火災保険の基礎知識

竜巻による被害は火災保険で補償される?

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2021年12月10日から11日にかけて、アメリカ中西部などで過去最悪のトルネード(竜巻)の被害が発生しました。今回のアメリカほどの被害の大きさではないにしろ、日本においても平均して年に23件(2007~2017年、海上竜巻を除く)の竜巻の発生が確認されています(出典:気象庁)。住宅が竜巻の被害を受けてしまった場合、火災保険で補償を受けることはできるのでしょうか?

火災保険の風災補償で補償される

竜巻によって住宅や家財に損害を受けた場合、火災保険の風災補償で補償を受けることができる可能性があります。例えば、竜巻によって屋根瓦が飛ばされてしまったという場合や竜巻によって飛ばされてきた物が外壁に直撃して壊れたなどのケースです。また、家財についても竜巻が住宅に直撃して家財まで含めて飛ばされてしまったというようなケースだけでなく、竜巻で窓ガラスが割れて風雨が入り込み、家電製品が故障したというようなケースも風災補償で補償されます。

もちろん、火災保険に風災補償をつけていなければ補償を受けることはできません。最近の火災保険では補償内容を細かにカスタマイズできるものも出てきましたが、そうした火災保険で風災補償を外していた場合は補償を受けることができません。また、竜巻によって自宅の屋根瓦が飛んで別の家に損害を与えたという場合も風災補償の対象ではありません。そもそもとして瑕疵が認められなければ損害賠償責任が生じないケースだと考えられますが、屋根瓦がはがれそうな状態を放置していて修理していたら飛ばされなかったなど瑕疵が認められる場合などでは損害賠償責任が生じることもあります。そうした場合では風災補償ではなく個人賠償責任特約での補償となります。

車の被害は車両保険

竜巻によって車が飛ばされた、横転した、飛んできた物が当たったなど住宅ではなく車に損害が生じることもあります。車については火災保険の対象に含まれておらず、自動車保険の車両保険で補償を受けることになります。車両保険には一般型とエコノミー型とがありますが、竜巻による損害はどちらでも補償を受けることができます。

自動車保険の場合、火災保険と違って保険を使うと等級が下がって翌年度の保険料が上がってしまいます。竜巻による損害で車両保険を使った場合は1等級ダウンで通常の交通事故等の3等級ダウンと比べて影響は小さく、保険料の値上がりを考慮しても車両保険を使った方がよいケースの方が多いとは思いますが、被害が軽微で使用するか迷う場合は保険会社に保険料の値上がりについてシミュレーションしてもらうとよいでしょう。

保険金はいくら受け取れる?

竜巻による被害を受けてしまった場合、火災保険からいくら補償を受けることができるのでしょうか。受け取れる保険金は損害保険金と費用保険金とに分かれますが、それぞれについて紹介します。

損害保険金

損害保険金は風災や水災などで損害を受けたときに、その損害に対して支払われる保険金です。損害保険金として支払われるのは損害額(修理費用や再購入費用)から免責金額(自己負担額)を差し引いた額です。ただし、契約時に定めた保険金額が上限となっています。

損害保険金=損害額-免責金額

※支払われる損害保険金は保険金額が上限です。

損害額が20万円未満だと補償されない契約も

免責金額の設定について、特に昔の火災保険の風災補償ではフランチャイズ方式といって、損害額が20万円未満の場合は保険金が支払われず、20万円以上の場合は免責金額による減額なしに支払われる方式になっている場合もあります。この方式の場合、窓ガラスが数枚割れたといった程度の損害では保険金を受け取れないことになるので注意しましょう。

損害額フランチャイズ方式
免責金額20万円
免責方式
免責金額3万円
損害額3万円保険金:0円
自己負担:3万円
保険金:0円
自己負担:3万円
損害額15万円保険金:0円
自己負担:15万円
保険金:12万円
自己負担:3万円
損害額30万円保険金:30万円
自己負担:0円
保険金:27万円
自己負担:3万円

費用保険金

火災や自然災害の被害を受けた場合、片づけにかかる費用や修理している間ホテルに泊まる費用など追加でかかる費用があります。そうした費用に対して支払われるのが費用保険金です。

費用保険金にはいくつか種類がありますが、竜巻による被害に関係がある費用保険金を紹介します。

臨時費用保険金

火災や自然災害などによる事故が起きて損害保険金が支払われるときに、損害保険金とは別に支払われる保険金です。臨時の出費に充てるものですが特に使い道は指定されていません。

支払われる保険金は保険会社や契約内容などによって異なりますが、1事故あたり損害保険金の10%~30%(限度額100万~300万円)であることが多いです。

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残存物取片づけ費用保険金

火災や自然災害などで損害を受けた建物や家財の焼け残りや瓦礫などの残存物を片づけるための費用(建物の取り壊し費用、清掃費用、搬出費用など)の実費(損害保険金の10%が限度)が保険金として支払われます。

支払いの迅速化のために損害保険金としてまとめて支払うとする保険会社もあります。

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保険金支払までの流れ

竜巻による被害を受けてしまった場合、どのように保険金を請求すればよいのでしょうか。火災保険の保険金の請求の流れを紹介します。

step
1
保険会社に連絡

まず、契約する保険会社に損害を受けたことを連絡してください。契約者氏名、保険証券番号、事故内容、被害状況などを伝えることとなります。

step
2
保険会社から必要書類等が送られてくる

保険会社に連絡すると、保険金の請求に必要な書類や案内が送られてきます。内容をしっかりと確認するようにしましょう。

step
3
保険会社に必要書類の提出

保険会社からの案内に従って必要な書類を用意して保険会社に書類を提出しましょう。保険会社指定の保険金請求書、罹災証明書、修理費用の見積書、被害の状況がわかる写真などが必要となります。

書類の記入
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step
4
保険会社による鑑定人の調査

鑑定人が被害状況の確認・調査を行います。調査結果と契約者からの申請書類などをもとに保険金の支払対象か審査を行い、支払われる保険金の金額が確定します。

step
5
保険金の入金

保険金の金額が確定したら、契約者指定の口座に保険金が支払われます。

保険金が支払われる前に片づけを行ってもいい?

安全上や防犯上の問題で被害を受けた場所の片づけや修理を早く行いたいという場合もあると思います。そうした場合は事前に写真を撮れば、片づけや修理に取り掛かってしまっても大丈夫です。なお、保険金の支払いは修理の見積書と写真からの判断となります。修理の見積額そのままの額で保険金が支払われないこともありますので注意してください。

日本での被災例

竜巻による被害というとアメリカなど海外のイメージが強いですが、冒頭でも紹介した通り日本でも平均して年に23件(2007~2017年、海上竜巻を除く)の竜巻の発生が確認されています(出典:気象庁)。そうした中でも大きな被害が発生した竜巻の事例を紹介します。その他、日本の竜巻の事例については気象庁の竜巻等の突風データベースをご確認ください。

発生日発生場所死者負傷者住宅全壊住宅半壊
2019年10月12日千葉県191223
2016年10月5日高知県0401
2012年5月6日茨城県13776158
2006年9月17日宮崎県314379※348※
1999年9月24日愛知県041540309

※がついている数字は他の気象現象による被害数も含んでいます。

まとめ

竜巻による住宅の損害は火災保険の風災補償で補償を受けられる可能性があります。もし被害を受けた場合は保険会社や代理店に連絡するようにしましょう。日本においても毎年竜巻は発生しています。大きな被害をもたらす竜巻が発生することもあるのでこの機会に火災保険の補償内容や免責金額の設定などを見直しておくとよいでしょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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