例年、台風は7月から10月頃にかけて日本に接近・上陸する事が多くなります。大雨をもたらし強い風で甚大な規模の台風襲来が広範囲に及び人々の生活や生命が脅かされるような災害となってしまう事が増えてきたように感じます。さらに、台風が過ぎ去った後でも大量に降った雨で地盤が緩くなっていることによる土砂災害リスクもあります。また、浸水被害に遭った自宅の片付けなどでは、汚れた家具でケガをしてしまったり、割れたガラスなどで大けがを負ってしまう場合などにも気を付ける必要があります。台風通過後の損害状況確認や、台風が過ぎ去り避難所から住宅に戻る場合の注意すべき点について紹介します。
目次
土砂災害に警戒を!
台風が過ぎ去り雨がやんでもこれまでの降雨による土砂災害や洪水の危険はあります。土砂災害警戒区域に住む人は特に注意しましょう。土砂災害は台風通過後の二次被害の危険があります。台風通過後に無理をして自宅に戻り土砂被害に遭ってしまうようなことがないように気を付けましょう。
土砂災害区域とは、土砂災害の恐れのある区域で土砂災害防止法に基づいて定められています。自分で住んでいるエリアが土砂災害区域にあたるかどうかは国土交通省国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」で確認することができます。
土砂災害区域は想定される土砂災害の程度により「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」「土砂災害危険個所」に分類されています。
■土砂災害防止法についてはこちら
土砂災害警戒区域(イエローソーン)
土砂災害が発生した場合に、「住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがある」と認められている区域は土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に分類されています。台風通過後も大雨により地盤が緩くなっている可能性から下記リスクに十分注意したいエリアになります。
- 急傾斜地の崩壊
- 土石流
- 地すべり
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)のうち、土砂災害が発生した場合に「建築物への損害の影響があり、それによって住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがある」と認められている区域は土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に分類されています。
土砂災害危険個所
土石流、地すべり、がけ崩れの被害が生じやすいとされている区域です。急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、「住民等の生命又は身体に危害が生じるおそれがある」と認められる区域です。台風の通過により避難していた人も自宅に戻る時には台風通過後の土砂災害に遭う可能性もあります。十分注意して自宅の確認に向かいましょう。
家屋の被害状況確認と後片付けの注意点
台風の影響で自分の住むエリアが暴風雨や大雨に見舞われた地域で台風が過ぎ去り、天気が回復してきたら避難所から自宅に戻った人も自宅待機で台風が過ぎ去るの待っていた人も家屋の損害状況を確認しましょう。
台風による強い風や大雨によりガス・水道・電気が止まっていないか確認しましょう。ガス漏れが発生していたり、電線から火花が散っていたりなどの危険な状況を発見したら近づかず電力会社やガス会社、消防署に連絡します。停電の影響がある場合、通電火災や漏電のリスクも心配です。自宅の被害状況を確認する時には家電のコンセントはプラグから抜くようにしましょう。
暴風による被害
強い暴風で屋根が飛んでしまっていたり窓ガラスが割れていたりといった被害が発生している可能性があります。飛んできたもので窓ガラスが割れてしまったことにより家の中に置いてあったものなども吹き飛ばされていることがあります。
豪雨による被害
【床上浸水の場合】
泥水(汚水)の除去作業について
住宅が浸水してしまっており、家具などが水に浸かっている場合があります。水に浸かってしまった家具は運び出し家の中に流れ込んでしまった泥水の掻きだし除去作業を行います。住宅の中に入り込んだ泥水は臭気を放つヘドロとなってカビを発生させていたり、感染症のリスクがあります。作業を行う際にはドアと窓を開け、換気を良くして片づけを行います。床上浸水で浸水被害にあった床や壁は水を掻きだし綺麗にしてもすぐにカビが生えてしまったり住宅の強度が弱くなっています。取り換えが必要なため、壁と床を外し、骨組みだけの状態で乾燥させることになります。壁や床は新しく貼り替えが必要になります。
浸水した家財道具について
使えなくなった家財などは家の外に運び出し、自治体が指定する収集場所に持っていき回収してもらいます。一度、浸水被害にあった畳や布、木製で出来た家財道具は消毒し乾燥させても再び使用するのは難しいです。
【床下浸水の場合】
床上までの浸水被害がない場合でも床下に浸水の被害がある場合でたまっていれば、泥水の除去を行います。床下も浸水したのであれば乾燥し消毒する必要があります。床下が浸水し水がたまりプール状態になっていることがあるため確認するようにしましょう。床下も浸水被害があれば状態を専門業者に確認してもらいます。
土砂による被害
土砂災害とは、大雨や地震により「土石流」「地すべり」「がけ崩れ」などによる土砂で自宅が損害を受けた場合に使われる通称です。自宅に損傷がなくても、がけ崩れにより住宅の基礎の一部が崩れ落ちていたというようなケースもあります。上記で紹介した土砂災害警戒区域に住む人は台風が過ぎ去った後の住宅の周りも十分に確認しましょう。
被害状況の写真撮影を忘れずに!
自宅が災害にあった状況の中で後片付けを急いでしまう前に被害状況を写真に撮っておきましょう。罹災証明書や火災保険の申請の際に被害状況が分かるものが必要になります。被害の状況を屋内外さまざまな状況から写真に撮っておきましょう。避難場所に避難している場合でもスマートフォンなどのカメラで撮影しておきましょう。罹災証明書や火災保険の申請時に提出する写真は複数枚用意しておきましょう。
二次災害に注意する
台風による災害で二次災害となる主なケースは、豪雨後のがけ崩れや土石流、地すべりなどによる土砂災害などがあげられると紹介しましたが、他にも下記のような災害に注意する必要があります。二次災害のリスクがあるような時には巻き込まれないように十分注意する必要があります。
- 外水氾濫(河川の氾濫)
- 内水氾濫(下水道などからの氾濫)
- 冠水(大雨による道路の水没)
また、被災後の住宅の後片付けの際に割れたガラスや壊れた家具などでケガをしてしまうケースも増えています。被災した住宅の後片付けには服装に十分気を付けましょう。また、暑い時期などには熱中症のリスクや体調の悪化などもあります。冠水している場所は水面下にはどんな危険があるか分からないため危険です。冠水道路は歩くのを避けましょう。
自宅の被害状況が大きくてもあわてず、危険なものに触らない、リスクがある場合には近づかないことが二次災害から身をまもるポイントです。
ケガをしない服装で後片付けを!
床上にまで水が侵入していると大きな家具も浮いて動いてしまっていたり、窓ガラスが割れていたり、危険物が散乱していたりと後片付けによるケガの危険があります。台風通過後の安全確認や復旧作業の際は、安全のため長袖、長ズボン、住宅の中でも靴を着用しましょう。
【後片付けに用意しておきたいもの】
- 底の厚い靴やゴム長靴
- 厚手の丈夫なゴム手袋
- 目の保護のためのゴーグル
- マスク(カビや細菌を吸い込まないようにするため)
電気や水道が止まっている場合のリスク
電気や水道が止まっているような状況の中は水分補給が難しくなるだけでなく、慣れない環境で体調が悪化してしまう人も多いです。台風シーズンはまだ暑い気温なことも多く水分不足やエアコンが使えない環境の中での後片付けなどで熱中症を引き起こす原因となってしまう事も多いです。自分だけで無理をせず、ボランティアなどに協力してもらうことも大切です。
【災害復復旧作業中の熱中症予防】
- 小まめな水分補給をこころがけましょう
- 塩飴などで塩分補給をしましょう
- 保冷グッズを利用して体を涼しく保ちましょう
- 日差しを意識してさけるようにしましょう
- 温度や湿度を意識しましょう
- 周囲や家族の体調の変化に気を配りましょう
自宅の被害状況の確認ポイント
台風通過後に自宅に損害が出てないか確認しましょう。
戸建て住宅の場合
台風通過後には、強風や豪雨により損害を受けている可能性があります。一戸建ての場合は屋根瓦に異常がないか確認しておきましょう。屋根に異常があると雨漏りの原因となり、雨漏りは建物全体の劣化にも影響する問題です。
【建物のチェックポイント】
- 屋根(屋根瓦の損傷など)
- 外壁
- 雨どい
- 軒下
- 床下
- 窓
- 換気扇や換気口
- 建物に固定されている電気的設備など
マンションの場合
マンションの場合は、建物全体の共用部分の損傷については管理会社に確認をしてもらいます。ベランダは共用部分になりますが、排水溝にゴミなどが詰まっていないか、異常がないか確認しましょう。また、換気扇や換気口の確認、建物に固定されている電気的設備に異常がないかチェックしておきましょう。また、上層階からの水漏れによる壁の変色などがある場合も考えられます。マンションでも割れた窓ガラスから雨が吹き込んだことによる被害なども考えらえます。確認しておきましょう。
住宅の損害は火災保険で補償
台風で住宅に損害を受けているような場合には火災保険で補償を受けます。台風による被害に対する補償としては、風災補償・水災補償・落雷補償が考えられます。火災保険は長期で契約することが多いですが、住環境の変化より補償内容は定期的に見直すようにしましょう。
損害を受けた住宅の保険金の請求期限は保険法により損害が発生してから3年と決められています。慌てる必要はないですが、台風による被害を受けたら速やかに保険会社に連絡するようにしましょう。
風災補償
台風による強風で屋根瓦が飛んでしまった、飛来物で窓ガラスが割れてしまった、雨どいが外れてしまったといった被害を受けた場合、風災補償によって補償を受けることができます。
風災補償で注意が必要なのは、保険金の支払い方式がフランチャイズ方式となっている場合、損害額が20万円以上でないと保険金が支払われないということです。この方式の場合、損害額が19万円だと1円も支払われず、21万円だと全額支払われます。最近は車両保険の免責金額のように設定した金額を自己負担で支払う免責方式が多いのですが、一昔前はフランチャイズ方式が一般的でした。35年などの長期で昔から契約している場合はフランチャイズ方式が多いので確認が必要です。
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水災補償
台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、高潮、土砂崩れなどにより生じた損害は水災補償で補償を受けます。台風による大雨で起こった洪水だけでなく、雨によって起こる土砂崩れや落石も水災に含まれています。
水災補償は一般的に、次のような支払基準が設けられています。支払基準に満たない場合、保険金は支払われません。
注意ポイント
水災補償の支払基準
- 建物(家財)の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合
- 「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」によって損害が生じた場合
なお、床上浸水とは、畳やフローリングなどの居住部分の床を超える浸水のことをいい、地盤面とは、建物が周囲の地面と接する位置のことをいいます。ただし、地盤面について、地下室など床面が地盤面より下にある場合は、その床面をいいます。
大雨により排水があふれて床上浸水した場合も補償を受けられますが、洪水による被害を受けた場合でも床下浸水の場合には補償を受けられない可能性があります。
火災保険の水災補償とは?補償範囲と必要性
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落雷補償
落雷によって屋根に穴が開いてしまった、落雷による急激な電圧の変化が原因で過電流が流れて電化製品が故障してしまったといった場合に落雷補償により補償を受けることができます。
注意が必要なこととしては、家財を保険の対象にしていない場合は家財の補償を受けることができないこと、パソコンが故障してしまった時にパソコンそのものは補償されますが消失してしまったデータは補償対象外だということです。
落雷による被害は火災保険で補償される?
近年、ゲリラ豪雨などが増えたことで落雷による損害もより身近なものとなってしまっています。落雷によってテレビなどの家電が壊れてしまったり、屋根などが破損してしまっ ...続きを見る
まとめ
近年、日本に襲来する台風は広範囲にわたって甚大な被害をもたらたすような規模であることも多いです。台風通過後も二次災害の危険や復旧作業、後片付け中による事故に注意しなければならなりません。早期の生活再建のためにもハザードマップなどを確認し、自分の住むエリアの災害危険度を把握し自然災害に備えておく事は大切です。