火災保険の基礎知識

水害による被害に備えるために単独で水災保険に加入できる?

投稿日:2020年10月7日 更新日:

近年、台風や集中豪雨などによる大雨で水害の被害が各地で発生しています。水による住宅災害で床下・床上が浸水したことにより床や壁、家具までにも損害が出てしまったり、大雨による土砂崩れで住宅が壊れてしまったり洪水によって流されてしまうようなリスクはどこで起こるか分かりません。大雨による損害を我が家に受けるかもしれないリスクに備えて水害に備える保険に単独で加入するといったことは可能なのでしょうか。

水災には火災保険の水災補償で備える

台風や大雨などの自然災害被害に備えるために単独で加入する水災保険などといったものはありません。水害の被害で住宅に損害を受けた場合は、火災保険の水災補償で補償を受ける事になります。火災保険の水災補償は、台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、高潮、土砂崩れ、融雪洪水、落石などによる住宅への損害を補償します。

火災保険の水災補償の支払基準

水災補償には一般に下記の支払基準が設けられています。支払基準に満たない場合は保険金は支払われません。

注意ポイント

水災補償の支払基準

  • 建物(家財)の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合
  • 「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」によって損害が生じた場合

なお、床上浸水とは、畳やフローリングなどの居住部分の床を超える浸水のことをいい、地盤面とは、建物が周囲の地面と接する位置のことをいいます。ただし、地盤面について、地下室など床面が地盤面より下にある場合は、その床面をいいます。

保険金について

水害による被害で、火災保険の支払基準を満たした損害を受けた場合は、実損額を受け取る事ができます。ただし、水災補償は保険金の総支払額が甚大になりかねないことから、実損額ではなく損害の程度に応じて保険金を算出する保険商品もあります。この場合、建物の再建や家財の再購入に十分な補償を得られない可能性があります。保険料は抑えられますが、支払われる保険金が十分か考えて契約するようにしましょう。

損害の程度に応じて保険金が支払われる場合の例

損害の程度保険金の算出方法
保険価額の30%以上の損害を受けた場合保険金額(保険価額限度)×損害額/保険価額×70%
床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水保険価額の15%以上30%未満の損害を受けた場合保険金額(保険価額限度)×10%
(上限200万円)
保険価額の15%未満の損害を受けた場合保険金額(保険価額限度)×5%
(上限100万円)

火災保険の補償内容と「水災補償」

火災保険の基本は、住宅火災保険と住宅総合保険でパッケージ化されています。住宅火災保険に契約している場合は水災補償は入っていません。最近の火災保険は、自分で補償内容をある程度自由に選べる保険会社も増えてきていますが水災リスクが高いエリアに住む人は、契約している火災保険に水災補償があるかどうかを確認しておきましょう。

また、水害による被害で住宅と家財どちらも損害を受けた場合の補償は「建物」「家財」と両方の契約がある必要があります。損害を建物と家財の両方に受けていても「建物」の契約のみであれば家財の補償はされません。

住宅火災保険住宅総合保険内容
火災失火・延焼・ボヤなどの火災の損害に対応
落雷落雷による損害に補償
破裂・爆発ガス漏れなどによる破損・爆発の損害を補償
風災・雪災・雹災風災・雪災・雹災の損害を補償
水災台風や豪雨等による洪水などの水災の損害を補償
水漏れ・飛来自動車の飛び込みや排水管の故障による水濡れ損害に対応
騒擾・集団行動等に伴う暴力行為集団行動などに伴う暴力行為・破壊行為による損害を補償
盗難盗難による盗取や損傷・汚損などの損害を補償
不測かつ突発的な事故子どもが室内でボールを投げ、窓ガラスが破損してしまった等の損害に対応

水災補償がない場合はどうしたらいい?

加入している火災保険に水災補償がついていない場合は、今契約している火災保険会社に相談してみましょう。そのまま追加できるかどうかは契約している保険会社の商品によります。契約期間の途中でも追加の保険料を払い込めば後付けできるという場合もありますし、一度解約して契約しなおさなければいけない場合もあります。また、後付け可能な場合でも毎年の始期応当日(保険始期日と同じ月日の日のこと。例えば8月1日が補償の始期日の場合は毎年の8月1日が始期応当日になる。)にしか補償の追加ができないという場合もあります。

保険会社や契約している商品によって対応が可能かは異なりますので、自分が契約している保険会社やその代理店に後付け可能か確認してみるのがよいでしょう。

水害リスクはハザードマックで確認!

自分が住むエリアの水害リスクは、自治体が公表するハザードマップを参考にすることができます。「市区町村名 ハザードマップ」などと検索するか、国土交通省国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」からたどることができます。

ハザードマップは、自然災害が発生した際に被害が想定されるエリアや避難場所が地図上に示されたものです。水災リスクでは、大きな河川に囲まれている場所や土地が低い場所は最大で5m近い浸水が想定されているところなど確認することができます。このような場所ではマンションの2階でも浸水の被害を受ける事も考えられます。自分の住むエリアがどのような土地でどれだけ水災を含めた自然災害のリスクがあるのか確認し備えておくと安心です。

水災補償の重要性

下記グラフは、1985年~2018年にかけて起きた日本における自然災害の発生割合になります。災害の内容をみると台風や洪水が全体の71.8%を占めています。台風は、強い風による風災の被害で住宅に損害を受ける事も心配ですが、大雨や河川の氾濫、土砂災害などで住宅に水災被害を受ける可能性も大きいです。

水災は、住宅火災保険の契約であれば補償対象外となっています。ハザードマップで水災リスクが低い地域だからと水災補償を外している人もいるかもしれません。ハザードマップは100年に一度の大雨を基準として作成されていましたが2015年の水防法改正で1000年に一度に基準が変更されています。しかし、現在、新しい基準でのハザードマップの作成が追い付いていない自治体も多く、ハザードマップの浸水想定区域外でも浸水が発生し被災するケースが確認されています。ハザードマップは、自分の住むエリアの水災リスクを判断するために積極的に活用すべきですが、自然災害は想定外の被害を受ける場合もありますので災害の中でも台風や洪水の被害が多いという事などを踏まえ水災補償の必要性についてしっかり考えておく必要があります。

2019年版「中小企業白書」中小企業庁資料参考にて作成

まとめ

近年、甚大化している水害による被害に備えるために保険での備えを考えている人は現在加入している火災保険を確認してみましょう。自然災害による水災リスクには火災保険の水災補償で備える事ができます。単独で加入することはできず火災保険の補償となります。水災補償が不担保な場合は、ハザードマップなどを参考に水災リスクの必要性について家族と話し合い、必要な場合は保険会社や代理店に水災補償の追加について相談しましょう。

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