火災保険で支払われる保険金の中には「残存物取片付け費用保険金」というものがあります。これは費用保険金の一種なのですが、費用保険金とは一体何なのでしょうか。また、その中でも残存物取片付け費用保険金はどのような補償なのでしょうか。
損害保険金と費用保険金
火災保険には様々な補償がありますが、支払われる保険金は大きく分けて「損害保険金」と「費用保険金」の2つに分けることができます。
ポイント
- 損害保険金
- 保険の対象である建物や家財が損害を受けた時、その損害に対して支払われる保険金
- 費用保険金
- 建物や家財の損害の他にかかる様々な費用に対して支払われる保険金
例えば、火災で家が全焼してしまったとします。この時、焼けてしまった建物や家財の損害そのものに対する補償が損害保険金です。そして、火災で家が焼けてしまった場合、建物や家財の損害のほかに、焼け残った建物や家財を片付けるための費用や使用した消火薬剤などの再取得に係る費用、一時的にホテルなどに泊まるときの費用など様々な費用が発生します。こうした様々な費用に対して支払われる保険金が費用保険金です。
費用保険金には今回紹介する残存物取片付け費用保険金のほかに、臨時費用保険金、地震火災費用保険金、失火見舞費用保険金、損害防止費用保険金などがあります。
火災保険の費用保険金とは?
火災保険に加入していれば火災や自然災害で建物や家財に損害を被っても保険金によって建て直したり買い直したりすることができます。しかし、火災や自然災害の後にかかる費 ...続きを見る
残存物取片付け費用保険金とは
残存物取片付け費用保険金とは、損害保険金が支払われる場合において、火災や自然災害などで損害を受けた建物や家財の焼け残りや瓦礫などの残存物を片付けるための費用(建物の取り壊し費用、清掃費用、搬出費用など)の実費(損害保険金の10%が限度)が支払われるという費用保険金です。支払いの迅速化のために損害保険金としてまとめて支払うとする保険会社もあります。
残存物取片付け費用保険金は以下のような場合に支払われます。
- 火災で燃え残った建物や家財の撤去に費用がかかった
- 台風で自宅の外壁が破損して庭に散乱したため、それを集めて撤去するのに費用がかかった
- 外からボールが飛んできて窓ガラスが割れ、窓ガラスの清掃費用がかかった
なお、住宅金融支援機構特約火災保険など、水災による損害は残存物取片付け費用保険金の対象外となっている場合もあります。どのような場合に保険金が支払われるかは保険会社や代理店にご確認ください。
損害保険金の対象外の場合は支払われない
残存物取片付け費用保険金は、損害保険金が支払われる場合において、損害保険金とは別に片付け費用が支払われるというものです。損害保険金の支払い対象とならない場合は残存物取片付け費用保険金は支払われません。
最近は自分で補償内容をある程度自由に選べる保険会社も増えていますが、例えば風災補償を外していて、台風による強風で屋根瓦や外壁に損害を負ったとき、風災補償を外しているので損害保険金は支払われず、また、片付けにかかった費用に対しても残存物取片付け費用保険金も支払われません。
また、契約者や被保険者の故意や重大な過失、法令違反があった場合や経年劣化による損害、地震・噴火またはこれらによる津波による損害の場合など火災保険の支払い対象外となる場合においても当然ながら残存物取片付け費用保険金も支払われません。
火災保険がおりない?保険金を受け取れない主な場合
火災保険は火災のみではなく自然災害や日常のトラブルなど幅広い範囲の損害を補償してくれます。しかし、住宅に関する事ならどんな場合でも保険金が支払われるというわけで ...続きを見る
まとめ
火災や自然災害などで建物や家財に損害を受けたとき、建物や家財の被害そのもののほかに片付けのための費用がかかります。そうした費用に対して損害保険金の10%を限度として実際にかかった費用が保険金として支払われるのが残存物取片付け費用保険金です。
残存物取片付け費用保険金は契約内容によって水災の場合は対象外などの条件が付いていることがあります。補償内容を確認してみて、その内容に不満があるのであれば一括見積もりサービスを活用して満足のいく保険会社を探してみましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。