地震保険の基礎知識

地震保険の「一部損」認定ってどの程度?!

投稿日:

地震保険は地震による損害程度が「全損」「大半損」「小半損」「一部損」のいずれかに認定されて、地震保険金がお支払いとなります。
あのマグニチュード9を観測した東日本大震災において一番支払われたのは「一部損」認定です。

そんな「一部損」認定ですが具体的にどの程度の損害かイメージが付きにくいですよね。この記事では建物と家財それぞれの一部損の支払い例、地震保険が支払われないケースを紹介します。

地震保険の支払い基準

地震保険は、地震・噴火・津波を直接・間接の原因とする火災・損壊・埋没・流失などによって、保険の対象が損害を受けた場合に、地震保険の支払い対象となります。

そしてそれらの損害割合が、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」に該当した場合に、実際の修理金額ではなく、それぞれの損害区分に応じて、地震保険金額の100%・60%・30%・5%を定額でのお支払いとなります。

損害の状況
建物

枠組・基礎・屋根・外壁等主要構造部の
損害額が建物の時価の50%以上

焼失・流失した部分の床面積が建物の延べ床面積の70%以上

家財

家財の損害額が家財全体の時価の
80%以上

支払われる保険金は、地震保険金額の100%

損害の状況
建物

枠組・基礎・屋根・外壁等主要構造部の
損害額が建物の時価の40%以上50%未満

焼失・流失した部分の床面積が建物の延べ床面積の50以上70%未満

家財

家財の損害額が家財全体の時価の
60%以上80%未満

支払われる保険金は、地震保険金額の60%

損害の状況
建物

枠組・基礎・屋根・外壁等主要構造部の
損害額が建物の時価の20%以上40%未満

焼失・流失した部分の床面積が建物の延べ床面積の20%以上50%未満

家財

家財の損害額が家財全体の時価の
30%以上60%未満

支払われる保険金は、地震保険金額の30%

損害の状況
建物

枠組・基礎・屋根・外壁等主要構造部の
損害額が建物の時価の3%以上20%未満

全損・大半損・小半損に至らない建物が
床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水

家財

家財の損害額が家財全体の時価の
10%以上30%未満

支払われる保険金は、地震保険金額の5%

「罹災証明書」の被害認定とはちがう

「罹災証明書」にも「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」との区分の記載がありますが、地震保険の損害区分とは異なります。

罹災証明書の「被害認定基準」は、関係各省庁が被害状況を把握し災害に対応するためのものであり、地方自治体においては、災害支援、税制措置を目的とした罹災証明書の発行に活用されています。
地震保険の「損害認定基準」は、迅速・的確・公平な損害認定を行い地震保険金を可能な限り早期に支払うために損害保険業界で策定されたものです。

したがって、地震保険の損害区分とは趣旨が異なるため、罹災証明書に「半壊」と記載されているからといって必ずしも地震保険においても「半損」認定されることとはなりませんので、注意しておきましょう。

地震保険を途中から付加することも可能

大地震が発生するにつれて、火災保険新規加入者の地震保険付帯率は上昇していますが、元々火災保険のみ加入している場合でも、火災保険の保険期間内であれば、いつでも地震保険に途中加入することは可能です。
地震保険金額については、建物・家財ごとに主契約である火災保険の保険金額の30~50%の範囲内で設定します。
なお、限度額は建物が5,000万円、家財は1,000万円となります。

また、火災保険の保険期間内であれば、地震保険金額を増額することも可能です。この場合においても、火災保険の保険金額の30~50%の範囲内で設定することが条件となっています。                

過去の大地震の地震保険金支払状況

過去に発生した大きな地震において、地震の規模、支払契約件数、支払再保険金額総じて、東日本大震災が一番多く地震保険金が支払われていました。

地震

マグニチュード

支払契約件数(件)

支払再保険金(百万円)

東北地方太平洋沖地震
(東日本大震災)
発生日:2011年3月11日

9.0826,1101,289,404

熊本地震
発生日:2016年4月14日

7.3215,642390,894

福島県沖を震源とする地震
発生日:2022年3月16日

7.4320,920265,427

出典:日本地震再保険株式会社 地震再保険金支払状況

「一部損」が一番多い?!

地震保険金が一番多く支払われていた東日本大震災を損害区分別にみると、「一部損」が7割を占めており、最も多く支払われたことが分かりました。

つまり、「一部損」であれば比較的少しの損害具合でも認定される可能性が高く、その反面、「全損」は0.5割しか認定されていないことからも、「全損」認定されるには非常に大きな損害具合であることが読み取れます。

東日本大震災における損害区分別地震保険金支払状況

全損半損一部損

東北地方太平洋沖地震
(東日本大震災)
発生日:2011年3月11日

5%24%71%

※現在の地震保険「損害認定基準」は「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4区分ですが、2017年に地震保険制度が改定されたことより、2016年12月31日以前始期の保険契約は「全損」「半損」「一部損」の3区分となっています。

出典:財務省 地震保険制度に関するプロジェクトチーム報告書(平成24年11月30日)

支払い例 ~「一部損」の基準とは~

東日本大震災において「一部損」の認定率が一番高かったことからも、今後万が一地震が起きて被害を被った場合、比較的小さな損害でも「一部損」認定の地震保険金が受け取れるかもしれません。
しかしながら、「一部損」の損害具合とは、具体的にどの程度の損害でどんな損害具合なのかイメージがつきにくいですよね。
以下の建物・家財それぞれの「一部損」認定の損害例を参考に、万が一の時でもすぐに請求できるようにしておきましょう。

「一部損」の支払い例 建物編

建物の損害は、建物の基礎、屋根、外壁等の主要構造部全体の損害割合の合計で、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の損害区分が判断されます。
以下のケース1もしくはケース2のそれぞれ①~④の主要構造部の損害が、建物の時価の3%以上20%未満であった場合に、「一部損」認定されます。

契約内容
建物の火災保険金額:18,000,000円
建物の地震保険金額:9,000,000円

「一部損」認定されると、支払われる保険金は地震保険金額の5%であることから、450,000円が受け取れることとなります。

ケース1

建物の構造

柱の本数

60本

基礎外周

120m

屋根の面積

120㎡

外壁の面積

200㎡
  1. 柱2本がずれたり割れたりしている。
    「柱」は主要構造部の「軸組」に該当。
    「軸組」は2/60本破損していることとなります。
  2. 建物基礎に5mに渡りクラック(ひび)が入っている。
    「基礎」は主要構造部の「基礎」に該当。
    「基礎」は5/120m破損していることとなります。
  3. 屋根瓦が10㎡程度ずれている。
    「屋根瓦」は主要構造部の「屋根」に該当。
    「屋根瓦」は10/120㎡破損していることとなります。
  4. 外壁にクラック(ひび)が入り、4面のうち10㎡程度の補修が必要である。
    「外壁」は主要構造部の「外壁」に該当。
    「外壁」は10/200㎡破損していることとなります。

1~4全て当てはまると、主要構造部全体でみると約18%の損害割合となり、「一部損」の損害認定となります。

ケース2

  1. 柱が以下の様な損傷により主要構造部の損害割合が7~8%を占めている。
    ・柱が傾いている。
    ・柱が沈み込んでいる。
    ・柱が移動している。
    ・柱の割れ、欠損、折れ
  2. 基礎が以下の様な損傷により主要構造部の損害具合が2~3%を占めている。
    ・基礎が壊れている。
    ・基礎が移動している。
    ・基礎の沈下
  3. 屋根が以下の様な損傷により主要構造部の損害具合が1~2%を占めている。
    ・瓦、ストレート、金属板などの屋根材が剝がれている。
    ・屋根材が割れている。
    ・屋根材が落ちている。
  4. 外壁が以下の様な損傷により主要構造部の損害具合が2%を占めている。
    ・外壁にひびが入っている。
    ・外壁が破損している。
    ・外壁のボードの浮き、外れ

1~4全て当てはまると、主要構造部全体でみると12~15%程の損害割合となり、「一部損」の損害認定となります。

「一部損」の支払い例 家財編

以下のケース1ならびにケース2の家財の損害額合計が、家財全体の時価の10%以上30%未満となった場合に、「一部損」認定されます。

契約内容
家財の火災保険金額:10,000,000円
家財の地震保険金額:5,000,000円

「一部損」認定されると、支払われる保険金額は地震保険金額の5%であることから、250,000円となります。

ケース1

  • 食器戸棚収納の食器類が散乱し大半が割れた。
  • 玄関の陶器置物が落下し破損した。
  • 鍋類等調理用具が落下し変形した。
  • 居間のステレオ・コンポが落下し破損した。
  • 食器戸棚が転倒し戸棚のガラス扉が割れた。
  • サイドボードが転倒し亀裂が入った。

ケース2

  • 食器類が落下し大半が散乱した。
  • 鍋類等調理用具が落下し調味料や食品と接触、調理用具が変形し、食品が使えなくなった。
  • テレビ、エアコンが落下し破損した。
  • 整理ダンスが転倒し亀裂が入った。
  • 書籍・CDが落下し破損した。
  • メガネと鞄が整理ダンスの下敷きになり破損した。

地震保険金がおりないのはどんな時?!

実際に大地震で被害を被った場合において、せっかく火災保険に加入したにもかかわらず、地震保険金が支払われない場合ももちろんあります。
「(支払われると思ったのに)がっかりした」なんてことが無いように地震保険金の支払いとならないケースも確認しておきましょう。

破損したものはお皿5枚のみですが、保険金はおりないのでしょうか。

A.家財全体の時価の10%未満となる可能性が高く、お皿のみではお支払いとはなりません。

家財の損害額が家財全体の時価(同等の物を新たに購入するのに必要な金額から使用による消耗分を控除して算出した金額)の10%以上となったとき、地震保険金支払いの対象となります。

食器のみが破損した場合については、家財全体に占める食器の標準的な価額構成割合からみて、支払い対象となる可能性は低いでしょう。

1階台所の窓ガラスに軽微なヒビが入っているのみですが、保険金はおりないのでしょうか。

A.「窓ガラス」は主要構造部には該当しない為、窓ガラスのみの損害では、地震保険金の支払いとはなりません。

地震による建物の被害のうち主要構造部(木造の在来軸組工法の場合、軸組(柱)、基礎、屋根、外壁など)の損害額が、その建物の時価の3%以上に達した場合に、地震保険金支払いの対象となります。

火災保険のみ加入していますが、地震による火災は支払対象となりますか。

A.火災保険のみのご契約の場合、地震(地震火災を含む)・噴火・津波により発生した損害は火災保険では免責事項であることから、火災保険金のお支払いとはなりません。

したがって、以下のような地震による損害も火災保険金支払い対象外となります。

  • 地震により火災が発生した。
  • 地震により建物が崩壊した際の瓦礫で契約物件が損害を受けた。
  • 地震による津波の影響で契約建物が流された。

なお、地震・噴火・津波による火災の場合で以下の損害を被った場合は、「地震火災費用保険金」の支払い対象となり、火災保険金額の5%がお支払いとなります。

建物:半焼以上の損害を被った。

家財:家財を収容する建物が半焼以上、または、家財が全焼した。

地震火災費用保険金とは?地震保険とは違う?
火災保険の費用保険金にはいくつか種類があり、その中に「地震火災費用保険金」というものがあります。「地震火災」とあるので地震や火災で保険金が支払われるように思えま ...

続きを見る

建物には損害がなく、ブロック塀のみが倒壊したような場合、保険金はおりないのでしょうか。

A.門、ブロック塀、垣、エレベーター、給排水設備のみに損害があった場合など、主要構造部に該当しない部分のみの損害であり建物に損害が認められない場合は、地震保険金のお支払い対象とはなりません。

自動車保険も安くしませんか?
一番安い自動車保険を探す方はこちら!

自動車保険は比較で安くなる!

インズウェブSNS公式アカウント

  • Twitter
  • facebook
  • instagram
  • tiktok
  • LINE
  • youtube
  • pinterest
  • note
  • Twitter
  • facebook
  • instagram
  • tiktok
  • youtube
  • pinterest
  • note
\インズウェブのお得情報を発信!/友だち追加

記事が参考になったらシェアお願いします!

  • この記事を書いた人

インズウェブ

「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず火災保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。

-地震保険の基礎知識

Copyright© SBI Holdings Inc. All Rights Reserved.

\火災保険は比較で安くなる!/