台風による強風で庭木が倒れてしまった、大雪による雪の重みで庭木が折れてしまったなど自然災害によって庭木にも被害を受けることがあります。そうした場合、火災保険で補償を受けられるのでしょうか。また、倒れた木が隣家などに損害を与えてしまった場合の補償はどうなるのでしょうか。
保険会社によって異なる
庭木が火災保険の補償対象となるか否かは保険会社によって異なります。また、庭木が補償対象となる保険会社であっても損害発生日から7日以内に枯死した場合などの条件が付いていることもあります。庭木が対象となるかは約款に記載されていますが、わからない場合は保険会社や代理店に確認するようにしましょう。
庭木は建物での補償
火災保険の対象は建物と家財に分かれます。庭木が建物と家財のどちらに分類されるかというと建物の方になります。庭木が建物というと違和感があるかもしれませんが、建物に付属して動かせないものは建物での補償となります。したがって、門や塀、垣、車庫、物置などや建物備え付けのエアコン、浴槽、調理台なども建物での補償となります。
逆に家財の方の対象となるのは、基本的に電化製品、家具、衣類、食器などの生活に欠かせない「動かすことができるもの」です。引っ越しの時に持ち運んでくるものをイメージするとよいと思います。ただし、1個(1組)の価額が30万円を超える貴金属、宝石、書画、骨董等の「明記物件」は契約時に申告して保険証券へ明記していなければ保険の対象となりません。申告をしていなかった場合の扱いは保険会社によって異なります。
地震により倒木してしまった場合は?
地震による被害の場合は火災保険では補償を受けることができず、火災保険とセットで契約する地震保険での補償となります。地震保険では地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没または流出による建物や家財の損害に対して補償を受けることができます。
地震保険で注意しておきたいのが、地震保険の被害の認定は建物の主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)で行われるということです。これは大地震の時でも迅速・的確・公平に保険金を支払うためです。倒木を起こすほどの地震の場合は建物の主要構造部にも被害が発生していると思いますが、もしそちらに被害がない場合や損害が保険金が支払われる基準に満たない場合は倒木していても保険金は支払われません。
地震保険の対象となるのは?
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倒木で他人に損害を与えてしまった時の補償はある?
自宅の庭の木が倒れるなどして通行人にケガをさせてしまったり隣家に損害を与えてしまったりした場合の補償は何かあるのでしょうか?
損害賠償責任はある?
まず確認しておきたいのが自分に損害賠償責任があるのかです。原因が自然災害による被害の場合はそもそも損害賠償責任が発生しません。ただし、自然災害が原因であっても損害賠償責任が発生することもあります。それは、保存状態に瑕疵があったために損害を与えてしまった場合です。普段からきちんと手入れを行っていれば発生しなかった、周りの状況からみて自然災害のみが原因で起こったとは考えられないというような場合には損害賠償責任が発生します。
個人賠償責任保険でカバー
仮に普段の手入れを怠っていて損害賠償責任を負ったという場合、個人賠償責任保険で補償を受けることができます。個人賠償責任保険は火災保険の特約のほか、自動車保険や傷害保険の特約で付帯できたりクレジットカードに付帯できたりします。
個人賠償責任保険とは、日常生活において、契約者自身またはご家族の方が他人にケガをさせてしまったり他人のものを壊してしまったりして損害賠償責任を負った場合に備える保険です。今回紹介している庭木の場合のほかにも自転車で他人をはねてしまった場合や飼い犬が散歩中に他人を噛んでけがをさせてしまった場合、マンションで水漏れを起こして下の階の部屋に損害を与えてしまった場合など様々な事例で使えます。
なお、個人賠償責任保険が使えるのはあくまでも法的な損害賠償責任を負った場合です。完全に自然災害が原因で損害賠償責任がないけど気まずいからお見舞金を払うというような場合には使えません。
火災保険の個人賠償責任特約とは?
火災保険の特約として加入できる個人賠償責任保険は堅い名前とは裏腹に日常の幅広いトラブルに対して利用することができます。特にマンション等の集合住宅にお住まいの方に ...続きを見る
まとめ
庭木が火災保険の対象となるかは保険会社によって異なります。補償対象になるのかわからないという場合は保険会社や代理店に確認しましょう。もし補償対象となる場合には建物の方での補償となります。
また、庭木が倒れるなどして隣家に損害を与えてしまった場合、手入れを怠っていたなどと認定されると損害賠償責任を負う可能性があります。そうした場合は火災保険の特約で契約できる個人賠償責任保険が使えます。ほかに自転車事故を起こしてしまった場合などでも使えるのでほかの保険の特約で契約がない場合には火災保険に個人賠償責任保険を付帯することを検討してみましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。