火災保険を契約する際に、臨時費用保険金を補償としてつけるかつけないかを選択できる場合があります。臨時費用保険金があれば損害発生時に保険金を多く受け取れますが、当然保険料も高くなります。臨時費用保険金は一体どのような補償でどのようなときに役に立つのでしょうか?
臨時費用保険金とは
臨時費用保険金とは、火災や自然災害などによって損害保険金が支払われるときに、損害保険金とは別に追加で支払われる保険金です。建物を修繕している間のホテルの宿泊費用など臨時の出費に充てるものですが特に使い道は指定されていません。
支払われる保険金は保険会社や契約内容などによって異なりますが、1事故あたり損害保険金の10%~30%(限度額100万~300万円)であることが多いです。例えば、修理費用が100万円、免責金額(自己負担額)が3万円、臨時費用保険金が損害保険金の10%の場合は、損害保険金が免責金額を除いた97万円支払われるので、臨時費用保険金はその10%の9.7万円が支払われます。また、損害保険金が1500万円、臨時費用保険金が損害保険金の10%(限度額100万円)の場合、損害保険金の10%が150万円と限度額を超えるので、限度額の100万円が臨時費用保険金として支払われることになります。
損害保険金と費用保険金
火災保険で支払われる保険金は大きく分けて損害保険金と費用保険金とに分けることができます。損害保険金は保険の対象である建物や家財が火災や自然災害などで損害を受けた時に、その損害に対して支払われる保険金です。もう一方の費用保険金は損害の他にかかるさまざまな費用に対して支払われる保険金です。
例えば、火災で住宅が全焼してしまった場合、建物や家財そのものに対しての補償が損害保険金として支払われ、焼け残りの片付け費用や近隣住宅に延焼してしまったときの見舞金などが費用保険金として支払われます。
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どのようなときに役に立つ?
火災や自然災害などで被害を受けたとき、その後に発生する費用は建物や家財を修理したり再度購入したりする費用だけではありません。家に住めない状態であるのならば住宅を修復する間に泊まるホテルなどの宿泊費用がかかります。また、引越しをすることになったら引越し費用もかかります。他にも、家財を一時的にトランクルームなどに保管する場合の保管費用や関係各所に連絡する際の通信費などさまざま費用がかかります。
こうしたさまざまな費用を賄うのに臨時費用保険金が役に立ちます。損害保険金のみではこうした費用は保険金として支払われません。一つ一つにかかる費用は大したことない金額かもしれませんが、合計するとそこそこ痛い金額になります。火災や自然災害の被害を受けただけでも痛手なのに、追加で自分の貯蓄を取り崩さなくてもすみます。
臨時費用保険金が支払われない場合
臨時費用保険金が支払われるのは損害保険金が支払われるときです。逆に言えば、損害保険金が支払われる対象とならない場合は臨時費用保険金も支払われません。
例えば、補償内容から水災補償を外していて大雨による洪水の被害に遭った場合、水災補償が補償対象外となっているので損害保険金は支払われず、臨時費用保険金も支払われません。他にも、経年劣化の場合や故意・重過失、法令違反の場合など、そもそも火災保険の補償の対象とならない場合でも臨時費用保険金は支払われません。
また、免責金額の設定がある場合で損害額が免責金額以下の場合についても、損害保険金が支払われないので臨時費用保険金は支払われません。免責金額以下の損害の場合はそもそも少額なので気にしないかもしれませんが覚えておきましょう。
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まとめ
臨時費用保険金は損害保険金が支払われる場合に、臨時の出費に充てるために損害保険金に追加して支払われる費用保険金です。自宅を修繕している間のホテルの宿泊費用や家財を一時的に別の場所に保管する場合の保管費用など自由に使うことができます。火災や自然災害などで大きな被害に遭ったときにはこの費用保険金があるとありがたみを感じます。しかし、補償を手厚くするほど保険料が高くなるのも事実です。臨時費用保険金の有無を選択できるという場合は、火災や自然災害の被害を受けた後に追加でかかる出費に耐えられるか、とても高額というわけではないので自分の貯蓄から出せないかなどを考えたうえで決めるようにしましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。