近年、雹(ひょう)が降って住宅や車に被害が出たというニュースを聞くことが多くあります。特に5月~6月や10月などに雹が降りやすいのですが、雹による被害を受けた場合、火災保険による補償は受けることができるのでしょうか?
目次
風災・雹災・雪災補償で補償される
雹によって住宅に被害を受けた場合、火災保険に風災・雹災・雪災補償をつけていれば補償を受けることができます。例えば、以下のようなケースでは補償を受けられる可能性があります。
保険の対象 | ||
---|---|---|
建物 | 家財 | |
雹で屋根瓦が割れてしまった | 〇 | × |
雹で雨どいが破損した | 〇 | × |
雹でカーポートが破損した | 〇 | × |
雹で窓ガラスが割れ、そこから雨が吹き込んでテレビが故障した | 〇 (窓ガラス) | 〇 (テレビ) |
カーポートは対象だけど車は対象外
上の表でも例に挙げましたが、建物の契約があれば基本的にはカーポートも付属設備として補償対象となります。しかし、車は火災保険の補償対象に含まれていません。そのため、雹がカーポートの屋根を突き破り、その下にとめていた車も傷つけたという場合でも、火災保険では車の被害の補償を受けることができません。
車の被害については自動車保険の車両保険で補償を受けることになります。雹による被害は車両保険が一般型でもエコノミー型でも補償対象となります。ただし、車両保険を使うと翌年の契約は1等級ダウンし、事故有係数適用期間が1年加算されるので注意しましょう。
火災保険の補償を受けられないケース
雹による被害を受けても次に挙げるような場合、火災保険の補償を受けることができません。
風災・雹災・雪災補償をつけていない場合
当然ではありますが、火災保険に雹災に対する補償をつけていなければ雹による被害を受けても補償を受けることはできません。多くの場合は風災・雹災・雪災補償として補償内容に含まれていますが、最近は補償内容を自分でカスタマイズできる火災保険もあります。保険料を安くするために風災・雹災・雪災補償を外していた場合は補償を受けられません。
損害額が免責金額以下の場合
火災保険に免責金額の設定がある場合、雹による損害が免責金額以下だと補償を受けることができません。免責金額というのは自己負担額で、免責金額が5万円、損害額が20万円の場合は15万円が保険金として支払われ、5万円は自己負担となります。免責金額を大きくすると保険料が安くなりますが、その分自己負担額が大きくなり、軽微な損害で補償を受けられなくなりますので注意しましょう。
昔からの契約だと20万円以上の損害が必要な場合も
最近の契約ではあまり見かけませんが、住宅ローンとともに35年などの長期契約を結んでまだ契約が残っているという場合などで、免責金額の設定が上の説明と異なる場合があります。フランチャイズ方式といって、損害額が一定金額未満だと全額自己負担で、逆に一定金額を超えると全額保険金が支払われる仕組みです。
このタイプの契約の場合、一般的に20万円が基準となっているため、損害額が20万円未満の場合は全額自己負担となってしまいます。心当たりのある方は契約内容を確認しておくとよいでしょう。
被害を受けてから3年以上経過した場合
保険法により保険金請求の権利の時効は3年と定められています。損害が発生してから相当の時間が経過するとその調査が困難となるためです。被害を受けたのを確認したら忘れてしまう前に火災保険の請求を進めるようにしましょう。
保険金はいくら受け取れる?
火災保険で受け取れる保険金の額は基本的に、「損害額」(修理費用や再購入費用)から「免責金額」(自己負担額)を除いた金額です。雹の場合では考えづらいですが、全損の場合は免責金額が引かれず、保険金額全額が支払われます。
例えば、雹でカーポートのパネルが破損し、修理費用として15万円かかる場合で、免責金額が3万円の契約の場合、12万円が保険金として支払われます。
また、臨時費用保険金や残存物取片付け費用保険金が支払われる契約の場合、上で説明した損害保険金に追加してこれらの費用保険金も支払われます。臨時費用保険金は損害の復旧以外で臨時でかかる費用のために1事故あたり損害保険金の10%(限度額100万円)などの金額が追加で支払われるもので、残存物取片付け費用保険金は残存物の取り壊しや清掃、搬出などに実際にかかった費用が支払われるものです。
保険金請求の流れ
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1保険会社に連絡
まず、契約する保険会社に損害を受けたことを連絡してください。契約者氏名、保険証券番号、事故内容、被害状況などを伝えることとなります。
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2保険会社から必要書類等が送られてくる
保険会社に連絡すると、保険金の請求に必要な書類や案内が送られてきます。内容をしっかりと確認するようにしましょう。
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3保険会社に必要書類の提出
保険会社からの案内に従って必要な書類を用意して保険会社に書類を提出しましょう。保険会社指定の保険金請求書、修理費用の見積書、被害の状況がわかる写真などが必要となります。
火災保険の保険金請求には写真が必要!どのように撮ればいい?
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4損害の状況の確認・審査
保険会社が被害状況の確認・調査を行います。調査結果と契約者からの申請書類などをもとに保険金の支払対象か審査を行い、支払われる保険金の金額が確定します。
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5保険金の入金
保険金の金額が確定したら、契約者指定の口座に保険金が支払われます。
まとめ
住宅が雹による被害を受けた場合、火災保険に風災・雹災・雪災補償の契約があれば補償を受けられる可能性があります。被害を受けた個所は片づける前に写真をとっておき、速やかに保険会社に連絡するようにしましょう。保険会社による確認・審査ののち、保険金が支払われます。
また、火災保険の契約内容を確認する中で補償内容を見直したいと感じた場合は一度、他の会社も含めて検討してみましょう。見直しは一括見積もりサービスを使うと便利です。住宅購入時に勧められた保険会社と契約してからそのままという場合、十分に他社の火災保険と比較できていない可能性があります。
火災保険は値上げが続いているため、保険期間がどれだけ残っているかによって見直しが得とはならないこともありますが、満期が近い場合など近々見直しの機会がある場合はぜひ他社も含めて見積もりを取って比較・検討してみましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。