火災保険の基礎知識

【オーナー・大家さん向け】施設賠償責任保険とは?

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アパートやマンションの賃貸物件を運営するのであれば、「施設賠償責任保険」について知っておくことが望ましいです。施設賠償責任保険はどのような保険でどのような時に保険金が支払われるのか、逆にどのような時に支払われないのか紹介します。

施設賠償責任保険とは

施設賠償責任保険とは、施設(今回の場合は所有するアパートやマンション)の欠陥や不備、業務の遂行によって、第三者や第三者のものに損害を与え、法的な損害賠償責任を負った場合に補償を受けられる保険です。

アパートやマンションの例でいうと、外壁がはがれ落ちて下に停まっていた車を破損させた、マンションのエントランスに滑りやすい素材が使われており、そこで転んでケガをする人が出た、などのようなケースで補償を受けることが可能です。

万が一、被害者が死亡したり重い後遺障害を負ったりした場合、損害賠償額は非常に高額となります。例に挙げた外壁の剥落が車ではなく人にあたった場合、死亡事故につながりかねません。こうした場合の損害賠償リスクに備えるのが施設賠償責任保険です。

補償される費用は?

施設賠償責任保険では主に以下の内容の補償がされます。

損害賠償金

治療費や修理費などの法律上の損害賠償責任が発生した場合に、被害者に対して支払うべき損害賠償金を支払います。

損害防止費用

事故の発生を知った後に、損害の発生や拡大を防止するために必要または有益な費用について補償されます。

例えば、マンションのエントランスの床が滑りやすい材質になっていて、そこで転んでケガをした人が出た場合、その人を救護したり、滑りやすい箇所を立ち入り禁止にするために囲いを設けたり、滑り止めのためにマットを敷いたりした費用のうち、必要・有用と認められたものが支払われます。

緊急措置費用

事故が発生した場合に、損害の発生や拡大を防止するために必要または有益な手段を講じた後に、賠償責任がないことが判明したとき、応急手当や護送、治療等のために要した費用について補償されます。

例えば、損害防止費用と同様に床で滑って転び、ケガをした人に対して治療したり病院に連れて行ったりした場合について、オーナーに損害賠償責任がないことが判明した場合に、救護等に要した費用が補償されます。

訴訟費用・争訟費用

損害賠償請求の解決について、保険会社の同意を得た訴訟費用、弁護士費用等が補償されます。保険会社の同意が必要であること、保険会社によって補償される範囲が異なる場合があることを注意してください。

協力費用

保険会社による損害賠償請求の解決に協力するために、被保険者(オーナー・大家さん)が直接支出した費用について補償されます。

保険金が支払われない場合は?

施設賠償責任保険では補償されない損害もあります。主にどのような場合に保険金が支払われないのか紹介します。ここで紹介する内容以外にも保険金が支払われない場合がありますので、詳細は保険会社にご確認ください。

契約者・被保険者の故意

契約者や被保険者、これらの者の業務を委託された者、使用人、またはこれらの者の法定代理人の故意によって生じた損害に対しては保険金は支払われません。

自然災害による損害(不可抗力の場合)

自然災害により不可抗力で発生した損害についてはオーナー・大家さんに法律上の損害賠償責任が発生しないので施設賠償責任保険の保険金が支払われません。

自然災害による損害であっても、危険を予想できたのに通常するべき備えをしなかったことが原因となる場合は法律上の損害賠償責任が認められる場合があります。この場合については保険金が支払われる可能性があります。

なお、地震、噴火またはこれらによる津波による損害は約款等で保険金を支払わない場合に明記されており、補償対象外です。

建物外部から内部への雨や雪等の吹き込み

建物外部から内部への雨、雪、雹、みぞれ、あられまたは融雪水の侵入または吹き込みに起因する賠償責任については保険金が支払われません。

石綿(アスベスト)やその代替物質の発ガン性

石綿(アスベスト)やその代替物質の発ガン性その他有害な特性に起因する賠償責任に対して保険金は支払われません。古い物件については注意しましょう。

給排水設備の事故による漏水に注意

アパートやマンションでは給排水設備の事故による漏水に注意が必要です。漏水が発生するとその階下の部屋に大きな損害を与えてしまいます。

施設賠償責任保険では漏水による賠償は追加で特約を付けないと補償されないということも多いです。漏水のリスクはどの建物にもあり、高額な家財に損害を与えてしまう可能性もあるため、漏水に対する備えは含められるのなら含めておくのがよいでしょう。

なお、施設賠償責任保険で対応できるのは損害を与えてしまった相手への賠償に関する部分です。給排水設備の修理などその他の部分は補償されませんのでご注意ください。

火災保険の特約として加入できる

施設賠償責任保険は火災保険の特約として契約できる保険会社もあります。「賃貸建物所有者賠償責任特約」など別の名称になっていることもあるのでご注意ください。火災保険は火災や自然災害による損害に備えるために重要な保険なので、多くの方が加入していると思います。特約として一緒に加入できると別で加入する必要がなく手間を省けるでしょう。

保険会社によって補償内容は異なるので、そもそも特約の用意があるか、ある場合はどのような内容かをしっかり確認するようにしましょう。

単独での加入も可能

施設賠償責任保険は火災保険の特約としてだけでなく、単独で加入することもできます。もちろんすべての保険会社で単独での施設賠償責任保険の取り扱いがあるというわけではないので、保険会社に契約可能か確認が必要です。

施設の管理や仕事の遂行に伴う賠償事故を補償するための保険であり、飲食店や製造業などアパート・マンションオーナー以外にも幅広い業種に対応した保険で、それぞれのリスクに応じた特約も用意されています。そのため、パンフレット等ではアパート・マンションオーナーにはあまり関係のない内容も記載されていますが、分からない点は保険会社・代理店にしっかりと確認するようにしましょう。

火災保険で有用な他の特約

火災保険には施設賠償責任特約以外にもアパート・マンションのオーナーにとって有用な特約があります。すべての保険会社にあるわけではありませんが、自分が契約する火災保険にないか確認してみましょう。

家賃収入特約

火災などの事故で賃貸している建物の家賃収入が得られなくなった場合、対象期間内の家賃収入の損失額について補償を受けることができる特約です。火災などからの復旧中は部屋を貸せないので家賃が入ってきません。それを補うことができる特約となっています。

もちろん、いつまでも保険金を受け取れるわけではなく、契約時に定めた期間が限度となります。

家主費用特約

賃貸住宅内で死亡事故(自殺、犯罪死、物的損害を伴う孤独死)が発生したことにより、オーナーが被る家賃収入の損失や原状回復費用、遺品整理等の事故対応費用を補償する特約です。

警察庁の集計によると、2024年1月~3月に警察が取り扱った一人暮らしの遺体(自殺も含む)のうち、自宅で亡くなった人は2万1716人、うち、1万7034人が65歳以上の高齢者でした。3か月間の集計なので、単純に4倍して年間換算した場合、8万6864人が一人暮らしの自宅で亡くなっていることになります。

「自宅」というくくりなのですべてが賃貸の数字ではありませんが、多くの孤独死が発生していること、今後も高齢者の増加が見込まれるのは事実です。孤独死は原状復帰にかかる費用や家賃収入の減少など大きなリスクとなるので、家主費用特約はあると安心な特約といえるでしょう。

家の疑問
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まとめ

アパートやマンションを所有するオーナーにとって施設賠償責任保険は重要な保険です。外壁が剥がれ落ちて通行人にケガをさせたなど、アパートやマンションの管理不備や欠陥で他人に損害を与えてしまった場合には損害賠償責任を負います。もし死亡させてしまった場合には賠償額はとても高額になります。

施設賠償責任保険に加入していれば、こうした事故の賠償に備えることができます。火災保険の特約として付けることもできるので、家賃収入特約や家主費用特約などの他のオーナー向けの特約とあわせて検討してみてはいかがでしょうか。

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