火災保険の契約の際、免責金額を自分で選んで設定する必要がある場合があります。しかし、「免責金額」という言葉は日常生活で使うことはほぼなく、免責金額とはいったい何なのか、いくらで設定すべきなのか分からない人も多いのではないかと思います。火災保険の免責金額について詳細を説明します。
火災保険の免責金額とは?
免責金額とはいわば自己負担金額です。免責とは責任を免れるという意味ですから、保険会社が保険金の支払の責任を免れる金額、つまりは自己負担しなければならない金額ということです。このような設定がない場合、例えば窓ガラス1枚が割れたので1万円の保険金の支払を請求するというような事例が多発すると、事故の調査や保険金の支払に多くのコストがかかるようになってしまいます。このような些細な金額については保険金を支払わないようにすることで保険会社のコストを抑えられ、保険料の値上げも抑えられているのです。
免責金額の2つの方式
火災保険の免責金額の設定にはフランチャイズ方式と免責方式(エクセス方式)の2つの方式があります。フランチャイズ方式は、一昔前の火災保険の風災補償に20万円の金額設定で標準的についていました。一定の金額までは全額自己負担で、一定の金額を超えたら全額保険金が支払われる、という方式です。最近の火災保険はもう一方の免責方式が多いです。これは、一定の自己負担額を定めて、損害額からその自己負担額を除いた金額を保険金として支払われる、という方式です。自動車保険の車両保険を契約している人は、それと同じような方式だと思えばよいでしょう。
これだけではわかりにくいので具体例を用いて説明します。フランチャイズ方式で免責20万円と免責方式で免責5万円の設定の場合で比べてみます。
損害額 | フランチャイズ方式 | 免責方式 |
---|---|---|
損害額3万円 | 保険金:0円 自己負担:3万円 | 保険金:0円 自己負担:3万円 |
損害額15万円 | 保険金:0円 自己負担:15万円 | 保険金:10万円 自己負担:5万円 |
損害額30万円 | 保険金:30万円 自己負担:0円 | 保険金:25万円 自己負担:5万円 |
フランチャイズ方式では損害額が20万円を超えるまでは全額自己負担、20万円以上の場合は全額保険金が支払われる、という方式です。免責方式で免責金額が5万円の場合は、損害額がいくらであっても5万円の自己負担をし、残りの金額について保険金が支払われる、という方式です。
設定できる免責金額は各社で異なる
保険会社によって設定できる免責金額に違いがあります。最近は0円、5千円、1万円、3万円、5万円、10万円、20万円などのいくつかの金額が示され、その中から選択するパターンが多いです。免責金額が大きいほど、自己負担額が大きくなりますが保険料は安くなります。
また、金額だけでなく設定する対象も異なります。補償ごとに免責金額を設定する保険会社もありますし、一律の免責金額のみの保険会社もあります。一律の設定の方がわかりやすく覚えておきやすいですが、補償ごとに設定できた方がニーズに合わせた設定が可能です。
免責金額の設定のポイント
免責金額をいくらで設定するかは、万が一の時にいくらの自己負担であれば出すことができるのかがポイントです。免責金額を高くすれば保険料が安くなりますが、それで自己負担額が増えて生活の再建に苦労するのなら本末転倒です。迷ったときは、保険会社や代理店に相談して、免責金額によって保険料の負担がどう変わるかを確認しつつ設定を決めるとよいでしょう。
また、補償ごとに免責金額を設定できる場合は、起こる可能性が高い災害に対する補償の免責金額は低めにした方がよいでしょう。例えば、近くに海や川があったり海抜ゼロメートル地帯に住んでいたりした場合は、水災補償の免責金額は小さくすると安心です。
まとめ
免責金額とは、簡単に言えば自己負担金額です。免責方式とフランチャイズ方式によって保険金の支払が変わってくるので、どのような契約になっているのか確かめておくとよいでしょう。免責金額を高く設定すれば保険料が安くなりますが、万が一の時に自己負担額が増えてしまいます。どれだけの自己負担ならば問題ないか考えて設定するようにしましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。