親が徐々に高齢となると同時に、親の家の今後について考え始め、「いつか家を名義変更するとき、何をすればいいのだろう?生前贈与と相続どちらがいいのだろう?」などと考える方もいるかもしれません。今回は、親が居住している家を名義変更する際、具体的に何をどのように行えば良いのかを、生前贈与と相続それぞれの観点から説明していきます。
目次
生前贈与と相続の違いは?
生前贈与とは
生きているうちに、自分の財産を誰かに贈るのが「生前贈与」です。生前贈与では、「渡す側」が、財産を渡す相手を指定できます。ですが、「渡す側」「もらう側」のどちらかが生前贈与を望んでいても、どちらかが拒否をすれば成立しません。また、生前贈与では贈与を受けた人に”贈与税”という税金が課せられます。
相続とは
財産を、亡くなった後に引継ぐことが「相続」です。「もらう側」は、基本的に法律に基づいた親族の順位に従いますが、「渡す側」の遺言書の作成により指定の人に相続させることは可能です。「もらう側」は、相続放棄というかたちで、相続をしない選択も選ぶことができます。仮に相続をする場合は、相続を受けた人に”相続税”という税金が課せられます。
贈与または相続できる内容は?
現金、預貯金、自動車、不動産、借地権、株式・公社債など有価証券、貴金属や宝石、骨董品、美術品など金銭に見積もることができるような財産はほとんど含まれます。今回は、「親の家」いわゆる「不動産」について記述していきます。
名義変更の手順は?
それでは、不動産を名義変更したいとき、それぞれどのような流れになるのでしょうか。贈与時と相続時それぞれで見ていきましょう。
生前贈与
贈与登記の流れと必要書類 | |
---|---|
手順 | 必要な書類 |
1.弁護士や司法書士に依頼 | 委任状 |
2.不動産調査 | 登記謄本や登記事項証明書 |
3.税金を確認 | 固定資産評価証明書 |
4.生前贈与に必要な書類を用意 | 印鑑証明書・住民票・身分証明書 |
5.贈与契約書の作成 | 贈与契約書 |
6.所有権者移転登記の申請 | 登記申請書・これまでの書類 |
生前贈与時に名義を変更することを、贈与登記と言います。贈与登記では、家族の名字が変わっているケースが多いため住民票や戸籍謄本で本人確認が必要です。
相続
相続登記の流れと必要書類 | |
---|---|
手順 | 必要な書類 |
1.弁護士や司法書士に依頼 | 委任状 |
2.現在の名義人を確認する | 登記謄本や登記事項証明書 |
3.相続人を確定させる | 戸籍謄本 |
4.相続登記に必要な書類を用意 | 相続人の住民票・固定資産評価証明書 |
5.遺産分割協議書の作成 | 遺産分割協議書・相続関係説明図 |
6.所有権者移転登記の申請 | 登記申請書・これまでの書類 |
不動産の相続手続きにおいて、もっともポピュラーな方法になるのが、この遺産分割協議による相続登記です。遺言書がない場合で、法律で決まっている相続割合と異なる内容に不動産の名義変更をしたいときは、この方法によることになります。
不動産の贈与時と相続時にかかる税金は?
生前贈与と相続、どちらにしても必ず「税金」がかかってきます。それでは、不動産の贈与時と相続時にそれぞれどのような税金がかかってくるのかを見ていきましょう。以下の表は、不動産に関して支払う税金の概要をまとめています。
贈与時にかかる税金
上の表から、贈与時にかかる3つの税金について記述してきます。
①贈与税
贈与税の計算は、【課税価格 = 贈与財産価額 - 110万円(基礎控除)】と【税額 = 課税価格 × 税率 - 控除額】この2つの式を用いることで算出します。例えば、3,000万円の家を贈与でもらった場合の課税価格は、【3,000万円 - 110万円(基礎控除)=2,890万円】になります。これに掛かってくる税率に関しては、国税庁で決められています。
POINT
②登録免許税
次に登場するのが登録免許税と呼ばれるもので、この不動産は自分の物になりましたと主張(登記)するための費用になります。登録免許税の計算は、【土地 = 固定資産税評価額×2%】と【建物 = 固定資産税評価額×2%】この2つの式を用いることで算出します。固定資産税評価額は、各市町村が個別に算出する不動産の評価額で毎年送られてくる固定資産税の納税通知書や役所にて確認ができます。
③不動産取得税
登録免許税が、「私の不動産であると主張する為の費用」であることに対して、不動産取得税は、「不動産を手に入れたことに対する税金」のようなイメージです。もっと正確に言うと「不動産を所有する権利を取得する費用」であり、登記の有無や有償・無償に関係なく収める都道府県の税金になります。課税価格は不動産の価格の3%で、固定資産評価額によって変わります。この3%というのは時限措置であり、令和6年3月31日までの税率条件となっています。また、条件によっては、土地の固定資産評価額の2分の1を課税価格とする特例措置もあります。また、その他軽減を受けられる場合もあるので税務署に確認しておきましょう。
相続時にかかる税金
①相続税
相続税の計算は、【 基礎控除額 = 3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)】と【 税額 = (相続税評価額-相続税の基礎控除額)×相続税率-控除額】この2つの式を用いることで算出します。相続税の評価額に関しては、各不動産の条件によって大きく異なってくるので、税務署にて確認してみましょう。
②登録免許税
贈与税にも出てきたこの登録免許税ですが、贈与時とは税率が異なるということに注意しましょう。相続時の登録免許税の計算は、【土地 = 固定資産税評価額×0.4%】と【建物 = 固定資産税評価額×0.4%】この2つの式を用いることで算出します。
税金関係以外で見落としがちなポイントは?
ここまで書いた、税金関係の計算や名義変更の手続きは、親の家を名義変更をする中で最も大きな労力と時間を要するところでしょう。しかし、以下の3つのポイントも必ず頭にいれておくようにしましょう。
家の修繕費用を準備
親の家を引き継ぐ場合、築年数が割と経過しているケースは多いのではないでしょうか。よって、修繕費用やリフォーム資金もしっかりと用意しておくことをオススメします。ここで注意したいポイントは、親の名義のままで子がリフォーム資金を出してしまうと、親は子供から増築資金相当額の利益を受けたものとして贈与税が課税されることになります。名義変更をした後は、当然課税はありませんので安心して下さい。
自身の個人情報の変更手続き
親の家を引き継ぎそこに居住する場合は、マイナンバーや住民票、パスポート、金融機関など、諸々の住所変更の手続きが多数必要になります。家の名義変更自体にはそれなりの時間や労力を使うため、この当たり前の部分をつい見落としてしまったり、後回しにした結果忘れてしまうケースもあるので注意しましょう。
火災保険の名義変更
住宅の名義人が変わる際、火災保険の名義変更も必要となります。 火災保険の名義変更の方法は主に2種類あり、ひとつは「契約者を親のままで被保険者を子にする」こと、もうひとつは「契約者も被保険者も子に変更する」という方法です。被保険者とは、火災保険の補償を受け取る人のことを言い、火災保険の対象になる建物の所有者のことです。必ず名義人と同一でなければなりません。
POINT
火災保険の名義変更の方法は?
火災保険の名義変更は必ず行わなければならないことになりますが、意外と見落としがちなポイントでもあります。
名義変更の流れ
上にも書いたように、火災保険の名義変更は契約者と被保険者の2つが対象となります。契約者は保険契約の当事者で保険料を支払う人で、被保険者は火災保険の補償を受ける人(保険金の支払を受ける人)で保険の対象となる建物・家財の所有者です。火災保険の名義変更の詳細な流れは、以下の記事を参考にしてみましょう。
火災保険で名義変更はどうすればいい?
家を相続したときなど火災保険の名義変更が必要な場合があると思います。そのようなときはどのように手続きをすればよいのでしょうか。また、手続きをしないと何か不具合は ...続きを見る
火災保険は見直しも視野に
火災保険は、年毎や各地域の自然災害の発生率や時代のニーズなどを基に、補償内容や保険料、サービスの改正が都度行われています。また、火災保険は家族構成によって補償内容のニーズも変わるものです。親がかけていた火災保険の内容が、本当に今の自分の生活や家族構成にとってベストな内容であるのかを一度しっかりと見直してみることをオススメします。また見直すだけでなく、各保険会社を比較検討してみることで、より自分や家族にとってベストな火災保険に切り替えることもできるかもしれません。火災保険の名義変更のときは、保険の内容についても改めて考えるベストタイミングでもあるといえるでしょう。
火災保険の選び方は重要
できるだけ多くの保険会社・プランを比較する
火災保険は同じ条件であっても保険会社によって支払い方法や保険料が異なります。銀行やハウスメーカーなどで勧められた火災保険以外にも目を向けることで自分に合った保険会社と契約できるかもしれません。
効率よく保険会社を探すには一括見積もりサービスが便利です。一度の情報の入力で複数社から火災保険の見積もりを取ることができます。一社一社個別に見積もりを依頼する手間が省けます。利用は無料なので、ぜひ気軽に利用してみてください。