地震保険の基礎知識

地震保険の対象となるのは?

投稿日:2019年3月8日 更新日:

地震による被害を補償してくれる地震保険ですが、地震保険の対象となるものはどのようなものか把握していますか?地震保険はどのようなものが対象となるのか紹介します。火災保険とは違う部分もあるので注意してください。

地震保険の補償対象

地震保険の補償の対象となるのは居住用の建物と居住用建物に収容されている家財一式です。なお、以下のようなものは対象とはなりません。

対象とならないもの

建物

建物自体に損害がなく、門、塀、垣のみに損害があった場合は、保険金の支払いの対象とはなりません。また、居住用の建物が対象なので空き家は家具一式が置いてあるなど「住宅物件」とみなされなければ地震保険に加入することができません。店舗や事業所については、住居部分がある併用住宅ならば地震保険に加入できますが、完全な店舗や事業所は地震保険に加入できません。店舗や事業所は火災保険も住宅向けと別枠ですが、そちらの火災保険に地震危険補償特約などの特約をつけて備えることとなります。

家財

1個(または1組)の価額が30万円を超える貴金属など(いわゆる明記物件)は地震保険の対象とはなりません。また、通貨、有価証券、印紙、切手等や自動車、バイク(原付は除く)についても補償の対象とはなりません。火災保険では明記物件として制限付きながらも補償されたものでも地震保険では補償対象外となるので注意してください。

地震保険で補償を受けられる被害

地震保険は、火災保険では補償されない地震・噴火またはこれらによる津波(以下、地震等と記載)を原因とする火災、損壊、埋没または流出による建物や家財の損害を補償します。

具体的には、以下のような被害で補償を受けられます。

補償を受けられる事例

  • 地震による揺れで外壁や基礎にクラックが生じた
  • 地震による揺れで建物が倒壊した
  • 地震による揺れで食器が割れた
  • 地震による揺れで家具・家電などが倒れて破損した
  • 地震による揺れでストーブが倒れ、火災になった
  • 地震による揺れで液状化現象が起こり、建物が傾いた
  • 地震や火山の噴火で津波が起こって建物が流出した
  • 噴火による溶岩流や噴石、火山灰、爆風によって倒壊・埋没した
  • 噴火による火砕流で建物が燃えた
  • 地震や噴火による土砂崩れで建物が流出や埋没した

ただし、上のような事例でも損害の程度が軽ければ保険金支払いの対象となりません。地震保険では、損害の程度に応じて「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つの区分があり、「一部損」に満たない場合は保険金が支払われません。それぞれの損害区分の基準については以下の表の通りです。

損害の程度建物の基準家財の基準
全損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合
大半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合
小半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合
一部損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合

注意ポイント

なお、建物における主要構造部とは、土台、柱、壁、屋根等の建築基準法施行令第1条第3号に掲げる構造耐力上主要な部分のことをいいます。生活に必要な部分であっても、塀、垣、エレベーター、給排水設備のみの損害など主要構造部に該当しない部分のみの損害は補償されません。

20161231日以前に契約し、契約の更新をしていない場合は以下の区分が適用されます。

損害の程度建物の基準家財の基準
全損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合
半損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上70%未満となった場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上80%未満となった場合
一部損地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・半損に至らない場合地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合

保険金支払いの対象とならない主な場合

地震保険の保険金支払いの対象とならない主な場合を紹介します。以下のような事例では地震保険の保険金の支払の対象にはなりません。

地震等が発生した日の翌日から10日経過後に生じた損害

地震等が発生した日の翌日から10日経過後に生じた損害については、地震等との因果関係がはっきりしなくなるため、保険金が支払われません。

紛失または盗難によって生じた損害

大規模な地震後、避難生活で不在の間を狙って盗難等が起こる場合がありますが、紛失や盗難によって生じた損害は補償の対象外です。

門、塀、垣のみに生じた損害

門、塀、垣は建物の主要構造部に当たらないため、その部分のみに生じた損害については地震保険の対象外となります。

一部損に満たない損害

損害の程度の調査の結果、一部損に至らないと判定された場合は地震保険の支払いの対象とはなりません。

自動車やバイクの損害

自動車やバイク(総排気量125cc超)は家財に含まれないので、地震保険の補償対象にはなりません。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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