地震保険の基礎知識

新築でも地震保険は必要?保険料の相場は?

投稿日:2022年11月4日 更新日:

日本に住む以上、地震による被害を受ける可能性はあります。地震はいつ起こるかわかりませんから住宅ローン返済中に被害を受ける可能性もあります。しかし、最近の新築住宅は耐震性も考えて作られていますし、地震保険に加入すると安くない保険料もかかります。新築住宅でも地震保険の加入は必要なのでしょうか?また、加入する場合、保険料の相場はいくらなのでしょうか?

新築だからこそ必要性が高い

地震保険は新築だからこそ加入の必要性が高いといえます。新築住宅を購入する場合、多くの方は住宅ローンを借りると思いますが、地震の被害に遭ったからといって住宅ローンの返済義務がなくなるわけではありません。被災後に建て直すにしても賃貸に住むにしても二重で住宅に関する費用負担がかかることになります。

公的支援に期待する人もいるかもしれませんが、あまり大きな支援を受けることはできません。例えば、「被災者生活再建支援制度」で受けられる支援金は最大でも300万円となっています(被害の程度と住宅の再建方法によって受け取れる額が変わります)。

また、内閣府の防災情報のページによると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は平均して約2500万円なのに対し、公的支援として受給できるのは善意による義援金をあわせても約400万円にとどまりました。また、生活の再建のためには建物を新築するだけでなく家具や家電の購入が必要となります。地震保険でも全額補償されるわけではありませんが、加入していれば生活再建の助けになるでしょう。

公的支援+義援金では約2100万円不足する

マンションの場合は?

マンションの場合でもローン残高が多い場合や被災後に貯蓄だけで生活していくのが厳しい人は加入を検討したほうがよいでしょう。また、マンションの高層階の場合は建物自体は無事でも家財に損害を受ける可能性があります。長周期地震動によって高層ビルが揺れると高層階の方が大きく揺れます。東日本大震災においては首都圏などの高層建物が長周期地震動により大きく長く揺れました。

ちなみに、火災保険でもそうですが、自分で地震保険に加入するのは建物の専有部分と家財です。共用部分については管理組合などで加入します。

マンションで地震
マンションでも地震保険は必要?
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どれくらいの人が地震保険に加入している?

地震保険の世帯加入率は35.0%(2022年)、地震保険の付帯率は69.4%(2022年度)です(出典:損害保険料率算出機構)。

地震保険都道府県別世帯加入率(2022年)

都道府県世帯加入率(%)都道府県世帯加入率(%)
北海道29.4滋 賀35.7
青 森24.6京 都37.2
岩 手27.4大 阪38.4
宮 城53.6兵 庫34.3
秋 田25.6奈 良35.0
山 形26.3和歌山33.3
福 島35.9鳥 取31.5
茨 城32.1島 根21.8
栃 木33.5岡 山30.3
群 馬27.6広 島34.6
埼 玉33.9山 口30.1
千 葉36.0徳 島32.4
東 京37.5香 川36.4
神奈川37.4愛 媛29.9
新 潟26.7高 知28.5
富 山27.0福 岡39.1
石 川30.2佐 賀29.7
福 井35.0長 崎20.9
山 梨36.5熊 本44.2
長 野28.1大 分29.9
岐 阜41.0宮 崎29.4
静 岡32.9鹿児島30.6
愛 知44.7沖 縄17.9
三 重33.0合 計35.0

出典:損害保険料率算出機構統計集_2022年度版地震保険統計

地震保険都道府県別付帯率(2022年度)

都道府県付帯率(%)都道府県付帯率(%)
北海道62.7滋 賀69.2
青 森71.3京 都67.3
岩 手75.5大 阪70.3
宮 城89.3兵 庫69.4
秋 田75.1奈 良74.1
山 形69.6和歌山71.9
福 島80.7鳥 取77.7
茨 城66.3島 根68.6
栃 木73.3岡 山68.4
群 馬66.3広 島75.8
埼 玉65.5山 口69.4
千 葉64.8徳 島76.6
東 京61.9香 川76.1
神奈川63.5愛 媛76.0
新 潟73.0高 知87.5
富 山63.5福 岡76.6
石 川64.7佐 賀63.2
福 井70.8長 崎54.8
山 梨74.2熊 本85.9
長 野68.7大 分75.1
岐 阜79.3宮 崎84.3
静 岡68.3鹿児島84.1
愛 知76.6沖 縄57.6
三 重74.6合 計69.4

出典:損害保険料率算出機構統計集_2022年度版地震保険統計

世帯加入率というのは「全世帯に対してどの程度の世帯が地震保険を契約しているか」計算したもので、付帯率というのは「当該年度に契約された火災保険(住宅物件)のうち、地震保険を付帯している件数の割合」です。つまり、2022年度に契約された火災保険のうち69.4%が地震保険を付帯していたものの、日本の全世帯でみると加入率は35.0%ということになります。

世帯加入率が付帯率と比べて低い要因として、地震保険ではなく共済等で備えている世帯が含まれていないということや、昔は今ほど付帯率も高くなく、そのまま現在も加入していないということが考えられます。例えば、2001年度の地震保険付帯率は33.5%でした。

地震保険の保険料はいくら?

初めに地震保険は新築だからこそ必要性が高いと紹介しましたが、保険料はどれくらいか、他の人がどれくらい支払っているのか気になるところだと思います。実は地震保険の保険料は保険会社によって差はなく、建物の構造と所在地、保険金額、契約年数によって決まります。

日本損害保険協会による地震保険特設サイトで地震保険料のシミュレーションを行うことができますが、以下の計算式をもとに自分で計算することもできます。

保険料=保険金額×基準料率
基準料率=基本料率×(1-割引率)×長期係数

基本料率(2022年10月1日実施の料率改定による)

イ構造:主として鉄骨・コンクリート造建物等の耐火構造
ロ構造:主として木造建物等の非耐火構造

※「耐火建築物」、「準耐火建築物」および「省令準耐火建物」等に該当する場合は「イ構造」となります。

都道府県別の保険金額1000万円あたりの地震保険料は以下の表の通りです。(保険期間1年につき、単位:円)

▼タップすると表が開きます。

+ 北海道・東北

都道府県基本料率
イ構造ロ構造
北海道7,300円11,200円
青森県7,300円11,200円
岩手県7,300円11,200円
宮城県11,600円19,500円
秋田県7,300円11,200円
山形県7,300円11,200円
福島県11,600円19,500円

+ 関東

都道府県基本料率
イ構造ロ構造
茨城県23,000円41,400円
栃木県7,300円11,200円
群馬県7,300円11,200円
埼玉県26,500円41,100円
千葉県27,500円41,100円
東京都27,500円41,100円
神奈川県27,500円41,100円

+ 中部

都道府県基本料率
イ構造ロ構造
新潟県7,300円11,200円
富山県7,300円11,200円
石川県7,300円11,200円
福井県7,300円11,200円
山梨県11,600円19,500円
長野県7,300円11,200円
岐阜県7,300円11,200円
静岡県27,500円41,100円
愛知県11,600円19,500円

+ 関西

都道府県基本料率
イ構造ロ構造
三重県11,600円19,500円
滋賀県7,300円11,200円
京都府7,300円11,200円
大阪府11,600円19,500円
兵庫県7,300円11,200円
奈良県7,300円11,200円
和歌山県11,600円19,500円

+ 中国・四国

都道府県基本料率
イ構造ロ構造
鳥取県7,300円11,200円
島根県7,300円11,200円
岡山県7,300円11,200円
広島県7,300円11,200円
山口県7,300円11,200円
徳島県23,000円41,100円
香川県11,600円19,500円
愛媛県11,600円19,500円
高知県23,000円41,100円

+ 九州・沖縄

都道府県基本料率
イ構造ロ構造
福岡県7,300円11,200円
佐賀県7,300円11,200円
長崎県7,300円11,200円
熊本県7,300円11,200円
大分県7,300円11,200円
宮崎県11,600円19,500円
鹿児島県7,300円11,200円
沖縄県11,600円19,500円

割引率

地震保険には4種類の割引制度が用意されており、対象として当てはまるもののうち最も割引率が高い割引が適用されます。

免震建築物割引

項目内容
対象免震建築物と評価された居住用建物およびこれに収容される家財
割引率50%
確認書類住宅性能評価書等

耐震等級割引

項目内容
対象耐震性能が耐震等級1~3に該当する居住用建物およびこれに収容される家財
割引率耐震等級3:50%
耐震等級2:30%
耐震等級1:10%
確認書類住宅性能評価書、耐震性能評価書等

耐震診断割引

項目内容
対象耐震診断または耐震改修により、建築基準法に定める現行耐震基準に適合していることが確認された居住用建物およびこれに収容される家財
割引率10%
確認書類耐震診断または耐震改修の結果により減税措置の適用を受けるための証明書、国土交通省の定める基準(平成18年国土交通省告示185号)に適合することを証明した書類等

建築年割引

項目内容
対象1981年6月1日(建築基準法に定める現行耐震基準実施日)以後に新築された居住用建物およびこれに収容される家財
割引率10%
確認書類建物登記簿、重要事項説明書(宅地建物取引業者が建物の売買、交換または貸借の相手方等に対して交付)等

※実際の確認書類などの具体的事項については保険会社または代理店にご確認ください。

長期係数

保険期間が1年よりも2年~5年の長期契約の方が保険料が安くなります。その計算に用いる長期係数は以下の通りです(2022年10月1日実施の改定に基づく長期係数)。

保険期間長期係数
2年1.90
3年2.85
4年3.75
5年4.70

保険期間が5年の場合、4.7年分の保険料で地震保険に加入することができます。

地震保険でどれくらい補償される?

実際に被害を受けてしまったときに地震保険でどれくらい補償されるのでしょうか?

地震保険で受け取れる保険金は被害の程度によって決まります。全損なら地震保険の保険金額の100%(時価額が限度)、大半損なら地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度)などのようになっています。

損害の程度補償額
全損地震保険の保険金額の100%(時価額が限度)
大半損地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度)
小半損地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度)
一部損地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度)

損害区分の基準

損害の程度建物の基準家財の基準
全損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合
大半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合
小半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合
一部損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合

注意ポイント

建物における主要構造部とは、土台、柱、壁、屋根等の建築基準法施行令第1条第3号に掲げる構造耐力上主要な部分のことをいいます。生活に必要な部分であっても、塀、垣、エレベーター、給排水設備のみの損害など主要構造部に該当しない部分のみの損害は補償されません。

地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30%~50%の間で決めることになっています。ただし、建物の保険金額の上限は5000万円、家財の保険金額の1000万円です。全損でも最大で50%までしか補償されないことになりますが、これは地震保険が被害の補償ではなく、被害者の生活の安定に寄与することを目的として作られたからです。

保険会社によっては上乗せ補償が用意されている

上で紹介した通り、地震保険で補償されるのは最大でも火災保険の保険金額の50%です。しかし、100%の補償が欲しいという方もいると思います。そうした場合、保険会社によっては火災保険の方で特約として地震保険の上乗せ補償が用意されているので、それを契約することになります。また、少額短期保険業者の中には地震被害を補償するものがあるので、追加で契約して補償を上乗せする方法もあります。

いずれの方法にしても追加で保険料がかかることになるので、いくらかかるのか、貯金などで賄うことはできないかなどを考慮して加入を検討するようにしましょう。

まとめ

地震による被害を受けても住宅ローンの返済の義務は残るため、新築の場合は地震保険の加入の必要性は高いといえるでしょう。大きな被害が発生した場合は公的支援も用意されていますが、現在の制度としては私有財産である住宅の保全は自助努力が求められており、十分な額の支援を受け取れるとはいえません。

被災後に貯蓄などで生活を建て直すことができるのであれば地震保険の必要性は薄いかもしれませんが、そうでないのであれば地震保険の加入を検討しましょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず火災保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。

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