火災保険の基礎知識

火災保険で風災補償はいる?いらない?

投稿日:2021年2月25日 更新日:

火災保険では風災補償が補償範囲内に自動的に含まれていることが多いですが、最近は風災補償も外すことができる保険会社がいくつかあります。風災補償の有無を選択できる場合、風災補償をつけた方がよいのでしょうか、それとも必要ないのでしょうか?

風災補償はどのような場合に補償される?

まずは火災保険の風災補償でどのような場合に補償を受けられるのか整理しておきましょう。

風災とは、台風、旋風、竜巻、暴風等により生じた損害のことをいいます。こうした強風により、火災保険の対象となっている建物や家財に損害が生じた場合に保険金を受け取ることができます。例えば、台風による強風で屋根瓦が飛んでしまった場合や強風により飛んできた物が外壁にぶつかって外壁が破損した場合などでは風災補償の補償対象となります。

風災補償で補償される事例
保険の対象
建物家財
台風による強風で屋根瓦が破損した×
強風で飛んできた物が壁にぶつかって破損した×
強風で屋根瓦が飛び、そこから入る雨で電化製品が壊れた
(屋根瓦)

(電化製品)
強風でカーポートが破損した×
強風で飛んできた物が自動車にぶつかって破損した××
強風で軒下に置いてあった自転車が倒れて壊れた×

※自動車は家財に含まれず、火災保険では補償されません。自動車保険の車両保険での補償となります。

また、風災補償は通常、風災・雹(ひょう)災・雪災補償として、雹災と雪災とのセットになっています。そのため、風災補償をつける場合はあわせて雹や雪による損害にも備えられることになります。雹災補償や雪災補償で補償される事例はそれぞれ以下の表のとおりです。

雹災補償で補償される事例
保険の対象
建物家財
雹で窓ガラスが割れてしまった×
雹で太陽光発電のソーラーパネルが破損した×
雹で雨どいが破損した×
雪災補償で補償される事例
保険の対象
建物家財
雪の重みでカーポートがつぶれた
(自動車は対象外)
×
雪崩に巻き込まれて自宅が倒壊した
融雪洪水で床上浸水の被害を受けた××

※融雪洪水は水災補償での補償となります。

どれくらいの保険金が請求されている?

火災保険において、風災・雹災・雪災補償は火災保険の保険金請求件数や請求金額の多くの割合を占めています。損害保険料率算出機構の火災保険・地震保険の概況(2023年度版)より、住宅物件(建物を住居のみに使用している物件)の年度別の風災・雹災と雪災の保険金支払件数、保険金の支払額を紹介します。

風災・雹災・雪災補償の保険金支払件数と全体に占める割合
2018年度2019年度2020年度2021年度2022年度
件数割合件数割合件数割合件数割合件数割合
風災・雹災819,48473.7%497,79860.5%196,41829.8%116,44819.8%218,64029.1%
雪災16,9781.5%9,2051.1%78,74811.9%87,06214.8%97,18012.9%
火災保険全体1,111,660100.0%823,186100.0%659,123100.0%588,041100.0%752,070100.0%
風災・雹災・雪災補償の保険金支払額と全体に占める割合
2018年度2019年度2020年度2021年度2022年度
保険金
(百万円)
割合保険金
(百万円)
割合保険金
(百万円)
割合保険金
(百万円)
割合保険金
(百万円)
割合
風災・雹災637,78678.7%378,67961.0%94,41731.6%48,56619.8%108,61732.7%
雪災9,1311.1%4,6420.7%45,72515.3%55,09422.4%59,20617.8%
火災保険全体810,718100.0%620,617100.0%299,181100.0%245,568100.0%331,905100.0%

※「件数」および「保険金」は対象年度に発生した事故に対して、当該年度およびその翌年度に支払った件数および保険金を集計したものです。

年度によって異なりますが、風災・雹災・雪災補償の保険金支払件数・支払額は火災保険全体の3~5割を占めています。この期間内では風災・雹災・雪災をあわせて少ない年でも9万件もの保険金の請求がなされており、毎年多く発生する災害だといえます。

風災補償を外すメリット・デメリット

風災補償を外すメリットとしては保険料が安くなることが挙げられます。上で紹介した通り、風災・雹災・雪災補償は保険金の支払件数も保険金の支払額も多い補償です。そのため、風災補償をつけるのに必要な保険料も高くなっているので、風災補償を外せば保険料を安くできます。

一方でデメリットとしては、風災・雹災・雪災により自宅が損害を受けても火災保険による補償を受けられないということが挙げられます。地球温暖化により、今まで台風の被害がなかったような地域でも大きな被害が発生する可能性もあります。万が一が起こった時に火災保険に加入していないと自費で住宅を修理、再建しないといけません。

風災補償は必要?

結局のところ、風災補償は必要なのでしょうか、不要なのでしょうか。風災は地域により多い、少ないということはあるものの、どこの地域でも起こり得る災害です。そのため、基本的には風災補償の有無を選べる場合でもつけておくことをおすすめします。

マンションだから風災の被害は受けないだろうと考える人もいるかもしれませんが、マンションであっても風災の被害が発生する可能性はあります。例えば、2018年の台風21号ではマンション高層階でもコンクリート片やトタン屋根が室内に飛び込み被害が発生した事例があります。また、2019年の台風15号ではゴルフ練習場の鉄塔が倒壊しましたが、そうした被害に巻き込まれた場合はマンションでも一戸建てでも関係なく被害が発生するでしょう。

もちろん、被害を受けたときに自費で修理・再建しなければいけないことを覚悟したうえで、風災・雹災・雪災の被害を受ける可能性は低い、もし起こったとしても資金は十分にあると判断するのであれば風災補償を外してもよいです。しかし、修理費用を十分に出せないのであれば風災補償はつけておくべきでしょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず火災保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。

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