火災保険は火災の時のためだけの保険ではありません。自然災害などで建物・家財に損害を負った場合にも補償を受けることができます。そのなかでも、風災・雹災・雪災補償について、どのような場合に補償されるのか紹介していきます。
目次
風災・雹災・雪災補償とは?どんな場合に補償される?
風災
風災とは、台風、旋風、竜巻、暴風等により生じた損害のことをいいます。例えば、台風による強風で屋根瓦が飛ばされてしまった場合は風災に該当します。同じ台風による被害でも、大雨による洪水や高潮は水災として取り扱われます。
風災補償で補償される事例
保険の対象 | ||
---|---|---|
建物 | 家財 | |
台風による強風で屋根瓦が破損した | 〇 | × |
強風で飛んできた物が壁にぶつかって破損した | 〇 | × |
強風で屋根瓦が飛び、そこから入る雨で電化製品が壊れた | 〇 (屋根瓦) | 〇 (電化製品) |
強風でカーポートが破損した | 〇 | × |
強風で飛んできた物が自動車にぶつかって破損した | × | × |
強風で軒下に置いてあった自転車が倒れて壊れた | × | 〇 |
自動車は火災保険ではなく自動車保険の車両保険での補償となります。
雹災
雹災とは、雹またはあられにより生じた損害のことをいいます。例えば、雹によって窓ガラスが割れた場合は雹災に該当します。なお、積乱雲から降る直径5mm以上の氷の粒を雹といい、直径5mm未満のものはあられといいます。
雹災補償で補償される事例
保険の対象 | ||
---|---|---|
建物 | 家財 | |
雹で窓ガラスが割れてしまった | 〇 | × |
雹で太陽光発電のソーラーパネルが破損した | 〇 | × |
雹で雨どいが破損した | 〇 | × |
雪災
雪災とは、豪雪の際の雪の重み、雪の落下などによる事故または雪崩により生じた損害のことをいいます。例えば、雪の重みでカーポートがつぶれた場合は雪災に該当します。なお、車は火災保険の対象ではないので、車に損害が出た場合は自動車保険の車両保険を使うこととなります。また、融雪洪水による損害は雪災ではなく水災としての扱いです。
雪災補償で補償される事例
保険の対象 | ||
---|---|---|
建物 | 家財 | |
雪の重みでカーポートがつぶれた | 〇 (※自動車は対象外) | × |
雪崩に巻き込まれて自宅が倒壊した | 〇 | 〇 |
融雪洪水で床上浸水の被害を受けた | × | × |
融雪洪水は水災補償での補償となります。
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風災・雹災・雪災補償を受けられないケース
風災・雹災・雪災補償で補償を受けられない事例も紹介します。
通風口や窓の隙間などからの吹き込みでの損害
風災・雹災・雪災によって建物の外側の部分が破損してその破損部分から建物の内部に雨などが吹き込むことで生じた損害は風災・雹災・雪災補償で補償を受けられますが、通風口や窓の隙間などからの吹き込みの場合は補償対象外となります。
台風が来る前の屋根の補強や雪おろし中などの家屋への人為的損害
台風が来る前に屋根を補強しているときに誤って雨どいを破損させてしまった場合や雪下ろし中に誤ってテラスに雪が落下させてしまい破損した場合など、台風や豪雪との相当因果関係がない損害に関しては、風災や雪災による損害としては補償されません。
経年劣化による損害
経年劣化によって生じた損害については火災保険の補償の対象にはなりません。家のメンテナンスは定期的に行うようにしましょう。
自動車やバイクへの損害の場合
自動車やバイク(総排気量が125ccより大きいもの)に対する損害は火災保険の対象ではありません。自動車の損害は自動車保険の車両保険で保険金が支払われます。バイクについてもバイク保険の車両保険で補償を受けられる場合があります。ただし、自動車保険やバイク保険を使うと等級が下がって保険料が上がってしまうので注意が必要です。また、バイク保険については車両保険を取り扱っていなかったり他の車やバイクとの事故のときのみの補償であったりすることもあります。この場合は補償を受けることができません。
駅の駐輪場に停めた自転車が強風で倒れて破損した場合
自宅やマンションの屋根のある駐輪場に自転車を停めている間に起きた損害は火災保険の家財での補償対象になりますが、駅の駐輪場など自宅外で起きた損害については補償の対象にはなりません。
損害発生から3年以上経過している場合
保険金の請求期限は保険法によって3年と定められています。損害が発生したら早めに保険会社に連絡するようにしましょう。また、保険会社によって独自の請求期限を定めている場合もあるので、何か損害が起こる前に請求期限がいつまでなのか保険会社に確認しておくとよいでしょう。
免責金額の設定に注意
火災保険の契約内容によっては損害額が20万円以上でないと保険金が支払われない場合があります。一昔前の火災保険では、風災・雹災・雪災補償は損害額が20万円以上でないと保険金が出ないような契約が一般的でした(フランチャイズ方式)。最近は、一定の金額を自己負担額として設定し、それを除いた金額が保険金として支払われる方式(免責方式)が一般的です。
フランチャイズ方式
損害額が20万円未満の場合は全額自己負担となり、20万円以上の場合は全額保険金が支払われる方式。
ポイント
フランチャイズ方式の事例
損害額が15万円の場合:全額自己負担
損害額が30万円の場合:30万円の保険金
免責方式
3万円や5万円といった自己負担額(免責金額)を設定し、損害額から自己負担額を除いた金額が保険金として支払われる方式。
ポイント
免責方式の事例(自己負担額が5万円)
損害額が5万円以下の場合:全額自己負担
損害額が15万円の場合:15万円-5万円=10万円の保険金
損害額が30万円の場合:30万円-5万円=25万円の保険金
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保険金はいくら受け取れる?
火災保険で受け取れる保険金は損害保険金と費用保険金とに分かれます。それぞれについて紹介します。
損害保険金
損害保険金は風災や水災などで損害を受けたときに、その損害に対して支払われる保険金です。損害保険金として支払われるのは損害額(修理費用や再購入費用)から免責金額(自己負担額)を差し引いた額です(免責方式の場合)。ただし、契約時に定めた保険金額が上限となっています。
損害保険金=損害額-免責金額
※支払われる損害保険金は保険金額が上限です。
なお、フランチャイズ方式の場合は損害額が20万円以上の場合は保険金額を上限として損害額の全額が支払われますが、20万円に満たない場合は保険金を受け取れません。
費用保険金
火災や自然災害の被害を受けた場合、片付けにかかる費用や修理している間ホテルに泊まる費用など追加でかかる費用があります。そうした費用に対して支払われるのが費用保険金です。
費用保険金にはいくつか種類がありますが、風災・雹災・雪災と関係が深いものを紹介します。
臨時費用保険金
火災や自然災害などによる事故が起きて損害保険金が支払われるときに、損害保険金とは別に支払われる保険金です。臨時の出費に充てるものですが特に使い道は指定されていません。
支払われる保険金は保険会社や契約内容などによって異なりますが、1事故あたり損害保険金の10%~30%(限度額100万~300万円)であることが多いです。
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残存物取片づけ費用保険金
火災や自然災害などで損害を受けた建物や家財の焼け残りや瓦礫などの残存物を片付けるための費用(建物の取り壊し費用、清掃費用、搬出費用など)の実費(損害保険金の10%が限度)が保険金として支払われます。
支払いの迅速化のために損害保険金としてまとめて支払うとする保険会社もあります。
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保険金の請求の流れ
風災・雹災・雪災による被害を受けてしまった場合、どのように保険金を請求すればよいのでしょうか。火災保険の保険金の請求の流れを紹介します。
step
1保険会社に連絡
まず、契約する保険会社に損害を受けたことを連絡してください。契約者氏名、保険証券番号、事故内容、被害状況などを伝えることとなります。
step
2保険会社から必要書類等が送られてくる
保険会社に連絡すると、保険金の請求に必要な書類や案内が送られてきます。内容をしっかりと確認するようにしましょう。
step
3保険会社に必要書類の提出
保険会社からの案内に従って必要な書類を用意して保険会社に書類を提出しましょう。保険会社指定の保険金請求書、罹災証明書、修理費用の見積書、被害の状況がわかる写真などが必要となります。
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step
4保険会社による鑑定人の調査
鑑定人が被害状況の確認・調査を行います。調査結果と契約者からの申請書類などをもとに保険金の支払対象か審査を行い、支払われる保険金の金額が確定します。
step
5保険金の入金
保険金の金額が確定したら、契約者指定の口座に保険金が支払われます。
保険金が支払われる前に片付けを行ってもいい?
安全上や防犯上の問題で被害を受けた場所の片づけや修理を早く行いたいという場合もあると思います。そうした場合は事前に写真を撮れば、片付けや修理に取り掛かってしまっても大丈夫です。なお、保険金の支払いは修理の見積書と写真からの判断となります。修理の見積額そのままの額で保険金が支払われないこともありますので注意してください。
悪徳業者に注意
日本損害保険協会や国民生活センターから、住宅修理に関するトラブルに注意するよう案内が出されています。
一般社団法人 日本損害保険協会:住宅修理に関するトラブルにご注意
独立行政法人 国民生活センター:「保険金が使える」という住宅修理サービスの相談が増加!-解約料として保険金の50%を請求されたり、代金を前払いしたのに着工されないことも-
トラブルの事例としては以下のようなものがあります。
- 自己負担なしで修理できるといわれて住宅修理を依頼したが、補償の対象外で自己負担となった。
- 修理費用を前払いしたが、いつまでたっても修理が始まらない。
- 保険金が支払われないので修理の契約の解除を申し出たら高額な違約金を請求された。
台風などの自然災害の後に、こうした業者からの勧誘が行われるケースが増えます。修理業者が保険金の支払の判断をするわけではないので、保険金が出るといわれても鵜呑みにせずに保険会社や代理店に相談するようにしましょう。
まとめ
火災保険は火災のためだけでなく様々な自然災害による損害もカバーできます。台風による強風で損害を受けた場合や豪雪による雪の重みで損害を受けた場合などは火災保険の風災・雹災・雪災補償が使えないか保険会社や保険代理店に確認してみましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。