火災保険は火災だけでなく風災や雪災、水災、盗難など様々な補償がパッケージとなっています。最近では自分で必要な補償を選べる火災保険も出てきましたが、その場合でも「火災」「落雷」「破裂・爆発」は基本補償としてセットされています。火災や落雷は想像がつきやすいですが、破裂・爆発はどのようなときに補償を受けられるのでしょうか?
破裂・爆発はどのような場合に補償される?
火災保険の破裂・爆発とは、「気体または蒸気の急激な膨張を伴う破壊またはその現象」です。具体的には以下のような場合などで補償を受けることができます。
- ガス漏れに気づかず火をつけたため爆発し、自宅が損壊した。
- 調理中にカセットコンロのボンベが爆発して自宅が損壊した。
- スプレー缶が破裂して建物や家財に損害が発生した。
- 隣家がガス爆発を起こして被害を受けた。
もちろん、上記のような事例であっても故意や重大な過失がある場合は補償の対象外となります。スプレー缶をふざけて火に向かって噴射して爆発したというような場合では補償を受けられない可能性があります。
ちなみに、同じ破裂でも水道管が凍結して破裂したという場合は破裂・爆発では補償されません。「気体または蒸気の急激な膨張を伴う破壊またはその現象」には当たらないからです。水道管が凍結して破裂した場合、その修理代は水道管修理費用保険金で水漏れによる損害は水濡れ補償で補償を受けられます。
ガス事故はどれだけ起きている?
令和元年版消防白書によると、平成30年中に発生した都市ガス及び液化石油ガス(LPG)の漏えい事故または爆発・火災事故のうち、消防機関が出動したものは862件です。さらにこのうち、爆発・火災は全体の30.7%である265件です。数が多い事故とは言えませんが、死傷事故につながることもあるので注意が必要です。実際、平成30年中のガス事故での死傷者数は174人ですが、そのうち140人が爆発・火災によるものです。
また、経済産業省がまとめている「ガス事故の発生状況」では各年でどのようなガス事故が発生したのか具体的な内容を知ることができます。2019年に起きたガス爆発事故についていくつかピックアップしてみます。
発生年月日 | 発生場所 | 事故内容詳細 |
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2019年4月22日 | 神奈川県横浜市 | 一般集合住宅において、窓ガラスを破損し、需要家1名が負傷するガス漏えい爆発火災事故が発生しました。原因は、こんろに接続するソフトコードから何らかの要因でガスが漏えいし、着火、爆発したものと推定されますが、現在詳細を東京電力エナジーパートナー株式会社が調査中です。 |
2019年5月6日 | 静岡県磐田市 | 一般住宅に併設されたプレハブ小屋内で、料理をしていた住人1名と小屋周辺にいた7名が飛散したガラス片等で負傷するガス漏えい爆発事故が発生しました。原因は、プレハブ小屋内の10kg容器に接続するガス栓の誤開放により漏えいしたガスが引火し、爆発したものと推定されますが、現在詳細を袋井ガス株式会社が調査中です。 |
2019年5月24日 | 滋賀県東近江市 | 社会福祉施設の厨房内において、窓ガラスの一部等を破損・焼損するガス漏えい爆発事故が発生しました。原因は、未使用ガス栓の誤開放によりガスが漏えいし、何らかの要因で着火・爆発したものと推定されますが、現在詳細を中島商事株式会社が調査中です。 |
2019年6月22日 | 神奈川県平塚市 | 飲食店において、従業員1名が軽傷を負うガス漏えい爆発事故が発生しました。原因は、業務用コンロの点火操作時に未燃ガスが滞留し、何らかの要因で着火、爆発したものと推定されますが、現在詳細を日本瓦斯株式会社が調査中です。 |
出典:経済産業省「ガス事故の発生状況(2019年)」
隣家に損害を与えてしまったら
家庭内で収まるような小規模な事故であればよいのですが、例えばガス爆発による火災が延焼して隣家にも損害を与えてしまうという可能性もあります。そのような場合のための補償はあるのでしょうか。
まず、そもそも法的な賠償責任が発生するか、についてです。日本には失火責任法という法律があり、失火の場合は故意や重大な過失がある場合を除いて不法行為による損害賠償責任が発生しません。しかし、爆発や爆発による火災は失火ではないので失火責任法の適用を受けずに損害賠償責任が発生することになります。
こうした場合の損害賠償責任に備えることができるものとしては個人賠償責任保険があります。個人賠償責任保険は日常生活において、契約者自身またはご家族の方が他人にケガをさせてしまったり他人のものを壊してしまったりして損害賠償責任を負った場合に備える保険です。火災保険の特約のほかに自動車保険や傷害保険の特約などでも契約することができます。
個人賠償責任保険は日常のトラブルについて幅広くカバーしています。例えば、自転車に乗っていて歩行者とぶつかってケガをさせてしまった場合、飼い犬の散歩中に犬が他人を噛んでけがをさせてしまった場合、洗濯機のホースが外れていてマンションの下の階に水が漏れてしまった場合、子供が外でボールで遊んでいて他人の家の窓ガラスを割ってしまった場合などです。すでにほかの保険の特約などで契約している場合は追加で加入する必要はありませんが、そうでない場合は契約しておくと安心できます。
火災保険の個人賠償責任特約とは?
火災保険の特約として加入できる個人賠償責任保険は堅い名前とは裏腹に日常の幅広いトラブルに対して利用することができます。特にマンション等の集合住宅にお住まいの方に ...続きを見る
まとめ
火災保険の基本補償に含まれる破裂・爆発は、ガス漏れによる爆発やスプレー缶の破裂などによって建物や家財に損害が発生した場合に補償を受けることができます。また、爆発や爆発による火災は失火責任法の適用を受けません。隣家などに損害を与えてしまい損害賠償責任を負った場合は火災保険の特約としても契約できる個人賠償責任保険で補償を受けることができます。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。