地震保険の基礎知識

マンションでも地震保険は必要?

投稿日:2019年3月8日 更新日:

マンションは耐震性に優れているのに加えて専有部分だけ被害を受けるようなイメージがわきにくいため、マンションに地震保険は必要がないと考える人が多いようです。実際のところ、マンションに地震保険は必要なのでしょうか。

そもそも地震保険とは?

地震保険の加入の是非を考える前に、地震保険とは何なのかについて説明します。地震保険は、「地震保険に関する法律」に基づいて政府と保険会社が共同して運営する保険です。大地震発生時には民間の保険会社だけでは保険金を支払いきれないため、国も運営に加わっています。

地震保険は建物や家財が地震・噴火やそれによっておこった津波を原因として損害を受けた場合に補償を受けることができます。これらの損害は火災保険では受けることができません。ただし、地震保険は受けた損害をそのまま補償することが目的ではなく、被災後の当面の生活を支えることが目的なので保険金額は火災保険の保険金額の3050%に抑えられています。

マンションでも地震保険に加入するメリット

専有部分(自分の部屋)で地震保険に加入するメリットとは?

前項で触れたように地震保険の主な目的は「被災者の生活安定」です。そのため、受け取った保険金の使い道は自由です。受け取れる地震保険の保険金額(保険金支払いの上限額)は火災保険の保険金額の30%~50%のため、地震によって修理が必要になってしまった部屋の原状回復には足りないかもしれませんが、被災者の「生活再建のための資金」としての位置づけと考える事ができます。マンション住まいであっても地震によって共有部分が被害を受けてしまい専有部分の自分の部屋は住める状態でも避難指示が出たためしばらく住居に戻れないようなケースも考えられます。そのような場合でも共有部分の損害認定により保険金を受け取る事ができるので避難場所での生活費に利用することができるというメリットがあります。

また、専有部分の損害も大きく住宅ローンが残っている状態で被災してしまった場合に、新たな新居に住宅ローンを組んで新しいマンションを購入するとなると二重ローンのリスクも心配です。しかし、一部の少額短期保険を除いて地震による被害を補償してくれるのは地震保険だけですのでマンション住まいでも地震による被害を受けた時のリスクを考え地震保険の加入を検討しておきましょう。

では、マンションの損害認定の判定はどのように決められているのでしょうか。専有部分の地震保険の火災保険と同様に建物と家財に分かれています。それぞれどのような損害認定となるのか次項で説明します。

共用部分の地震保険は?

マンションにかける地震保険は火災保険と同様に共用部分と専有部分に分かれています。共用部分については一個人の意志だけでは決めることができず、理事会や管理組合で話し合って加入を決めることとなります。損害保険会社4社が調べた2014年度の共用部分の地震保険付帯率はおよそ37%でした。付帯率が低めなことの要因としては、マンションの耐震性能などから、追加して保険料を払う価値があるのか疑問に思う人もおり、意見の統一を図ることができないことが挙げられるでしょう。しかし、東日本大震災や熊本地震でも多くのマンションが被害を受け、共用部分の地震保険の加入がなかった事で修復工事の資金が不足となり資金繰りに苦慮しているケースもあります。共用部分の地震保険加入がなく地震に対する備えが心配な場合は、マンションの理事会や管理組合に働きかけ地震保険加入の合意を得る必要があります。

マンションの場合の「建物」の損害認定はどうなる?

専有部分の「建物」の損害認定は共用部分を参考にする

専有部分に対する地震保険であっても、共用部分の損害状況を参考にして損害状況が判定されるのが基本となります。専有部分に被害がなくても共用部分に一部損の判定が出れば、専有部分の地震保険も一部損と判定されます。仮に、共用部分が一部損で専有部分が小半損などのより大きな損害を受けた場合などは、個別に再度の審査を依頼することもできます。

建物の損害認定基準

損害の程度基準
全損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合
大半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合
小半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合
一部損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合

なお、上表を見ればわかるとおり、主要構造部の損害額が重要となってきます。エレベーターや階段、ベランダなどの日常生活に欠かせない部分であっても、主要構造部に含まれない部分は損害の判定には使われないことに注意が必要です。

家財の損害は自分で備える必要あり

家財の損害は自分で専有部分用の地震保険に加入して損害に備える必要があります。特に建物の上階の方などは揺れが激しくて食器等が割れてしまったり電化製品等が倒れて故障してしまったりする可能性が高くなります。家財の買い替え費用などに不安がある場合には地震保険の加入を検討してみるとよいでしょう。

家財の損害認定基準

損害の程度基準
全損地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合
大半損地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合
小半損地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合
一部損地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合

注意ポイント

130万円を超える貴金属、宝石、美術品等(いわゆる明記物件)や通貨、有価証券、預貯金証書、印紙、切手、自動車などは対象にはならないので注意しましょう。

地震保険の保険金の支払額は?

地震保険の保険金はどの程度支払われるのでしょうか?まず、地震保険の保険金額(保険金支払いの上限額)は火災保険の保険金額の3050%の範囲での設定で、建物は5,000万円、家財は1,000万円の上限があります。つまり、保険金額を上限で設定していて全損しても50%までしか補償を受けることができません。

保険金の支払額

損害の程度支払額
全損地震保険の保険金額の100%(時価額が限度)
大半損地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度)
小半損地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度)
一部損地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度)

より補償を手厚くするには

地震保険は火災保険の保険金額の最大50%までしか保険金が支払われません。より補償を手厚くしたい場合は、保険会社が独自に用意している上乗せ補償を利用するか、地震保険とは別に単独で入れる地震補償保険に加入するという選択肢が考えられます。

ただし、両方とも追加で保険料がかかることと保険会社が独自で用意している上乗せは一部の保険会社のみで行っているものなので、火災保険の保険料・補償内容がより良い保険会社が上乗せを実施していない場合に、どちらを優先するかという問題はあります。火災保険を優先する場合は地震補償保険の方を検討することとなります。

罹災証明書の申請を忘れずに!

地震や風水害、火災などで被災した家屋などの被害の程度を証明する書類に「罹災証明書」があります。罹災証明書は、被災者の申請によりどの程度被災したかを行政が認定してくれる書類で、義援金の給付や被災による減税・猶予などの際に必要になります。地震などの自然災害で損害を受けてしまった時には、被災後に受けられる支援や制度なども利用しましょう。罹災証明書の被害の程度の判定は、地震保険の損害認定とは異なり、内閣府が定める「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」に基づいて行われます。

認定基準

全壊大規模半壊半壊
損壊基準判定
住家の損壊、焼失、流失した部分の床面積の延べ床面積に占める損壊割合
70%以上50%以上70%未満20%以上50%未満
損害基準判定
住家の主要な構成要素の経済的被害の住家全体に占める損害割合
50%以上40%以上50%未満20%以上40%未満

半壊に至らない一部損壊の場合、現行の制度では国の支援対象外となっています。しかし、2019年9月に発生した台風15号での千葉県の被害など特例措置で一部損壊でも支援を受けることができることがあります。

貯蓄で賄えるか、保険が必要かで考えよう

大規模な地震が起こってマンションに住むことができなくなった場合に、自分の貯蓄や地震保険の保険料分を自分でためておくことで生活の再建ができるのであれば地震保険は必要ないといえます。しかし、貯蓄等で生活の再建ができない場合は地震保険の加入も検討してみましょう。

大規模な地震で住居を失ったとしても、被災者生活再建支援法によって給付されるのは最大でも300万円です。その他義捐金等も集まるとは思いますが、それをあてにするのではなく、自分自身で備えておくのが大切です。

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