放火によって自宅が火災になっても火災保険で補償してもらえるのでしょうか?放火犯が特定されていてもされていなくても基本的に保険金の支払を受けることができます。しかし、火災保険の保険金を受け取れないようなケースもあります。どのような場合に補償を受けられないのかも合わせて説明します。
放火は疑いも含めると出火原因第1位
消防庁「平成29年(1~12月)における火災の状況(確定値)」によると、平成29年における出火原因の第1位は「たばこ」で3,712件(9.4%)、第2位が「放火」で3,528件(9.0%)、第3位が「こんろ」で3,032件(7.7%)、第4位が「たき火」で2,857件(7.3%)、第5位が「放火の疑い」で2,305件(5.9%)です。放火は疑いも含めると出火原因の第1位です。
順位 | 出火原因 | 件数(割合) |
---|---|---|
1 | たばこ | 3,712件(9.4%) |
2 | 放火 | 3,528件(9.0%) |
3 | こんろ | 3,032件(7.7%) |
4 | たき火 | 2,857件(7.3%) |
5 | 放火の疑い | 2,305件(5.9%) |
放火・放火の疑いの件数が多い都道府県は、東京都:912件、神奈川県:584件、埼玉県:473件、大阪府:432件、千葉県:402件の順で、大都市で放火件数が多くなっています。それぞれの都道府県内について、放火・放火の疑いが出火原因に占める割合は、東京都:21.4%、神奈川県:27.3%、埼玉県:23.5%、大阪府:18.6%、千葉県:20.1%です。
放火の被害を受けないために、家の周りに燃えやすいものを置かない、収集日以外にごみを出さないといった予防をしっかりと行うようにしましょう。
放火で補償を受けられないケース
基本的に、放火であっても火災保険で補償を受けることができますが、例外として補償を受けられない場合もあります。どのような場合に補償を受けることができないのでしょうか。
契約者や被保険者の故意
契約者や被保険者が故意に保険の対象の建物に放火した場合、保険金を受け取ることができません。これが認められれば保険金欲しさに自宅に放火する事例が相次いで発生してしまうでしょう。また、このような偽装放火は詐欺罪またはその未遂罪に問われる可能性があります。
契約者や被保険者の家族が放火した場合はどうでしょうか。この場合でも基本的に保険金は支払われません。仮に支払われたとしても、放火の場合、保険会社から放火した人に対して支払った保険金の金額分の請求を行います。実質的には保険金が支払われないのと同じになるでしょう。
重大な過失がある場合
故意でなくても契約者や被保険者の重大な過失がある場合には保険金が支払われません。自宅が放火されるのが明らかに予見・防止できたのにもかかわらず、それを放置したのが明らかな場合です。過去の事例としては以下のようなものがあります。
- 平成22年7月 新潟地裁判決
- 契約者の弟が管理しているものの放火当時はだれも住んでいなかった建物で、放火当日の昼に、寝室中央部で衣類と引き出しが積み重ねられ、相当量の灯油がまかれているという放火の準備行為がされているのを確認していたのにもかかわらず、警察に通報せず、また、建物内の状況を放置した結果、当日夜に火災が発生し、管理者の重大な過失と認められた。
- 平成8年3月 福島地裁判決
- 建物を3か月間空き家のまま放置し、かつ、裏口の鍵がかかっていない状態で、放火犯が鍵のかかっていない裏口から侵入して放火した事例で、重大な過失と認められた。
放火に対しては自己防衛をしっかりと
放火は疑いも含めると出火原因の第1位です。放火の場合は犯人が見つかれば、犯人に対して損害賠償請求ができますが、放火犯は支払い能力を持っていないことが多いです。そのため、自分で火災保険に入って備えることが大切です。
また、火災保険に入っているからといって安心せず、家の周りに燃えやすいものを置かないなどの放火を受けないような対策をきちんと行うことも重要です。危険性を認知しつつも放置し続けた場合は重過失を問われて保険金が支払われなかったり、支払われても調査のために支払いが遅れたりすることも考えられます。放火に対してはしっかりと自己防衛を行うようにしましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。