近年、雨が降ると広範囲で長期間の集中豪雨となり被害が拡大したり、短期間に局地的なゲリラ豪雨となったりと雨による水害が増えてきています。天気予報で「線状降水帯」が発生という言葉を聞くことも増えました。梅雨前線や線状降水帯、集中豪雨、ゲリラ豪雨、秋雨前線など雨を降らす言葉が天気予報で伝えられることがありますが、どう違うのでしょう。また、集中豪雨への備えと対策について紹介します。
大雨を降らす天気の言葉
日本では、梅雨の影響で6月が最も雨の日数が多い季節です。一般的に6月から9月の降水量が多いと言われていますが、近年では春ごろから局地的な大雨で水による被害が出る地域があったり、10月頃に来た台風の影響で広い地域で大雨による被害があった年もありました。最近では、線状降水帯という言葉をよく聞くようになりましたが、雨を降らす天気の違いについて紹介します。
梅雨前線
6月から7月頃の梅雨の季節に日本の南岸に定常的に発生する停滞前線の一種でぐずついた天気をもたらします。梅雨前線が停滞している時に気象条件によって積乱雲が発生し、発達すると大雨になることがあり、積乱雲の発生が確認できると大雨による被害に備える必要があります。西日本ほど活動が活発で西日本で集中豪雨となる事が多いです。
秋雨前線
9月から10月前半の台風シーズンに日本の南岸沿いに定常的に発生する停滞前線の一種で台風シーズンとも重なるため、前線の活動を刺激して被害を大きくするような大雨になる場合もあります。東日本と北日本での雨量が多くなる傾向にあります。
ゲリラ豪雨
ゲリラ豪雨とは狭い範囲で集中的に激しく降る豪雨です。ゲリラ豪雨は狭い範囲の小さな規模で突発的で散発的に起こります。事前に予測する事が難しいことが特徴です。
ゲリラ豪雨は7月後半から9月前半にかけて発生しやすく暑い夏の日差しで地面が熱せられて地表近くの空気の温度が暖められると上昇気流が発生しやすく、大気の状態が不安定になりやすくなります。不安定な天気で発達した積乱雲が発生すると局地的に短時間で強い雨を降らせるゲリラ豪雨となります。
集中豪雨
集中豪雨は、梅雨前線、秋雨前線、台風などの影響を受けて一定の地域で集中的に長期間に渡って大量の雨が降ることを言います。局地的に降る大雨は河川の氾濫や土砂災害を引き起こしやすく、近年、日本各地で集中豪雨による災害が発生することが増えてきています。
【集中豪雨が起こりやすい天気】
- 梅雨前線や秋雨前線など前線が停滞している時に集中豪雨になりやすい
- 日本に台風が接近している時や上陸した時
- 空が真っ暗になり、雷鳴や稲妻が起こっている時は集中豪雨の前兆であることがある
- 天気予報で「線状降水帯」が発生や大気の状態が不安定などと伝えられている
線状降水帯
大量の雨を降らせ、災害のリスクが高い線状降水帯という言葉を聞くことが増えました。最近よく耳にするようになった線状降水帯は線のように存在する雨雲の様子を指しますが、明確な定義は決まっておらず、一般的に、激しい雨を降らせる積乱雲が集まりを言います。幅20~50㎞・長さ50~200㎞で数時間同じ場所にとどまる性質のある積乱雲を線状降水帯と呼びます。
大気の不安定な状態の時に各地で発生した積乱雲は、風に乗って移動し、新たな積乱雲が次々と線状に発生してくことで線状降水帯となると考えられています。積乱雲は、局地的な範囲で急な大雨、雷、竜巻などの激しい突風、雹(ひょう)などを降らせます。梅雨前線や秋雨戦線など停滞する前線と重なったりすることでより集中的に雨が降るような状況になります。
線状降水帯を事前に予測することは難しく天気予報で「大気の状態が不安定」や「不安定な天気」などの表現があれば大雨を予測し対策や備えを行うことを意識しましょう。
豪雨によって起こる災害と対策
近年、4月、5月のゴールデンウィークの時期から夏場のような暑い日があるなど、1年を通じて気温が高くなる日が増えてきています。特に春から秋頃にかけての天気予報で「線状降水帯の発生」や「大気の状態が不安定」、「不安定な天気」、「天気の急変」などの表現があれば、大雨による対策を意識するようにしましょう。
豪雨に備える事前の対策
- ハザードマップの確認をしておく
- 避難場所を確認しておく
- 溝や雨どいを掃除、住宅のメンテナンス確認
- 浸水に備えて土のうや水のうなどを用意する
- 非常用防災グッツの用意
1.ハザードマップを確認しよう
自分が住む場所に水災のリスクがあるのかは自治体が公表するハザードマップが参考になります。「市区町村名 ハザードマップ」などと検索するか、国土交通省国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」からたどることができます。
中でも国土地理院のハザードマップポータルサイトから確認できる重ねるハザードマップでは、一つの地図上で洪水浸水想定区域や土砂災害リスクなどを重ねあわせて表示できるので、住んでいる地域の自然災害リスクを知るのには大変便利です。詳しい使い方は操作マニュアルで確認できます。
大きな河川に挟まれている場所や土地が低い場所の場合は最大で5m近い浸水が想定されているところもあります。このような場所ではマンションの2階でも浸水の被害を受けることも考えられます。1階でないからといってリスクを軽視しないようにする必要があります。
また、被害想定が0.5m未満であれば水災リスクはないかというと、そうではありません。水災補償の支払基準に「地盤面から45cmを超える浸水」とあるように、0.5mでも十分被害を受ける可能性があります。特に、地下室があるような家では注意が必要です。なお、地下室など地盤面よりも下に床面がある場合は支払基準における地盤面はその床面となります。
2.避難場所の確認
避難場所は各市町村であらかじめ災害時の避難場所が定められています。集中豪雨などで避難指示が出る事も増えてきています。避難場所は災害の種類によって異なる場合もあります。浸水や洪水、土砂災害などの危険により避難指示があるときには速やかに避難場所に移動できるように市町村のホームページや配布されているパンフレットなどで事前に確認しておきましょう。
3.溝や雨どいを掃除、住宅のメンテナンス確認
大雨では住宅の雨漏り被害が増えます。屋根や窓からの雨漏り被害を予防するには日々のメンテナンスが重要です。また、溝や雨どいにゴミなどの詰まりがあると流れが悪くなり、短期間に大量に降る雨を排水する事ができなくなり溢れてしまいます。定期的にゴミなどを取り除き排水がスムーズにできるか確認しておきましょう。
4.浸水に備えて土のうや水のうなどを用意する
住宅を浸水から守るために大雨の予想があれば、浸水が予想される場所に土のうや水のうの設置できるように土のうや水のうの準備をしておきましょう。土のうは各市町村で配布しているところもあります。土のうや水のうは水の侵入を防ぐために有効です。家庭で土嚢を用意する時は吸水ポリマー性の土嚢が便利です。厚さがダンボール1枚程度で薄く重さも100g~200g程度で保管場所に困りません。
5.非常用防災グッズの用意
非常用の防災グッズを用意しておきましょう。避難指示が出た時に速やかに移動できるようにリュックに3日分程度の非常用グッズを用意しておきます。非常用グッズは日ごろからリスト化し使用期限や賞味期限があるものなど定期的に確認しておくとよいでしょう。
【非常用持ち出しグッズ】
- 懐中電灯
- 携帯電話用充電器
- 予備バッテリー、乾電池
- 携帯ラジオ
- ライター、ロウソク
- 常備薬、救急箱
- ヘルメット
- 携帯トイレ
- メガネ、コンタクトレンズ
- ティッシュ、ウエットティッシュ
- タオル
- 衣類
- ブランケット
- 飲料水
- 非常用食品
- 歯ブラシ
- ドライシャンプー
- 軍手
- 貴重品 など
避難をする場合以外にも、災害による断水に備えて飲料水や非常用食品の用意をしておくとよいです。スマートフォンや携帯電話で情報を入手したり、停電に備えて普段から予備バッテリーや電池などを用意しておくと安心です。
水災には火災保険で備えよう
集中的に多くの雨が降ると洪水や冠水、土砂災害の危険性が高くなります。こうした水災で住まいが被害を受けた場合、火災保険の水災補償で補償を受けることができます。災害で住んでいる地域が危険な状態となり、住宅に損害を受けたり、避難場所に避難が必要な状況となっても、落ち着けば損害を受けた住宅に戻り、災害後の生活がスタートします。いち早く元の生活に戻るためにも火災保険の補償で備えておくことも検討しておきましょう。
火災保険の水災補償には一般に以下の支払基準が設けられています。支払基準に満たない場合は保険金は支払われません。水災補償が必要かどうかは住んでいる地域の水災リスクをハザードマップを参考にするなどし、万が一、水の被害や土砂災害にあったときに火災保険の補償がなくても住宅の修理が可能か家族と相談し判断するとよいでしょう。
注意ポイント
水災補償の支払基準
- 建物(家財)の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合
- 「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」によって損害が生じた場合
床上浸水とは、畳やフローリングなどの居住部分の床を超える浸水のことをいい、地盤面とは、建物が周囲の地面と接する位置のことをいいます。地下室などがあり、床面が地盤面よりも下にある場合はその床面を地盤面とします。
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水災補償を追加するなら一括見積もりを利用しよう!
水災補償を追加するという場合、今の保険会社でそのまま追加するのもよいですが、できることなら火災保険一括見積もりサービスを利用して他の保険会社の見積もりも取ってみることをおすすめします。
水災補償をつけると保険料が今よりも高くなります。保険料の負担をできるだけ抑えるためにも複数の保険会社から見積もりを取るのがよいでしょう。一括見積もりサービスを利用すれば、無料で一度に複数の保険会社から見積もりを取ることができるのです。
複数の会社を比較して納得がいく補償内容・保険料となるようにしましょう。