火災や自然災害の被害に遭った時、火災保険に加入していれば保険金を受け取ることができます。火災保険は建物や家財が対象なので、数千万円の保険金が支払われる場合もありますが受け取った保険金には税金はかかるのでしょうか?
目次
基本的には非課税
火災保険で受け取った保険金は基本的に非課税です。火災保険は火災や自然災害などで受けた損害を穴埋めするものなので、保険金の受け取りによって利益は生じていないため非課税となります。
建物が全損して火災保険で2000万円受け取り、建て直すのに1,500万円しか使わなかったというような場合にも残りの500万円は課税対象ではありません。
また、大規模な災害などの場合、公的な支援金や義捐金を受け取れることもあります。これらについても非課税となっています。
保険料の負担者と保険金を受け取る人が違っても贈与税はかからない
火災保険では保険料を支払う人と保険金を受け取る人(=建物等の所有者)は基本的に同一ですが、親所有の建物に子供が保険料を負担して火災保険に加入するケースもあると思います。このケースでは保険料を支払う人と保険金を受け取る人が別の人となりますが、このような場合でも保険金を受け取る人に贈与税はかかりません。
課税対象となる保険金もある
同じ火災保険の保険金でも課税対象となる保険金もあります。個人が自宅にかける火災保険にはあまり関係がありませんが、事業者の店舗や商品が火災で焼失したような場合で、焼失した商品の損害保険金は課税対象となります。その他にも休業中の利益を補てんするような保険金も課税対象となります。
積立型の満期返戻金は課税対象
火災保険は掛け捨てのものが一般的ですが、積立タイプの火災保険もあります。積立型の火災保険は満期が来ると満期返戻金が支払われますが、満期返戻金は課税対象となります。
満期返戻金を受け取る人が保険料を支払っていた人と同一の場合は「一時所得」の扱いで所得税の対象となり、保険金を受け取る人が保険料を支払っていた人と異なる場合は贈与税の対象となります。
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損害を穴埋めしきれない場合は税金が安くなる
火災保険や地震保険で受け取った保険金が損害額を下回った場合、確定申告で雑損控除や災害減免法による所得税の軽減免除を適用できます。雑損控除と災害減免法による所得税の軽減免除はいずれか有利な方を選択することができます。
雑損控除
雑損控除とは、災害や盗難、横領によって資産に損害を受けた場合に適用できる所得控除です。対象となる資産は住宅や家財など生活に通常必要なもののみで、いわゆる明記物件にあたるような書画や骨とう品などの損害は対象外です。
雑損控除による控除額は、以下の2つのうち控除が大きい方です。
- 差引損失額-総所得金額等×10%
- 差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
災害関連支出の金額とは、災害により滅失した住宅、家財などを取壊し又は除去するために支出した金額などです。
差引損失額は以下の計算式で計算します。
差引損失額=損害金額(時価)+災害等に関連したやむを得ない支出の金額-保険金などにより補てんされる金額
損失額が大きく、その年の所得額から控除しきれない場合は3年間繰り越すことができます。
参考:国税庁(雑損控除)
災害減免法による所得税の軽減免除
災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などによって補てんされる金額を除く)がその時価の2分の1以上で、災害のあった年の所得金額の合計額が1000万円以下のとき、その災害による損失額について雑損控除を受けない場合は災害減免法によりその年の所得税が以下の表のように軽減または免除されます。
所得金額の合計額 | 軽減または免除される所得税の額 |
---|---|
500万円以下 | 所得税の額の全額 |
500万円を超え750万円以下 | 所得税の額の2分の1 |
750万円を超え1000万円以下 | 所得税の額の4分の1 |
まとめ
火災保険で受け取る保険金は火災や災害等で受けた損害を穴埋めするという性格のものなので基本的に非課税です。また、保険金で損害を穴埋めしきれない場合は雑損控除や災害減免法による所得税の軽減免除を受けることができます。ただし、これには確定申告が必要です。確定申告は毎年混み合いますので、必要な書類を確認して早めに手続きをするようにしましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。