火災や自然災害で住宅に損害を受けた場合に備えて加入する火災保険ですが、その万が一が起こって住宅が全損してしまった場合、火災保険の契約はどうなるのでしょうか。また、地震保険にも加入していた場合はどうなのでしょうか。
全損の場合、契約は「終了」する
火災保険では1回の事故で保険金額の全額(あるいは保険金額の80%相当額を超える額)が支払われた場合、その損害が発生した時にさかのぼって契約は「終了」します。そのため、例えば10年契約の5年目で全損してしまった場合、同じ場所に住宅を建て直した場合でも、新築した住宅は火災保険に入りなおさなければいけません。また、全損したらその時点で契約は終了しますので、全損した事故以後に受けた損害については補償されません。
1回の事故での保険金の支払額が保険金額未満(あるいは保険金額の80%相当額以下)の場合では、保険金が支払われた後も保険金額から支払われた保険金相当額を減額せずに、2回目以降の事故の際にも当初契約したのと変わらない保険金額で補償を受けることができます。つまり、ある年に台風で保険金額の50%の損害を受け、その次の年に再び保険金額の50%の損害を受けた場合でも、火災保険の契約は終了せずに継続します。
地震保険の契約はどうなる?
火災保険だけでなく地震保険も契約していた場合、その契約はどうなるのでしょうか。
地震保険は火災保険に付帯して契約するものなので、火災や自然災害などで火災保険の契約が終了した場合は地震保険の契約もその時点で終了します。また、地震等により地震保険で全損と判定された場合においても、損害が発生した時点にさかのぼって契約は終了します。
終了した場合、すでに支払った保険料は返ってくる?
火災保険では長期契約分の保険料を一括で払ったり分割する場合でも月払ではなく年払で支払ったりすることも多いです。契約期間の途中で解約した場合は未経過期間に相当する保険料が返ってきますが、終了した場合の保険料はどうなるのでしょうか。
保険料の返還に関する扱いは各社の約款によるのですが、最近の契約では傾向として、長期一括払の場合は当該年度の翌年度以降に対応する保険料が返還され、年払の場合は保険料の返還はなく、月払の場合は保険金を受け取る前に年間に必要な保険料のうちまだ支払っていない分を支払う必要がある、という形になっています。
保険期間 | 払込方法 | 保険料の返還・支払 |
---|---|---|
1年以下 | 月払 | 保険金の支払を受ける前に、保険料の未払込分の全額を一時に支払う |
一括払 | 保険料の返還はなし | |
1年超 | 長期月払 | 保険金の支払を受ける前に、当該年度の保険料の未払込分の全額を一時に支払う |
長期年払 | 当該年度の保険料の返還はなし | |
長期一括払 | 当該年度の翌年度以降の期間に対応する保険料が返還される |
※実際の内容は契約している保険会社にご確認ください。
まとめ
1回の事故で保険金額の全額(80%を超える額という保険会社もある)が支払われた場合、火災保険はその損害が発生した時点にさかのぼって契約が終了します。逆に、1回の事故で全損しなければ複数回の合計で保険金額を超えても契約は継続します。
契約が終了した場合の保険料の返還は各保険会社の約款によります。傾向としては、長期一括払の場合は全損の損害が発生した年度の翌年度以降に対応する保険料が返還され、年払の場合は事故発生年度のすでに払い込んだ保険料は返還されず、月払の場合は保険金の支払を受ける前に未払保険料の支払が必要となります。詳細については各保険会社にご確認ください。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。