近年、台風や豪雨などによる水災の被害が多く発生しています。住宅が水災による被害を受けた場合、火災保険に水災補償をつけていれば補償を受けられます。しかし、水災補償をつけるとそれなりに保険料が上がることから火災保険に水災補償をつけるか迷っている人もいるのではないでしょうか?水災補償はどれくらいの人が付帯しているのか、損害保険料率算出機構のデータより紹介します。
目次
都道府県別水災補償の付帯率
2022年度の都道府県別の水災補償付帯率(当該年度末時点で有効な火災保険契約件数のうち、水災を補償している契約件数の割合)を損害保険料率算出機構のデータより紹介します。ちなみに、2022年度の全国計の付帯率は64.1%でした。
都道府県 | 付帯率 |
---|---|
北海道 | 69.3% |
青森県 | 66.4% |
岩手県 | 63.0% |
宮城県 | 64.4% |
秋田県 | 60.6% |
山形県 | 59.3% |
福島県 | 66.3% |
茨城県 | 58.2% |
栃木県 | 65.1% |
群馬県 | 65.8% |
埼玉県 | 64.8% |
千葉県 | 60.5% |
東京都 | 59.5% |
神奈川県 | 61.2% |
新潟県 | 71.6% |
富山県 | 63.3% |
石川県 | 61.4% |
福井県 | 67.2% |
山梨県 | 69.5% |
長野県 | 69.8% |
岐阜県 | 73.6% |
静岡県 | 66.6% |
愛知県 | 67.0% |
三重県 | 67.7% |
都道府県 | 付帯率 |
---|---|
滋賀県 | 57.6% |
京都府 | 61.1% |
大阪府 | 59.9% |
兵庫県 | 61.5% |
奈良県 | 56.8% |
和歌山県 | 71.9% |
鳥取県 | 72.2% |
島根県 | 73.7% |
岡山県 | 74.8% |
広島県 | 69.3% |
山口県 | 78.2% |
徳島県 | 78.6% |
香川県 | 69.2% |
愛媛県 | 70.0% |
高知県 | 75.8% |
福岡県 | 66.2% |
佐賀県 | 74.8% |
長崎県 | 72.6% |
熊本県 | 70.1% |
大分県 | 68.1% |
宮崎県 | 75.0% |
鹿児島県 | 65.8% |
沖縄県 | 64.5% |
全国 | 64.1% |
※損害保険料率算出機構の会員保険会社が同機構に報告した住居専用建物(収容する家財を含む)を対象とする「火災保険」の数値であり、各種共済、少額短期保険は含みません。
出典:損害保険料率算出機構
付帯率の高い都道府県、低い都道府県
順位 | 都道府県 | 付帯率 |
---|---|---|
1位 | 徳島県 | 78.6% |
2位 | 山口県 | 78.2% |
3位 | 高知県 | 75.8% |
4位 | 宮崎県 | 75.0% |
5位 | 岡山県 | 74.8% |
佐賀県 |
順位 | 都道府県 | 付帯率 |
---|---|---|
47位 | 奈良県 | 56.8% |
46位 | 滋賀県 | 57.6% |
45位 | 茨城県 | 58.2% |
44位 | 山形県 | 59.3% |
43位 | 東京都 | 59.5% |
水災補償はどんな補償?
火災保険の水災補償では、台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、融雪洪水、高潮、土砂崩れ、落石などによって、建物や家財に所定の損害を受けた場合に補償を受けることができます。なお、火災保険の対象を建物のみにしていた場合は建物に対する損害のみ、家財のみにしていた場合は家財に対する損害のみ補償されます。
水災補償で補償される例
火災保険の水災補償では以下のような場合に補償を受けることができます。
- 豪雨による洪水で床上浸水し、床や壁の張替えや家具・家電の買い替えが必要になった
- 豪雨による土砂崩れに家が巻き込まれ、建物や家財に損害が発生した
- ゲリラ豪雨によりマンホールの排水が追いつかず、床上浸水の被害に遭った
- 台風による高潮で床上浸水の被害に遭った
- 雪解け水により川が増水して氾濫し、床上浸水の被害に遭った
水災補償の支払基準
水災補償は一般的に、次のような支払基準が設けられています。洪水などの被害に遭っても支払基準に満たない場合は保険金は支払われません。
注意ポイント
水災補償の支払基準
- 建物(家財)の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合
- 「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」によって損害が生じた場合
なお、床上浸水とは、畳やフローリングなどの居住部分の床を超える浸水のことをいい、地盤面とは、建物が周囲の地面と接する位置のことをいいます。ただし、地盤面について、地下室など床面が地盤面より下にある場合は、その床面をいいます。
保険金はいくら受け取れる?
水災の被害に遭った場合、損害保険金として「損害額-免責金額(自己負担額)」の額を受け取ることができます。免責金額は契約時に決めた金額で、この金額については保険会社が保険金を支払う責任がなく、自己負担が必要です。また、支払条件に当てはまれば、損害保険金に追加して費用保険金も支払われます。
なお、水災補償は保険金の総支払額が甚大になりかねないことから、実損額ではなく損害の程度に応じて保険金を算出する保険商品や特約もあります。この場合、建物の再建や家財の再購入に十分な補償を得られない可能性があります。保険料は抑えられますが、支払われる保険金が十分か考えて契約するようにしましょう。
損害の程度に応じて保険金が支払われる場合の例
損害の程度 | 保険金の算出方法 | |
---|---|---|
保険価額の30%以上の損害を受けた場合 | 保険金額(保険価額限度)×損害額/保険価額×70% | |
床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水 | 保険価額の15%以上30%未満の損害を受けた場合 | 保険金額(保険価額限度)×10% (上限200万円) |
保険価額の15%未満の損害を受けた場合 | 保険金額(保険価額限度)×5% (上限100万円) |
火災保険の水災補償とは?補償範囲と必要性
近年、台風に限らず記録的な短時間集中豪雨による洪水などの被害を耳にすることが増えてきました。洪水などによる床上浸水の被害や大雨による土砂災害の被害を補償してくれ ...続きを見る
集中豪雨の回数は増えている
気象庁の観測データより、1時間降水量50mm以上の平均年間発生回数、同80mm以上の平均年間発生回数を調べてみました(いずれも全国のアメダスによる観測値を1300地点あたりに換算した値)。
1時間降水量50mm以上 | 1時間降水量80mm以上 | |
---|---|---|
1980年代 | 222.4回/年 | 15.8回/年 |
1990年代 | 258.2回/年 | 17.7回/年 |
2000年代 | 287.3回/年 | 20.3回/年 |
2010年代 | 327.1回/年 | 24.3回/年 |
上表より、集中豪雨の年間発生回数は昔と比べて増えていることがわかります。
なお、集中豪雨という用語に降水量に関する明確な基準はありませんが、気象庁では、1時間に50mm以上80mm未満の雨を「非常に激しい雨」、80mm以上の雨を「猛烈な雨」としています。
1時間雨量 | 雨の強さ | 人の受けるイメージ | 人への影響 | 屋外の様子 |
---|---|---|---|---|
10~20 | やや強い雨 | ザーザーと降る | 地面からの跳ね返りで足元がぬれる | 地面一面に水たまりができる |
20~30 | 強い雨 | 土砂降り | 傘をさしていてもぬれる | |
30~50 | 激しい雨 | バケツをひっくり返したように降る | 道路が川のようになる | |
50~80 | 非常に激しい雨 | 滝のように降る (ゴーゴーと降り続く) | 傘は全く役に立たなくなる | 水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる |
80~ | 猛烈な雨 | 息苦しくなるような圧迫感がある。 恐怖を感ずる。 |
ハザードマップを確認しよう
水災補償をつけるか否か迷ったときに判断の助けとなるものの一つにハザードマップがあります。お住まいの地域のハザードマップは、「市区町村名 ハザードマップ」などと検索するか、国土交通省国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」からたどることができます。
中でも国土地理院のハザードマップポータルサイトから確認できる重ねるハザードマップでは、一つの地図上で洪水浸水想定区域や土砂災害リスクなどを重ねあわせて表示できるので、住んでいる地域の自然災害リスクを知るのには大変便利です。詳しい使い方は操作マニュアルをご確認ください。
大きな河川に挟まれている場所や土地が低い場所の場合は最大で5m近い浸水が想定されているところもあります。このような場所ではマンションの2階でも浸水の被害を受けることも考えられます。1階でないからといってリスクを軽視しないようにする必要があります。
また、被害想定が0.5m未満であれば水災リスクはないかというと、そうではありません。水災補償の支払基準に「地盤面から45cmを超える浸水」とあるように、0.5mでも十分被害を受ける可能性があります。特に、地下室があるような家では注意が必要です。なお、地下室など地盤面よりも下に床面がある場合は支払基準における地盤面はその床面となります。
水災補償は外しても大丈夫?ハザードマップの確認方法
火災保険では水災補償の有無が保険料に大きく影響します。近くに河川がない場合は保険料を安くするために水災補償を付けないことも多いのですが、大雨による水害のニュース ...続きを見る
まとめ
2022年度の火災保険の水災補償付帯率は64.1%です。都道府県別にみて最も付帯率が高いのは徳島県で78.6%、最も付帯率が低いのが奈良県で568.2%です(損害保険料率算出機構より)。近年、集中豪雨の回数が増えてきているので、昔から大丈夫だったからと過信するのではなく、最新のハザードマップを確認してリスクの状況を把握し、適切に備えておくようにしましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。