火災保険の補償内容の中に騒擾(そうじょう)というものがあります。しかし、騒擾は普段使う言葉ではないので何を意味するのか分からない、そもそも漢字も読めなかったという方もいるのではないでしょうか。火災保険の騒擾についてどのような補償内容なのか紹介します。
騒擾(そうじょう)とは?
騒擾とは群衆または多数の者の集団の行動によって、数世帯以上の規模にわたり平穏が害される状態または被害が生じる状態で、暴動に至らないもののことをいいます。火災保険の騒擾の補償では、これらの行為によって建物または家財に損害が生じた場合に補償されます。
補償される事例
以下のような場合に補償を受けることができます。
- デモ隊の投石によって自宅の壁や窓ガラスが破損した
- 労働争議等に伴う暴力行為によって建物や家財に損害を受けた
- グループ同士の闘争によって建物や家財に損害を受けた
騒擾と暴動の違いは?
騒擾についての説明で「暴動に至らないもの」と書きました。それでは騒擾と暴動はどのような違いがあるのでしょうか。保険会社の定義としては、暴動は「群衆または多数の者の集団の行動によって、全国または一部の地区において著しく平穏が害され、治安維持上重大な事態と認められる状態をいいます。」というような定義がなされています。範囲や状況において暴動の方がより規模が大きいものとなっています。
騒擾 | 暴動 |
---|---|
群衆または多数の者の集団の行動によって | |
数世帯以上またはこれに準ずる規模にわたり | 全国または一部の地区において |
平穏が害される状態または被害を生ずる状態 | 著しく平穏が害され、治安維持上重大な事態と認められる状態 |
また、戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱によって生じた損害も補償対象外となりますのでご注意ください。
保険金はいくら支払われる?
騒擾による損害で支払われる損害保険金は、損害の額から契約時に設定した免責金額(自己負担額)を引いた額です。損害の額は損害発生直前の状態に復旧するために必要な修理費用で、全損の場合は保険価額が損害の額となります。
設定できる免責金額は保険会社によって異なります。0円、5,000円、10,000円、30,000円、50,000円といった選択肢の中から1つ選ぶ形が多いです。免責金額の額が大きいほど自己負担する必要のある金額が大きくなりますが、その分保険料も安くなります。
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水濡れ補償などとセットになっていることも多い
現在の日本では騒擾によって被害を受ける可能性は低く、騒擾に対する補償は必要ないと思う人もいると思います。ただし、騒擾は単独ではなく、水濡れ補償など他の補償とセットとなっていることが多いです。
水濡れ補償では給排水設備の故障や他人の戸室で生じた事故により水漏れや放水などが起こり、天井や壁紙にシミができた、床が水浸しになったなど水濡れ損害が発生してしまった場合に補償を受けることができます。給排水設備というのは、水道管や排水管、貯水タンク、給水タンク、トイレの水洗用の設備、スプリンクラー、スノーダクトなどを指します。
水濡れ補償は年間4万件前後の保険金請求が行われていて、特にマンションなどの集合住宅では必要性の高い補償です。一緒になっている補償の内容も見て必要か不要か判断するようにしましょう。
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まとめ
火災保険の補償内容の中に騒擾というものがありますが、これは群衆または多数の者の集団の行動によって、数世帯以上の規模にわたり平穏が害される状態または被害が生じる状態で、暴動に至らないもののことを指します。デモ隊による投石で窓ガラスが破損してしまったなどの損害で補償を受けられます。現在の日本ではお世話になる機会はほぼないですが、水濡れ補償など他の補償とセットとなっていることが多いので、セットとなっている補償の内容と合わせて必要性を判断するようにしましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。