日本の木造住宅で代表的な工法として、在来工法とツーバイフォー工法(枠組壁工法)の2つがあります。この2つの工法にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、そのうちの1つとしてツーバイフォー工法のほうが在来工法よりも火災保険が安いということを聞いたことはありませんか?実際のところ、ツーバイフォー工法は本当に火災保険料が安くなるのでしょうか?
ツーバイフォーのほうが安いというのはおおむね正しい
在来工法よりもツーバイフォー工法のほうが火災保険料が安いというのはおおむね正しいです。ツーバイフォー工法は耐火性能に優れているので、そうでない在来工法よりも火災保険料が安くなることが多いです。
火災保険では建物の構造によって保険料が変わります。戸建ての住宅の場合、建物の耐火性能によってT構造(耐火構造)とH構造(非耐火構造)に分けられ、T構造のほうが保険料は安くなります(耐火性能に優れた二世帯住宅の場合などでさらに保険料の安いM構造(マンション構造)に当たることもあります)。
木造の建物は多くの場合、保険料の高いH構造となりますが、ツーバイフォー工法で建てた場合は省令準耐火構造の住宅と認定されることが多く、その場合はT構造として火災保険料が安くなります。ただし、ツーバイフォー工法でも省令準耐火構造の仕様に沿っていない場合はH構造となって保険料が高くなります。また、在来工法であっても省令準耐火構造の仕様に沿って建築すればT構造となって保険料が安くなります。それゆえ、ツーバイフォー工法のほうが火災保険が安いというのは「おおむね」正しいとしているのです。
構造級別 | 建物の例 |
---|---|
M構造 | 柱がコンクリート造・コンクリートのブロック造・れんが造・石造の共同住宅、耐火建築物の共同住宅 |
T構造 | 柱がコンクリート造・コンクリートのブロック造・れんが造・石造・鉄骨造の建物(共同住宅以外)、耐火建築物(共同住宅以外)、準耐火建築物、省令準耐火建物 |
H構造 | M構造・T構造に該当しない建物 |
木造でも省令準耐火構造なら火災保険料が安くなる
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省令準耐火構造かの確認方法
省令準耐火構造なら火災保険が安くなりますが、建物が省令準耐火構造なのかはどのように確認すればよいのでしょうか?施工業者やハウスメーカーに聞くのもよいですが、保険会社に確認書類を求められることがあるのでどのような書類で確認できるのか紹介します。
- 設計仕様書、設計図面、住宅などの性能を示すパンフレットなど
- 住宅金融支援機構の承認を得た「木造軸組工法による省令準耐火構造の住宅」に適合することがわかる資料(特記仕様書)
- 施工者、またはハウスメーカーが発行した証明書
- 住宅金融支援機構等特約火災保険を契約していた(または契約している)建物で、「ご契約カード」などの構造級別欄が以下のいずれかの表示であること
- C’(3’)
- 省令準耐火
- 省令簡耐
「省令準耐」「省令簡易耐火」「省令簡耐」「簡易耐火」「簡耐」のように記載されていることがありますので気を付けてください。
建物の耐火性能(耐火建築物等)はどこで確認できる?
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地震保険料も安くなる
省令準耐火構造の場合、火災保険だけでなく地震保険も安くなります。地震保険の場合、火災保険でM構造・T構造の場合はイ構造、H構造の場合はロ構造に区分され、イ構造のほうがロ構造よりも保険料が安くなるのです。
保険金額1000万円あたり、保険期間1年、割引適用なしの地震保険料(2021年1月1日以降始期)は以下の通りです。
都道府県 | イ構造 (主として鉄骨・コンクリート造建物等) | ロ構造 (主として木造建物等) |
---|---|---|
保険料 | 保険料 | |
北海道・青森県・岩手県・秋田県・山形県・栃木県・群馬県・新潟県・富山県・石川県・福井県・長野県・岐阜県・滋賀県・京都府・兵庫県・奈良県・岡山県・鳥取県・島根県・広島県・山口県・福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・鹿児島県 | 7,400円 | 12,300円 |
福島県 | 9,700円 | 19,500円 |
宮城県・山梨県・愛知県・三重県・大阪府・和歌山県・香川県・愛媛県・大分県・宮崎県・沖縄県 | 11,800円 | 21,200円 |
茨城県 | 17,700円 | 36,600円 |
徳島県・高知県 | 17,700円 | 41,800円 |
埼玉県 | 20,400円 | 36,600円 |
東京都・千葉県・神奈川県・静岡県 | 27,500円 | 42,200円 |
※2021年1月に保険料の改定が実施されます。ただし、改定の実施前後ともにイ構造のほうが安いというのは変わりません。
地震保険料が値上げへ!基本料率が平均5.1%引き上げに
この記事は2019年の情報です。2022年10月に再度地震保険の改定が行われているため、一部情報が古い可能性があります。最新の改定内容は以下の記事リンクをご確認 ...続きを見る
地震・噴火およびそれらによる津波を原因とした損害については火災保険では補償されず、地震保険の契約が必要となります。日本は地震大国であり、どこで巨大な地震が起きても不思議ではありません。地震等による損害にも備えたいのであれば火災保険と一緒に地震保険の加入も考えましょう。
まとめ
木造住宅で在来工法で建築するよりもツーバイフォー工法で建築するほうが火災保険料が安くなるというのはおおむね正しいです。ただし、ツーバイフォー工法でも省令準耐火構造の仕様に沿っていなければ保険料は高く、在来工法でも省令準耐火構造の仕様に沿っていれば保険料は安くなります。また、省令準耐火構造であれば地震保険も安くなります。地震等による損害は火災保険だけでは補償されないので、地震にも備えたいという場合は地震保険についても検討しましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。