場合は建物に対する損害のみ、家財のみにしていた場合は家財に対する損害のみ補償されます。

水災補償で補償される例

火災保険の水災補償では以下のような場合に補償を受けることができます。

  • 豪雨による洪水で床上浸水し、床や壁の張替えや家具・家電の買い替えが必要になった
  • 豪雨による土砂崩れに家が巻き込まれ、建物や家財に損害が発生した
  • ゲリラ豪雨によりマンホールの排水が追いつかず、床上浸水の被害に遭った
  • 台風による高潮で床上浸水の被害に遭った
  • 雪解け水により川が増水して氾濫し、床上浸水の被害に遭った

水災補償の支払基準

水災補償は一般的に、次のような支払基準が設けられています。洪水などの被害に遭っても支払基準に満たない場合は保険金は支払われません。

注意ポイント

水災補償の支払基準

  • 建物(家財)の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合
  • 「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」によって損害が生じた場合

なお、床上浸水とは、畳やフローリングなどの居住部分の床を超える浸水のことをいい、地盤面とは、建物が周囲の地面と接する位置のことをいいます。ただし、地盤面について、地下室など床面が地盤面より下にある場合は、その床面をいいます。

エアコンの室外機やエコキュートなどは床下浸水でも補償される特約がある場合も

上で説明した通り、床下浸水では基本的に火災保険の水災補償で補償を受けることができません。しかし、空調・冷暖房設備や給湯設備、充電・発電・蓄電設備等の機械設備に関しては、特定設備水災補償特約という、床下浸水でも補償を受けることができる特約を用意している保険会社もあります。

エアコンの室外機やエコキュートなどは屋外に設置してあり、床下浸水であっても修理や買い替えが必要となる可能性があります。その場合、水災補償では補償されないのでこの特約がないと自腹で修理や再購入を行うことになってしまいます。近年では屋外に高額な機械設備を設置する家庭が増えており、こうした機械設備に対して水災による損害の程度にかかわらず損害に備えられる補償が求められていました。そうした声にこたえたのがこの特約です。

水災補償のみ水災補償+特定設備水災補償特約
保険価額の30%以上の損害
床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水による損害
上記以外による特定の機械設備に対する水災の損害(床下浸水など)×
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保険金はいくら受け取れる?

水災の被害に遭った場合、損害保険金として「損害額-免責金額(自己負担額)」の額を受け取ることができます。免責金額は契約時に決めた金額で、この金額については保険会社が保険金を支払う責任がなく、自己負担が必要です。また、支払条件に当てはまれば、損害保険金に追加して費用保険金も支払われます。

なお、水災補償は保険金の総支払額が甚大になりかねないことから、実損額ではなく損害の程度に応じて保険金を算出する保険商品や特約もあります。この場合、建物の再建や家財の再購入に十分な補償を得られない可能性があります。保険料は抑えられますが、支払われる保険金が十分か考えて契約するようにしましょう。

損害の程度に応じて保険金が支払われる場合の例

損害の程度保険金の算出方法
保険価額の30%以上の損害を受けた場合保険金額(保険価額限度)×損害額/保険価額×70%
床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水保険価額の15%以上30%未満の損害を受けた場合保険金額(保険価額限度)×10%
(上限200万円)
保険価額の15%未満の損害を受けた場合保険金額(保険価額限度)×5%
(上限100万円)
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水災補償でどれくらいの保険金が支払われている?

水災補償で実際にどれくらいの件数・金額の補償がされているのでしょうか?損害保険料率機構「火災保険・地震保険の概況(2021年度版)」より紹介します。

事故種別2017年度2018年度2019年度
件数
(件)
保険金
(百万円)
件数
(件)
保険金
(百万円)
件数
(件)
保険金
(百万円)
火災、破裂・爆発7,15431,9157,08634,2386,89634,479
落雷28,4788,77026,9878,53628,6379,336
自然災害風災・雹災171,41676,630819,484637,876497,798378,679
雪災68,66737,62916,9789,1329,2054,643
水災3,0869,3959,90260,91121,330123,703
その他水濡れ42,47028,52542,05826,64147,49931,958
水濡れ以外198,64133,712189,16533,383211,82137,821

出典:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況(2020年度版)」を加工

水災補償を受けられないケース

水災補償を受けられない事例としては、次のようなものが挙げられます。

支払基準に満たない場合

上で説明しましたが、

  • 建物(家財)の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合
  • 「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」によって損害が生じた場合

の基準に満たない場合は水災補償を受けることができません。

地震が原因の津波や土砂崩れによる損害

地震が原因で起きた津波や土砂崩れは火災保険の水災補償では補償を受けることができません。これらは地震保険の対象です。水災に限らず、地震が原因で起こった損害については火災保険だけでは補償を受けられないので、地震による損害に備えたい場合は火災保険とセットで地震保険にも入ることを検討しましょう。

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水濡れや漏水による損害

水による損害なので水災と混同されがちですが、給排水設備の破損やマンション上階からの漏水で自宅の家具や壁面などに損害を受けたなどの場合は「水濡れ」での補償となります。発生原因等が異なるので、水に関係する補償はすべて同じというわけではありません。

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風、雹(ひょう)、雪による損害

同じ台風による損害であっても強風が原因でガラスが割れたり屋根瓦が飛んだりした場合の損害は風災の補償対象です。強風で屋根瓦が飛び、そこから入る雨で家具が濡れたという場合も風災です。また、水に関係しますが、雹や雪によって雨どいやカーポートに損害を受けたような場合については雹災・雪災での補償となります。なお、風災・雹災・雪災は一緒になっていることが多いです。

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水災補償は必要?判断基準は?

多くの保険会社で水災補償を補償に含めるか否かを決めることができます。当然、水災補償を含めた場合は含めない場合と比べて保険料が上がりますが、水災補償は必要なのでしょうか。

水災補償が必要かの判断で参考になるのがハザードマップです。ハザードマップで自宅がどのような災害の危険があるのか確認するようにしましょう。「市区町村名 ハザードマップ」などと検索するか、国土交通省国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」からたどることができます。また、昔の地名を調べられるのであれば、それも参考になるかもしれません。「蛇」や「龍」などは有名です。また、神社やお寺の石碑などにも自然災害についての記述が見つかることがあります。

水災補償を外しても問題がないであろう場合としては、市街地のマンションの高層階に住んでいる場合があります。水災補償の補償対象となるような浸水被害を受ける可能性はかなり低いでしょう。ただし、山が近くにある場合は土砂災害の被害を受ける可能性がないか確認する必要があります。また、2階や3階くらいだと地域によっては浸水の可能性があります。1階はおおよそ3mなので、最大で3m~5mの浸水が想定される地域や5m~10mの浸水が想定される地域では、2階や3階であっても水災補償を検討するようにしましょう。

水災補償は後から追加することも可能です。火災保険契約時には気が付かなく、後から災害のリスクがあることがわかる場合もあると思いますが、そのような場合は気が付いた時点で火災保険の見直しを行うようにしましょう。

※保険会社によっては後付けできない場合や毎年の始期応当日以外では補償の追加・削除ができない場合があります。

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水災補償の付帯率は?

損害保険料率算出機構によると、2020年度における火災保険の水災補償付帯率は66.6%です。水災補償付帯率とは、当該年度末時点で有効な火災保険契約件数のうち、水災を補償している契約件数の割合のことです。おおよそ3分の2の契約で水災補償が付帯されていることになります。

都道府県別水災補償付帯率

+ 都道府県ごとの付帯率(クリック・タップで開きます)
都道府県付帯率
北海道71.9%
青森県69.6%
岩手県66.2%
宮城県67.0%
秋田県63.0%
山形県61.9%
福島県69.1%
茨城県61.3%
栃木県67.6%
群馬県68.3%
埼玉県67.5%
千葉県63.1%
東京都62.7%
神奈川県64.0%
新潟県73.6%
富山県65.3%
石川県63.8%
福井県68.7%
山梨県71.3%
長野県72.5%
岐阜県75.2%
静岡県68.8%
愛知県69.5%
三重県70.2%
都道府県付帯率
滋賀県60.0%
京都府63.2%
大阪府62.1%
兵庫県64.2%
奈良県59.6%
和歌山県72.9%
鳥取県73.7%
島根県75.5%
岡山県75.3%
広島県70.9%
山口県79.7%
徳島県79.8%
香川県71.4%
愛媛県71.7%
高知県77.7%
福岡県68.9%
佐賀県75.5%
長崎県74.5%
熊本県72.2%
大分県70.3%
宮崎県77.1%
鹿児島県68.5%
沖縄県67.7%
全国66.6%

※全国計の66.6%には各都道府県に分類不能の40.6%を含む
出典:損害保険料率算出機構

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まとめ

火災保険の水災補償では台風や豪雨などによる洪水、土砂災害に備えることができます。土砂崩れなども水災補償に含まれることに注意してください。水災補償を外せば保険料は安くなりますが、損害を受ける可能性はないのかハザードマップなどをよく確認するようにしましょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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  • この記事を書いた人

インズウェブ

「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず火災保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。

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