火災保険の基礎知識

畳は火災保険の対象?建物と家財どっち?

投稿日:2021年4月1日 更新日:

最近はフローリングの部屋が多いですが、1部屋は畳があるという家庭もあると思います。畳を焦がしてしまった、畳がカビてしまったなど畳に損害が発生してしまった場合、火災保険の対象となるのでしょうか。

畳は火災保険の「建物」の対象

火災保険の対象は「建物」と「家財」に分けられています。畳はそのうちの建物の方で補償されることになります。建物と家財のそれぞれについてどのようなものが対象として含まれるのか説明します。

建物に含まれるもの

火災保険で建物を対象とする場合、建物本体はもちろんのこと、その建物と同じ敷地内にある門や塀、物置や車庫などの建物付属物も補償の対象に含まれます。ただし、申込書等で門・塀・垣、物置・車庫等を除く旨を記載していない場合に限ります。また、門や塀など以外にもエアコンや浴槽、調理台などの建物に取り付けてあるものや建物に固定してあるテレビアンテナも建物の対象となります。

なお、マンションの場合は専有部分が対象です。エントランスやエレベーター、廊下などの共用部分は管理組合が火災保険に加入するのが一般的です。

家財に含まれるもの

家財保険の対象となるのは基本的に電化製品、家具、衣類、食器などの生活に欠かせない「動かすことができるもの」です。引っ越しの時に持ち運んでくるものをイメージするとよいと思います。

ただし、1個(1組)の価額が30万円を超える貴金属、宝石、書画、骨董等の「明記物件」は契約時に申告して保険証券へ明記していなければ保険の対象となりません。申告をしていなかった場合の扱いは保険会社によって異なります。

補償の対象となるもの補償の対象にならないもの
  • 電化製品、家具、衣類、食器などの生活用動産
  • 1個(1組)の価額が30万円を超える貴金属、宝石、書画、骨董等
    ※別途明記が必要
  • 建物に付属しているもの
  • 自動車
  • 動植物
  • 現金・小切手・有価証券
    (生活用の通貨、預貯金証書などは盗難に限って補償される場合あり)
  • パソコンなどの中のプログラムやデータ
  • 仕事で扱う什器や商品
  • 家財を建物の外に持ち出している間に発生した損害
    ※特約により補償対象となる場合あり

畳の損害で火災保険は使える?

畳が火災保険の建物の対象となると分かりましたが、具体的にはどのような場合に火災保険が使えるのでしょうか。いくつかの状況をもとに紹介します。

火災で燃えてしまった場合

火災を起こして畳も燃えてしまった場合についてです。この場合は問題なく火災保険の補償対象となるでしょう。一応、契約者等が故意に火をつけた場合や重大な過失があったと認定されるような場合では補償対象とならないのでご注意ください。また、地震や噴火が原因で起きた火災については火災保険の契約のみでは補償されず地震保険の契約が必要となります。

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アイロンを落として焦がしてしまった場合

アイロンを落として焦がしてしまった、火のついたタバコを落として焦がしてしまったなどという場合は補償対象とならないことが多いです。火災とは、一般的に「場所または時間に偶然性」があり、「火勢が自力で拡大する」ものをいうので、アイロンを落として焦がしてしまったというようなケースでは火災にはあたりません。

補償対象となる可能性がある項目としては、「不測かつ突発的な事故(破損・汚損など)」があります。この補償内容を契約している場合は対象となるのか契約する保険会社に確認してみるとよいでしょう。なお、外観上の問題で機能に支障をきたさない場合は対象外となります。また、「不測かつ突発的な事故(破損・汚損など)」には自己負担額(免責金額)が設定されていることが多いので、その金額以下の損害の場合は保険金が支払われません。

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洪水で床上浸水に遭い、畳が水浸しになった場合

洪水で床上浸水の被害に遭った場合は火災保険の水災補償で補償を受けることができます。水災補償は一般的に、次のような支払基準が設けられています。支払基準に満たない場合、保険金は支払われないのでご注意ください。

注意ポイント

水災補償の支払基準

  • 建物(家財)の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合
  • 「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」によって損害が生じた場合

なお、床上浸水とは、畳やフローリングなどの居住部分の床を超える浸水のことをいい、地盤面とは、建物が周囲の地面と接する位置のことをいいます。ただし、地盤面について、地下室など床面が地盤面より下にある場合は、その床面をいいます。

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水漏れで畳が水浸しになった場合

同じく水に関係する内容でも、給排水設備の事故や自宅以外の戸室で生じた事故で水漏れが起こり、畳が水浸しになってしまったというような場合では水濡れ補償での補償となります。なお、マンションやアパートなどで上の階の部屋が原因で水濡れ被害を受けた場合は損害賠償請求をすることもできます。

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湿気で畳がカビてしまった場合

同じく水に関係しますが、湿気でカビてしまったというようなケースは火災保険の補償対象とはなりません。火災保険は偶発的に起きた事故による損害を補償するものであり、カビは偶発的な事故にあたらないと考えられます。

火災保険の約款にも保険金を支払わない場合として「保険の対象の自然の消耗もしくは劣化または性質による変色、変質、さび、かび、腐敗、腐食、浸食、ひび割れ、剥がれ、肌落ち、発酵もしくは自然発熱の損害その他類似の損害」と記載されています。

ペットが畳を傷つけてしまった場合

ペットを飼っていて、ペットが畳をひっかいて傷つけてしまったというケースや畳の上で粗相して汚してしまったというようなケースでは火災保険の補償を受けるのは難しいと思われます。一応、こういったケースで使えそうなものには「不測かつ突発的な事故(破損・汚損など)」がありますが、単に外観上の問題で機能に支障をきたしていない場合は対象外となりますのでご注意ください。

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火災保険ではどのような損害が補償される?

畳に関する具体的なケースについて紹介してきましたが、より一般に火災保険ではどのような場合に補償を受けることができるのでしょうか。火災保険の一般的な補償内容を紹介します。

損害の種類内容
火災、破裂・爆発落雷失火・延焼・ボヤなどの火災、ガス漏れなどによる破損・爆発の損害、落雷による損害を補償。
風災・雹災・雪災台風等の強風による損害、雹(ひょう)や霰(あられ)による損害、豪雪の際の雪の重み、雪の落下などによる事故または雪崩により生じた損害を補償。
水災台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、高潮、土砂崩れなどにより生じた損害を補償。
水濡れ給排水設備の故障や他人の戸室で生じた事故による水濡れ損害(水漏れ)を補償。
物体の落下・飛来・衝突車の飛び込みや飛び石など建物外部から物体が落下・飛来・衝突したことにより生じた損害を補償。
盗難家財の盗難や盗難に伴う鍵や窓ガラス等の建物の損害を補償。
騒擾・集団行動等に伴う暴力行為集団行動などに伴う暴力行為・破壊行為による損害を補償。
破損・汚損など子どもが室内でボールを投げ、窓ガラスが破損してしまった等、事前に予測して防ぐことができず、突発的な事故によって生じた建物や家財の損害を補償。

かつての火災保険では補償内容があらかじめ決められた2、3個のパッケージの中から1つを選ぶような形式が多かったのですが、最近では自分で補償内容を取捨選択できるような商品も増えています。立地環境などにより明らかに不要な補償があればそれを外すことによって保険料を抑えることが可能です。

地震等による損害には地震保険が必要

火災保険のみでは地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする損害に対する補償を受けることができません。火災保険とセットで契約する地震保険が必要となります。

地震保険は国と民間が共同で運営する保険で、どこの保険会社で地震保険に入っても補償内容や保険料は変わりません。国と共同という形をとっているのは、地震による被害は広範囲かつ甚大になることがあり、その場合、民間の保険会社のみで保険金を支払うことが困難であるからです。

地震保険の対象となるのは火災保険と同様に建物と家財で地震等が原因で起きた火災・損壊・埋没・流出などの損害です。保険金額(支払われる保険金の上限)は火災保険の保険金額の30~50%の間で設定することになっています。実際の補償では、発生した損害の程度によって「全壊」「大半損」「小半損」「一部損」に分類され、その分類ごとに決められた割合の保険金が支払われます。

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まとめ

火災保険の対象は建物と家財に分かれていますが、畳は建物の方で補償対象となります。そして、火災や水災、水濡れなど受けた損害に応じた補償で補償を受けることになります。契約していない補償内容での損害やそもそも火災保険の対象とならない損害については補償を受けることができないのでご注意ください。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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