地震保険の基礎知識

地震保険は必要?

投稿日:2019年3月27日 更新日:

火災保険に入るときに悩むことの一つに地震保険にもセットで加入するべきかということがあります。火災保険だけでは地震による被害は補償されません。どのような人は地震保険に入った方がよいのか、また、そもそも地震保険とはどのようなものなのか紹介します。

地震保険に入った方がいいのはどんな人?

地震保険にはどのような人が入った方がいいのでしょうか。次のような人は、地震保険の加入を検討することをおすすめします。

  • 地震等で住宅・家財を失った時に生活の再建が難しい人
  • 住宅ローンが残っている人
  • 新築住宅を購入したばかりの人
  • 地震・噴火・津波の危険性が高い地域に住んでいる人

地震保険は、地震等で被害を受けた場合に生活の再建を助けるための保険です。その目的に沿って、地震・噴火・津波の被害を受けた後、生活の再建が難しいようであるのならば地震保険の加入を考えた方がよいでしょう。また、地震によって住宅を失っても住宅ローンの支払いは免除されません。住宅ローンが残っている場合は特に地震保険の必要性は高いといえるでしょう。

地震保険が必要ない人はどのような人

逆に地震保険が必要ない人は、地震等の被害を受けても貯蓄が十分にあってすぐに新生活を始められる人です。万が一のことがあっても貯蓄等でカバーできるのであれば地震保険に加入する必要性は薄いです。

また、地震保険は地震・噴火・津波による損害に備えるものなので、これらの危険性がない場合も地震保険は必要がないといえます。しかし、日本に住んでいる以上地震の危険性がないと言い切れる場所は無いといってもよいでしょう。地震の発生確率が低いとされている地域でも巨大地震が起こる可能性は十分にあります。実際、阪神淡路大震災や新潟中越沖地震、東日本大震災、熊本地震など発生確率が低いとされていた地域で大きな地震が起きています。

マンションなどの耐震性が高い建物でも入るべき?

マンションなどの耐震性が高い建物に住んでいる場合、地震保険は保険料の無駄だと考えて地震保険に加入しない人もいるようです。しかし、マンションなどに住んでいてもローン残高が多い場合や被災後に貯蓄だけで生活していくのが厳しい人は加入を検討したほうがよいでしょう。確率は低くても万が一があった場合の備えとなるのが保険です。

また、マンションの高層階の場合は建物自体は無事でも家財に損害を受ける可能性があります。長周期地震動によって高層ビルが揺れると高層階の方が大きく揺れます。東日本大震災においては首都圏などの高層建物が長周期地震動により大きく長く揺れました。

参考:長周期地震動による高層ビルの揺れ方(気象庁)

耐震性・免震性に優れた建物の場合、地震保険の割引を受けられます。例えば、耐震等級3の場合や品確法に基づく免震建築物の場合は50%の割引を受けることができます。地震保険の保険料がネックとなっている場合には一度割引制度についても確認しておきましょう。

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ローンがない場合や賃貸一人暮らしの場合は?

ローンがない場合や賃貸一人暮らしの場合は住居にかかる費用の二重負担は無いので地震保険の必要性は薄れます。しかし、貯蓄等が少なく被災後に生活の再建が難しい場合は地震保険の加入を考えた方がよいでしょう。新たな住居を探したり購入したりする費用や家財一式を再購入する費用を捻出できないという事態を避けることができます。

地震が起きた後の公的支援はあまり大きくない

地震のような自然災害の被害を受けた場合、何か公的制度によって補償されるのではないかと思うかもしれません。確かに「被災者生活再建支援制度」という公的支援制度はあるのですが、その支援額は十分な金額とは言えません。受けられる金額は住宅の被害の程度と住宅の再建方法によって異なりますが、最大でも300万円までしか支援を受けられません。

対象世帯

10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等の自然災害により
①住宅が「全壊」した世帯
②住宅が半壊、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
③災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
④住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯
⑤住宅が半壊し、相当規模の補修を行わなければ居住することが困難な世帯

基礎支援金
(住宅の被害程度)
加算支援金
(住宅の再建方法)
①全壊
②解体
③長期避難
100万円建設・購入200万円300万円
補修100万円200万円
賃借(公営住宅を除く)50万円150万円
④大規模半壊50万円建設・購入200万円250万円
補修100万円150万円
賃借(公営住宅を除く)50万円100万円
⑤中規模半壊建設・購入100万円100万円
補修50万円50万円
賃借(公営住宅を除く)25万円25万円

※世帯人数が1人の場合は、各該当欄の金額の3/4の額

300万円では元の住宅と同程度の物件の再購入や再建築は難しいでしょう。地震保険など何らかの手段で地震に対して備えておくことが必要だといえます。

東日本大震災で全壊した住宅では約2100万円不足した

内閣府の防災情報のページによると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は平均して約2500万円なのに対し、公的支援として受給できるのは善意による義援金をあわせても約400万円にとどまりました。また、生活の再建のためには建物を新築するだけでなく家具や家電の購入が必要となります。東日本大震災の際には、被災者生活再建支援制度を申請した人の45.5%が家電・家具・寝具の購入など、住宅再建以外に50万円以上の費用をかけています(出典:平成24年度被災者生活再建支援法関連調査報告書)。

公的支援+義援金では約2100万円不足する

地震保険の保険料を抑えるには?

地震保険の加入に二の足を踏む理由の一つに地震保険の保険料があります。火災保険を加入するタイミングはいろいろと入用なときなので追加で保険料を払うことにためらいを感じるようです。

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地震保険の保険料はどこの保険会社でも同じなので、保険料が安い保険会社で加入するということはできません。しかし、保険料を安くする方法も存在します。それは、割引制度の活用と長期契約です。

地震保険の割引制度

地震保険には、免震建築物割引、耐震等級割引、耐震診断割引、建築年割引の4つの割引が用意されていて、10%~50%の割引を受けることができます。地震等の被害を受けにくい建物ほど保険料の割引が受けられます。ただし、割引基準を実際には満たしていてもそれを証明するものがないと割引が適用されないので注意が必要です。

割引割引率適用条件
免震建築物割引50%住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)に基づく免震建築物に該当する建物であること
耐震等級割引耐震等級3:50%
耐震等級2:30%
耐震等級1:10%
品確法に規定する評価方法基準に定める「耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)」または国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に定められた耐震等級を有していること
耐震診断割引10%地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす建物であること
建築年割引10%昭和56年6月1日以降に新築された建物であること

長期契約

地震保険は最長5年の契約ができますが、火災保険と同じように保険期間(契約期間)が長くなるほど1年あたりの保険料が割安になります。

地震保険の長期係数(2022年10月1日以降始期)
保険期間2年3年4年5年
長期係数1.902.853.754.70

保険期間が2年の場合は1.9年分、保険期間が5年の場合は4.7年分の保険料で地震保険に加入することができます。

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地震保険料控除

直接の保険料の割引ではありませんが、地震保険料控除によって所得税・住民税の控除を受けることができます。長期契約の保険料を一括で払った場合は保険料総額を契約期間で割った金額が1年分の控除対象となります。

地震保険料控除の控除額

年間支払保険料所得税住民税
5万円まで保険料全額保険料の1/2
5万円超一律5万円一律2万5千円
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地震保険の世帯加入率は?

まずは、どれくらいの世帯が地震保険に加入しているのかを紹介します。損害保険料率機構統計集によると、2020年末での地震保険の世帯加入率は33.9%です。日本は地震大国であるのに対して世帯加入率はあまり高くないようです。

地震保険の世帯加入率

地震保険の付帯率にも注目

地震保険の世帯加入率は全世帯が対象なので、昔からの家など地震保険の必要性が認識されていない世帯も含まれます。これから新しく家を購入するなどして地震保険を検討している人には地震保険の付帯率の方が参考になるかもしれません。

地震保険の付帯率は、「当該年度に契約された火災保険(住宅物件)契約件数のうち、地震保険を付帯している件数の割合」を計算したものです。更新と新規加入のどちらの場合もありますが、今から地震保険を検討しようとしている人の意識に近いのはこちらのデータです。

世帯加入率と同じく、損害保険料率機構統計集によると、2020年度の地震保険付帯率は68.3%でした。約3分の2の契約で地震保険を付帯しているようです。

地震保険の付帯率

加入率
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そもそも地震保険とはどんな保険?

そもそもとして地震保険とはどのような保険なのか、以下紹介します。

地震保険の基本

地震保険についての基本的な知識を紹介します。地震保険は「地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没または流失による建物や家財の損害」の補償を受けることができます。火災保険だけでは、地震や噴火、津波による損害は補償を受けることができません。

地震は広範囲かつ大規模な損害を受けることがあるので、民間の保険会社だけでは保険金の支払が難しく、政府と保険会社が共同して運営を行っています。そのため、地震保険自体の補償内容や保険料に差異はなく、すべての保険会社で同一となっています。地震保険は火災保険とセットでしか入れないので、地震保険に入りたい場合は、地震保険にも入れる保険会社の火災保険の中からより良いものを選ぶとよいでしょう。

保険金の支払基準と支払額

地震保険の保険金は火災保険のように、損害の実損額が支払われる形式ではなく、損害の程度に応じて保険金額(保険金支払の上限額)の○%という風に定められています。

地震保険の保険金の支払基準と支払額は以下の表の通りです。

支払基準

損害の程度建物の基準家財の基準
全損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合
大半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合
小半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合
一部損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合
地震保険の補償額
損害の程度補償額
全損地震保険の保険金額の100%(時価額が限度)
大半損地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度)
小半損地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度)
一部損地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度)

損害の程度が一部損に満たない場合は地震保険の保険金は支払われません。また、地震保険の保険金額は火災保険の30%~50%(上限額は建物が5,000万円、家財が1,000万円)で設定することとなっています。

もっと補償が欲しい場合は、保険会社が独自で用意している地震保険の補償を上乗せする特約を利用するか、別途、地震補償保険を契約するかする必要があります。ただし、いずれの方法でも追加の保険料が必要となるので必要な補償と保険料のバランスを考えて契約するようにしてください。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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  • この記事を書いた人

インズウェブ

「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず火災保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。

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