冬は火災の件数が増える季節です。冬は空気が乾燥し空気中の水分量が少ないです。空気が乾燥していることを肌で感じとる人も多い季節です。同じように家庭の中の家具などに備えられる水分量も少なくなるため火災は起きやすくなります。乾燥しているため火災が起きやすい条件の中でストーブなどの暖房器具を使うため暖房器具が原因による火災も増える時期ということになります。そんな冬場に活躍する暖房器具の注意したい使い方について紹介します。
目次
暖房器具を使う時に必ず守ること5選
冬の冷えた部屋を暖かくするために暖房器具は必需品です。最近では、高齢者や子供がいる家庭でも火を使わない安全に使える暖房器具も増えてきていますが、それでも誤った使い方をしていると火災の原因となります。
1.「使い始め」には暖房器具の点検・掃除をする
しまってあった冬場の暖房機器を寒くなってきたタイミングで何もせずに使い始めるのは危険です。季節ものの家電は保管中にほこりが溜まったり、内部の部品が経年劣化で故障してしまったりしていると思わぬ事故になってしまう場合があります。ほこりが溜まっていると溜まったほこりが原因で暖房機器から出火してしまったり、部品が故障していることで異常運転となり出火に至る危険性があります。配線部分に不具合が生じていたことにより火災の原因となったという事例も多いです。
火を使わずに安全に使える暖房器具(電気カーペット、オイルヒーター、パネルヒーターなど)でも、コンセントや配線部分に不具合が生じていたことにより火災の原因となったというケースがあります。使い始めには十分確認して試運転を行ってから通常運転を行うように注意しましょう。一見、異常が見当たらなくても変な音がしないかなど確認するようにしましょう。
暖房機器を使い始めるときには必ず電源を入れる前にほこりの掃除と点検を行いましょう。
2.暖房機器の上で洗濯物を乾かさない
冬は洗濯物が乾きにくい季節のため、暖かい室内で乾かすという人も多いです。また、乾燥している季節に洗濯物の室内干しは乾燥対策にもなります。しかし、ストーブなどの暖房器具の上で乾かすのは非常に危険です。洗濯物が暖房器具の上に落下し火災が発生するという事例は多いです。石油ファンヒーターであれば温風が出るので、温風で洗濯物がなびいて洗濯物が石油ファンヒーターの上に落下してしまうといったこともあります。ストーブや石油ファンヒーターだけでなく火を使わずに安全に使える暖房器具であっても干してあった洗濯物が暖房器具の上に落下してしまい過熱されて火事に至ったという事故も起こっています。
火事以外にもストーブや石油ファンヒーターなどの暖房機器の側で衣類を乾燥させると変色する可能性があります。また、室温が低い部屋で乾かすと生乾きとなってしまい生乾き臭が発生したりといった心配もあります。
ですから、洗濯物は洗濯乾燥機を使用するのがよいですが、洗濯乾燥機などがなく、冬場の暖房で温まった部屋で洗濯物を干すときには暖房機器と十分距離をとりサーキュレーターや扇風機などを活用して干すとよいでしょう。
部屋干しで洗濯物を早く乾かすには、暖房器具から離れた温風のあたる場所にサーキュレーターや扇風機を首振りにして設置するとよいでしょう。
3.燃えやすいものは暖房機器から20cm以上離して設置
暖房器具の側にあったカーテンや衣類、布団などが暖房器具に接触し火が移ったり過熱したことで出火し火事に至るといった火災事故も起きています。カーテンや衣類、布団などの可燃物は暖房器具から離して設置しましょう。
暖房機器を使用するときには燃えやすい可燃物(カーテン・衣類・布団など)から20cm以上離して使いましょう。
4.暖房器具の側にスプレー缶は置かない
殺虫剤や化粧品、ヘアスプレーなどのスプレー缶や引火性の溶剤を使った接着剤などは、引火や爆発の危険があるため、ストーブの近くで使用したり、放置には注意したいものになります。爆発や火事の恐れがあるため、暖房器具の側には保管しないようにし、注意事項をしっかり守って使用するようにしましょう。
5.就寝時には電源オフ
人が見ていないときに可燃物が暖房器具に接触し火事に至ってしまうことも多いです。就寝中に寝返りを打ったタイミングで布団がストーブに接触してしまったりすると布団に出火する恐れがあります。必ず、就寝時や長時間その場を離れるときには電源スイッチを切り、電源プラグを抜くなど事故を未然に防ぐ正しい暖房機器の使い方を意識しましょう。
冬場の火災はどれだけある?
冬は空気が乾燥していたり、多くの家庭で暖房器具を使用するため火事が起こりやすいというイメージを持っている人も多いと思います。実際にどのくらい火事が起きているのか総務省消防庁の令和3年版 消防白書より紹介します。
令和元年 | 令和2年 | |||
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出火件数(件) | 構成比(%) | 出火件数(件) | 構成比(%) | |
春季(3月~5月) | 12,156 | 32.3 | 10,472 | 30.2 |
夏季(6月~8月) | 7,508 | 19.9 | 7,224 | 20.8 |
秋季(9月~11月) | 7,771 | 20.6 | 7,486 | 21.6 |
冬季(12月~2月) | 10,248 | 27.2 | 9,509 | 27.4 |
合計 | 37,683 | 100.0 | 34,691 | 100.0 |
※冬季の1月及び2月は当該年のものです。
※合計欄の値が四捨五入により各値と一致しない場合があります。
火災の件数でみると、冬よりも春の方が火災が多いことが分かります。それは、春も冬と同じ空気が乾燥している季節であることに加えて、これから夏に向けての強い南風が来ることで炎が燃えやすい状態となるためと言われています。
主な火災原因
家庭の中で起こる火災の原因となりやすいものを総務省消防庁 消防統計(火災統計)令和3年(1~12月)における火災の状況(確定値)についてから紹介します。
こんろが住宅火災で火災となった原因の1位です。こんろはガスコンロが原因となることがほとんどです。冬場は携帯用のガスコンロを使ってお鍋をやる家庭も増える時期です。携帯用コンロの使用には十分注意したいですね。こちらは年間を通してのデータになりますが、主に冬場に使用するストーブやこたつといった暖房器具が原因での火災が多いことが分かります。年間を通じたデータにも関わらず件数が多いということは冬場の火災でストーブやこたつが原因となることがとても多いのだろうということが考えられます。
火災が起きてしまったときの避難方法を確認しておこう!
建物火災で住宅火災の件数割合は令和3年のデータで55.9%と半数以上を占めており、住宅火災による死亡者の約半数は「逃げ遅れ」となっています(出典:総務省消防庁_令和3年(1~12月)における火災の状況(確定値))。気を付けていても火事が起こってしまう場合があります。火災は人命にかかわる事故ですから、第一に「火の用心」を普段から心掛けることは当たり前ですが、万が一の火事でも身を守れるように備えておくこが大切です。
第一に消火活動
出火から3分以内が消火できる限度と言われているので、家庭の中で火が出てから消火まではスピードが肝心です。電化製品から火が出た場合は、ただちにプラグをコンセントから抜きます。感電防止のために「絶縁グローブ」があるとよいです。火花や焦げ付き程度であればすぐに水をかけ完全に消火します。炎となり燃えてしまっている場合は、すぐに消火できず火が広がってしまう恐れがあるため迅速に119番をしましょう。 逃げる際は扉などを閉め、火に酸素が触れないようにすることも重要です。
小さな炎であれば、消火器を使用したり座布団で火を叩いたり、塗れた毛布で火を覆うなどをして自分でできる消火活動を行いましょう。炎が広がり手に負えない場合は迷わず逃げましょう。
石油ストーブから出火時の対処法
- 消火器で火を消す
- 濡れたシーツやタオルを上から覆う
- 大量の水を勢いよく一気にかける
電化製品から出火時の対処法
- 電源プラグを抜く
- ブレーカーを落とす
- 消火器や水で消火
逃げ遅れ対策で準備しておきたいこと
- 住宅用火災報知器の設置
- 寝具やカーテンなどには防火品を使用
- 住宅用消火器の設置
- 日頃から近隣住民との協力体制をつくっておく
火災から身を守るポイント
- 冷静さを保って素早く逃げる
- エレベーターは使わない(下に向かって逃げましょう)
- 可能であればドアは閉めて逃げる(延焼防止)
- 低い姿勢で逃げる
- 煙を吸わない(濡れたタオルなどで口と鼻を押さえる)
軽被害であっても火災保険の申請を
暖房器具が原因によるボヤなどで火事の被害や家電の破損などが発生した場合、火災保険で修理費用を補償してもらえるかもしれません。火災保険は大規模な火事の補償だけでなく、ボヤなどの小規模な被害でも補償を受けられます。賃貸物件であっても持ち家であっても基本的には火災保険に加入しているはずなので、一度保険会社に確認してみることをおすすめします。 続きを見る火災保険はボヤでも使える?賃貸の場合は?
火事で住宅が燃えてしまったら・・・
罹災証明書を取得しましょう
自宅が火事で燃えてしまったら、罹災証明書を発行してもらいましょう。罹災証明書とは火災や風水害、地震などで被災した家屋などの被害の程度を証明する書類です。被災者の申請により各市区町村が家屋などの被害の状況を調査して、「全壊」「大規模半壊」「半壊」などの被害の程度の認定が行われます。
罹災証明書は、火災保険金の受取や固定資産税などの税金の優遇を受ける時に必要です。焼け残った骨組みの解体やがれきの撤去の見積もりを行う時にも提出を求められることがあります。自治体によっては補助金制度を利用できる場合があり、その際にも罹災証明書が必要です。
罹災証明書は消防署や自治体に申請を行います。申請には身分証明書などの書類が必要になるため、可能であれば申請前に必要書類について消防署や自治体に確認してから申請するとよいでしょう。
罹災証明書とは?どこで発行される?
自然災害や火災の被害を受けた後、火災保険を使ったり被災者支援を受けたりするのに罹災証明書の提出が必要となる場合があります。罹災証明書とはどのようなものか、どこで ...続きを見る
火事による損害は火災保険で補償
火災保険の対象の建物・家財が火事で損害を受けたり、自宅が全焼してしまった場合、契約時に設定した保険金額(保険金支払の上限額)を上限に実損額が支払われます。
保険金額は建物評価額と同額で設定することが基本です。仮に保険料を抑えるなどの目的で保険金額を建物評価額よりも小さくしていた場合(一部保険)、自宅が火災で全損してしまっても建物評価額よりも小さい保険金額までの保険金しか支払われません。
また、もう一つ注意が必要なのが、時価を基準とした契約になっている場合です。時価を基準としている場合、支払われる保険金は経過年数や使用消耗によって下がった建物の価値を基準としたものとなります。この場合、支払われる保険金は全焼してしまった家と同等のものを再建築あるいは再購入するために必要な費用よりも少なくなる場合があります。これを避けるためには新価(再調達価額)を基準とした保険金額での契約にしておく必要があります。
自宅の火災保険契約がどのようになっているか確認しておきましょう。
火災保険の請求方法
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1保険会社に連絡
まず、契約する保険会社に損害を受けたことを連絡してください。契約者氏名、保険証券番号、事故内容、被害状況などを伝えることとなります。
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2保険会社から必要書類等が送られてくる
保険会社に連絡すると、保険金の請求に必要な書類や案内が送られてきます。内容をしっかりと確認するようにしましょう。
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3保険会社に必要書類の提出
保険会社からの案内に従って必要な書類を用意して保険会社に書類を提出しましょう。保険会社指定の保険金請求書、修理費用の見積書、被害の状況がわかる写真などが必要となります。
step
4保険会社による鑑定人の調査
鑑定人が被害状況の確認・調査を行います。調査結果と契約者からの申請書類などをもとに保険金の支払対象か審査を行い、支払われる保険金の金額が確定します。
step
5保険金の入金
保険金の金額が確定したら、契約者指定の口座に保険金が支払われます。