電子レンジはほとんどの家庭で設置されており、1人暮らしの家庭でも使用頻度の高い家電の一つとして生活に不可欠な調理家電になっています。そんな万能な電子レンジですが、電子レンジの事故は報告件数が多い調理家電でもあります。東京消防庁の資料によると、令和3年中に電子レンジから出火した火災は、65件だったようですが、令和4年(2022年)12月5日時点で既に74件の報告があり過去10年間で最高件数だった昨年を既に上回っています。電子レンジの火災事故が増えている状況から電子レンジの使い方について警鐘されています。電子レンジのどんな使い方が危険なのか知っておきましょう。
目次
電子レンジ火災が多いのは「いも類」
電子レンジで加熱中に電子レンジから出火した食材の報告では東京消防庁内での報告件数44件の内いも類が12件で最多だったようです。
サツマイモなどのいも類は水分が少なく電子レンジで加熱すると焦げたり、発火の危険性が高い食材になります。電子レンジで焼き芋を作ろうとして何度も温めを繰り返しているうちにサツマイモが発火したというような事例が多く報告されているようです。水分の少ない食材を長時間過熱することは発火の危険性が高いため注意する必要があります。
また、いも類以外にも電子レンジで加熱することを避けた方がよい食材があります。電子レンジの事故を未然に防ぐためにも知っておきましょう。なぜ、電子レンジでの加熱がダメなのか理由を知っておくと温めNG食材を記憶しておかなくても温めNG食材を避けることができるでしょう。
【焦げたり発火の危険性が高い食材】
過熱により水分が蒸発して炭化が進みやすい食材です。焦げて発火する恐れがあります。
- いも類(サツマイモ/じゃがいも/さといも など)
- にんじん
- かぼちゃ
- にんにく
- ドライフルーツ
- 中華まん(肉まん/豚まん/あんまん など)
【爆発、発火の危険性が高い食材】
乾燥しており皮膜のある食材は、破裂して発火、爆発につながる危険性の高い食材になります。
- たまご
- 皮付きウインナー
- トマト
- たらこ
- イカ
- ポップコーン
電子レンジ火災の事例
- さといもを700Wで繰り返し加熱して発火
- 冷凍の肉まんを長時間過熱し発火
- パンを700Wで長時間過熱し発火
- 電子レンジ使用中にゆでたまごが破裂し、爆発、
- タオルを500Wで長時間過熱し発火
- 電子レンジで牛乳を温めていたら電子レンジ庫内の油カスが燃損した
電子レンジが爆発・火花を散らす原因
電子レンジは火を使わないため安全な調理器具として活用している人は多いです。確かに、正しく利用すれば活用用とは幅広いですが、使用方法を間違えると危険な事故を引き起こす可能性がある注意したい調理家電です。
独立行政法人 国民生活センターでも注意が呼びかけられていますので、電子レンジの使用は取扱説明書をよく読み正しく利用しましょう。電子レンジは日常でよく利用する調理家電ですから、分かっていても電子レンジで温めてはいけないものや、電子レンジで使用できない容器や包装を使ってしまい、爆発や火花を散らしてしったという経験をしたことがある人も多いと思います。
電子レンジの使い方を誤ると火災などの大きな事故になってしまうこともあるので事前に取扱説明書を確認しておくことが重要です。また、使用中は異常があればすぐに使用を中止できるように電子レンジの側を離れないことが大切です。
電子レンジで爆発や火花を散らす原因
1.長時間の加熱
前項で紹介済みですが、食材によっては温めすぎると食材が焦げたり煙や火がでてしまうものがあります。特にサツマイモなどのイモ類、中華まんは過熱による電子レンジ火災の報告件数が多い食材です。
過熱により食材の炭化が進むと可燃ガスが発生し電子レンジの庫内で引火、爆発といった危険があります。
【東京消防庁消防技術安全所による電子レンジ火災の再現実験結果】
食品の種類 | 質量 | 出火までの時間 |
---|---|---|
さつま芋(焼き芋) | 120g | 6分26秒 |
さつま芋(生) | 170g | 11分30秒 |
中華まん(肉まん) | 90g | 5分34秒 |
中華まん(あんまん) | 110g | 7分37秒 |
※電子レンジ(出力700W)で長時間加熱により爆発的に燃焼した主な食品一覧
東京消防庁 「火災に注意!電子レンジを安全にしようしましょう!」
2.アルミホイルの使用
うっかり、アルミホイルにサツマイモなどの食材をくるんで電子レンジで温めたり、アルミバウチのレトルト食品を電子レンジで温めてしまったりしてしまったという人はいないでしょうか。アルミホイルなどの金属は、電子レンジが食品を温めるために放つマイクロ波(電磁波)を反射してしまう性質があります。この性質により、アルミホイルなどの金属のものを電子レンジで温めると電子レンジ内にマイクロ波が大量反射され、放電を起こします。それにより、電子レンジ内で火花が散ったり、焦げてしまったり、電子レンジが故障してしまうのです。火花が散り、発煙、庫内で発火、ドアガラスが割れてしまうなどの危険性があります。アルミホイルなどの金属は取扱説明書に使用不可と記載されているので知っておきましょう。
金属容器、アルミホイルは温めNG
3.電子レンジで不可の容器
食材の保存容器やお弁当箱などでは「電子レンジ使用可能」や「電子レンジ使用不可」と記載があることも多いです。電子レンジが使えることを売りにして販売している商品のあるように基本的にプラスチック容器は電子レンジの使用に適しません。保存容器やお弁当箱などのプラスチック製以外のものでは、一般的に紙類、木製品などは燃えてしまうため使用できません。低温で焼成された陶器類も高温で温められて割れてしまったりする危険性があるため使用しないようにしましょう。
ポリスチレン製のプラスチック容器(耐熱温度が低い)、紙皿・紙コップなどの紙製品、耐熱性のないガラス容器、おわんなどの木製品、低温で焼成された陶器類は温めNG
4.電子レンジ内部が汚れている
電子レンジの庫内が食品カスや油で汚れていると、食品カスや油カスが温められて発煙や発火の原因になります。ホームセンターやスーパーなどで電子レンジ庫内の掃除グッズなども多く販売されています。食材を入れる調理家電ですからいつもきれいな状態であることが理想ですよね。電子レンジは取扱説明書に沿ってこまめに掃除しきれいに保つようにしましょう。
5.吸気口・排気口をふさいでいる
電子レンジは、側面や背面に吸気口や排気口があります。一般的に、電子レンジの取扱説明書には上部、側面、背面に一定の空間を開けて設置するように記載されています。スペースを持たせる理由には、熱を放熱させる役割もあります。また、吸気口や排気口にほこりなどのゴミが詰まってふさがっている場合も熱を放熱させることができない状態になっています。その場合、熱の逃げ場がなく煙が出たり、発火に繋がってしまう場合があります。
6.電子レンジの寿命
一般的に電子レンジの寿命は10年と言われています。電子レンジの寿命は食品を温めるマイクロ波(電磁波)の寿命になり、マイクロ波を発生させるためのマグネトロンという電子レンジの部品の寿命が約2,000時間のため、使い方にもよりますが、大体10年の計算で「電子レンジの寿命は10年」と言われています。
電子レンジの庫内には、マグネトロンという電子レンジの部品への湿気を防ぐために雲母板(マイカ板)という板が備え付けられています。経年劣化により雲母板自体が発火してしまう心配があります。古い家電は部品の経年劣化などで火災の事故リスクも高くなります。故障がないか十分注意し、少しでも異常があるようであれば買い替えを検討しましょう。
電子レンジ火災が多いのは「20代」?注意すべきポイントは?
電子レンジ火災の事故報告で最も多かった年代は20代です。中でも20代前半の電子レンジ火災事故が多く、死亡事故に至ってしまったケースや大きな火災になってしまったケースもあるようです。電子レンジ火災の特徴は若い世代に多いという特徴があります。
利用者が自由に使える電子レンジの設置があるコンビニも普及されており、電子レンジは手軽に何でも温められると思いがちです。家庭の中で子供が1人で使っている場合もあるでしょう。あまり意識せず、温めてはいけないものまで気軽に電子レンジに入れて温めているため、若年層での電子レンジ火災事故が多いのかもしれません。電子レンジの原理を理解して使用している人はどのくらいいるのか疑問ではありますが、電子レンジで何かを温めるときには、電子レンジの原理を念頭に置き、温め方に注意することや危険なものを入れないように意識することが事故防止に重要でしょう。
電子レンジ火災を防ぐための心得
- サツマイモや中華まんなどは、長時間加熱すると爆発的に焼熱する危険性があるため、加熱時間を長めにせず、取扱説明書等で確認しましょう。
- 調理中はその場を離れず、食品の様子を見ながら加熱しましょう。
- 普段から電子レンジの周囲には、可燃物は置かないように心がけましょう。
- 冷凍食品などは、包装の表示を確認してから加熱しましょう。
東京消防庁 「火災に注意!電子レンジを安全にしようしましょう!」より
電子レンジから煙や火がでたら・・・
電子レンジから煙や火が出ていて、慌てて扉を開け、燃えているものを取り出そうとしていていた衣服に着火、死亡事故になってしまったというケースもあります。電子レンジから火が出ていたら、下記の行動をとり、火災が発生した時には慌てず119番通報をしましょう。
- 電子レンジの扉は開けず電源を遮断する
- 扉をしめたまま、慌てず庫内を確認する
- 水は絶対にかけない
- 火が消えていないようであれば、扉をしめたまま、消火器などで消火する
電子レンジ火災は火災保険で補償
持ち家の場合
電子レンジの使用で火災を起こしてしまった場合は、火災保険で補償します。建物に損害が及んでしまった場合は火災保険の「建物」の補償で補償します。電子レンジ火災で近くにあった家財が燃えてしまったような場合の補償は火災保険の「家財」の補償で補償を受けることができます。
火災保険の補償の対象は「建物」と「家財」に分かれています。持家の場合は建物と家財(どちらか片方のみでも可)で契約するので契約する火災保険で建物と家財の補償があるか確認してみましょう。
故意や重過失の場合は使えない
電子レンジ火災が、重大な過失または法令違反である場合は保険金を受け取れません。重大な過失(重過失)とは、わずかな注意さえあればたやすく予見、防止できるのに漫然と見過ごしたような場合です。過去の判例では、寝たばこの火災の危険性を十分認識しながら何ら対策を講じずに喫煙を続けて火災を起こした場合やてんぷら油の入った鍋を火にかけたままその場を離れて火災が発生した場合などで重過失が認定されています。実際には個々の事例に応じて判断されるので寝たばこはすべて重過失というわけではありませんが、火災には十分注意を払って防げるものは防ぐようにしましょう。
電子レンジ火災も使い方に注意していれば防げたものが多いです。重過失と認定されれば火災保険で補償してもらうことはできません。
賃貸の場合
賃貸の場合は、建物に対する火災保険は大家さんが加入します。借主は賃貸物件に入居する際に、自分の家財を補償する家財のみに契約します。しかし、電子レンジ火災により建物に損害を与えてしまうような場合は、入居者の過失として入居者が補償しなければいけません。電子レンジ火災により、建物に大きな損害を与えてしまった場合などは、修理費用も高額になることが予想されます。そのようなリスクに備えて入居者は、自分の家財を補償する家財保険の特約として「借家人賠償責任保険」にも加入が求められることが多いです。
電子レンジ火災の報告は20代が多いということですから、賃貸で1人暮らしをする人などは特に建物に損害を与えてしまった場合のリスクに備えられているか火災保険の補償内容を確認してみるとよいでしょう。
まとめ
電子レンジによる火災事故は増加傾向にあります。東京消防庁のデータは東京消防署管内だけのものになりますが、以前より、電子レンジによる事故や使い方について、国民生活センターやNITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)でも注意喚起が行われているほど事故の報告が多い調理家電です。寒い季節は暖かいものを食べたくなる季節です。肉まんを温めすぎたり、電子レンジの原理をふと忘れて、缶コーヒーや缶詰をそのまま電子レンジに入れてしまったりしてしまわないように気を付けましょう。