近年、ゲリラ豪雨などが増えたことで落雷による損害もより身近なものとなってしまっています。落雷によってテレビなどの家電が壊れてしまったり、屋根などが破損してしまったりした場合、火災保険で補償を受けることができるのでしょうか。
目次
落雷による故障は、火災保険で補償されます
火災保険では、火災のみならず落雷が原因で、建物や家財に損害が生じた際に補償されます。
落雷が発生すると、雷が直撃した建物だけでなく電化製品などの家電も多いに損害を被ります。建物に直接落雷しなくても雷による異常電流あるいは異常電圧によって、間接的にテレビなどの多くの電化製品を含む家財にも損害が及んでしまいます。
このように、落雷は他の自然災害と違って直接的にも間接的にも被害が及ぶ為、建物はもちろん家財にも被害が及んでしまいますが、火災保険の落雷補償でカバーすることができます。
火災保険の比較ポイント
落雷でテレビが故障しても「家財の補償」が付帯されていないと補償されません。
落雷の補償は火災保険の基本補償に含まれていますが、保険の対象については、「建物のみ」、「家財のみ」、「建物+家財の両方」のパターンから契約時に選択できる項目です。建物の損傷だったら建物の補償、家財の故障だったら家財の補償がそれぞれ付帯されていないと補償されません。
付帯有無によって保険料も変わってきますので、補償内容と保険料も比較しながら火災保険を検討しましょう。
落雷によって家電が補償されるケース
落雷による雷サージが発生することで、間接的に電化製品に損害が発生した場合、火災保険の対象になります。
雷サージとは「雷により異常電圧が流れることで家電等の電化製品が破損すること」をいいます。
雷が直撃しなくても、雷サージによって保険の対象に近くに落雷してその際に生じた異常電流あるいは異常電圧の作用によって、屋内のテレビなどの電化製品が損害を被る場合があります。これらの被害もについても、落雷の発生と保険の対象に生じた損害に相当因果関係が確認できた場合に、火災保険の補償対象となります。

落雷による電化製品の事例
- 家の付近の高電圧に落雷し、屋内のテレビ、パソコン、電話が故障した。
- 雷の過電流により、パソコンが破損した。
- 落雷によりテレビ、電話、電子レンジが壊れた。
- 落雷により室内の監視カメラが故障した。
- 家の煙突に落雷を受けて、エアコンが破損した。
- 屋根に落雷したことで屋根に穴が空き、室内のテレビが故障した。
- 落雷によって壁に穴が空き、屋内の冷蔵庫が破損した。
落雷によって建物が補償されるケース
雷による損害は、保険の対象となる建物に直接落雷しその衝撃により保険の対象が破損、炭化、溶融等の損害を被る場合があります。
このような、落雷が直接の原因となって損傷が生じてる為、火災保険の補償対象になります。
落雷による建物の事例
- 自宅のエコキュートが落雷による過電流の為、破損した。
- 落雷によりエレベーターが故障した。
- 屋根に落雷し屋根に穴が空いた。
- 落雷により避雷針が損傷し、インターホンが故障した。
- 落雷により屋根にのせているソーラーパネルとパワーコンディショナーが破損した。
- 落雷によりアンテナ、配電盤に被害が遭った。
落雷による保険金の支払は意外と多い
落雷による被害を受けて火災保険を使うというとめったにないようなことのように思えるかもしれませんが、実は火災による保険金の支払件数よりも多いのです。
損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況(2024年度)」に掲載の火災保険 住宅物件事故種別支払統計表を一部加工(保険金の記載を削除)したものを以下紹介します。
| 事故種別 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 火災、破裂・爆発 | 7,086 | 6,896 | 7,762 | 7,816 | 7,722 | |
| 落雷 | 26,987 | 28,637 | 36,947 | 37,027 | 43,515 | |
| 自然災害 | 風災・雹災 | 819,484 | 497,798 | 196,418 | 116,448 | 201,304 |
| 雪災 | 16,978 | 9,205 | 78,748 | 87,062 | 56,757 | |
| 水災 | 9,902 | 21,330 | 4,444 | 2,555 | 4,749 | |
| その他 | 水濡れ | 42,058 | 47,499 | 57,693 | 54,298 | 57,098 |
| 水濡れ以外 | 189,165 | 211,821 | 277,111 | 282,835 | 317,929 | |
| 合計 | 1,111,660 | 823,186 | 659,123 | 588,041 | 689,550 | |
※件数は対象年度に発生した事故に対して、当該年度および翌年度に支払った件数を集計したものです。
※「その他(水濡れ以外)」は、盗難、物体の落下、破損・汚損、電気的・機械的事故および地震火災費用等に対する保険金を集計したものです(不明を含みます)。
上表の通り、毎年度落雷による損害で1万件以上の保険金の支払が発生しています。落雷による損害で火災保険を使わないケースも多々あると思われるので、落雷被害は決して他人ごとではないのです。
保険金の請求に必要なものは?
落雷被害で保険金を請求するときに必要なものは、他の補償で火災保険を利用するときと違いはありません。主に必要となるのは、各保険会社指定の保険金請求書、被害の程度がわかる写真や画像データ、修理業者からの見積書や報告書などです。
保険会社から落雷の事実がわかる証明書を求められた場合は、公的な書類は存在しないので、気象庁や気象台の観測情報、電力会社等の公式サイト上で提供されている落雷情報、新聞記事などを提出するとよいでしょう。
パソコンの損害には要注意
落雷によってパソコンが壊れてしまった場合には注意が必要です。パソコン自体の修理費用は補償の対象となりますが、保存されていたデータやソフトウェアは火災保険の補償の対象外です。落雷による故障の場合、データが消失してしまう可能性は十分にあることなので、落雷対策に限ったことではないですが、大切なデータやプログラムなどは別メディアやクラウドサービス等にバックアップを取っておきましょう。
また、保険会社によってはデスクトップ型のパソコンの場合は補償の対象となってもノートパソコンは補償対象外となる場合もあります。利用しているのがノートパソコンの場合は保険会社に補償の対象となるのか事前に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
落雷による損害は火災保険で補償を受けることができます。ただし、保険の対象が「建物」のみの場合や「家財」のみの場合は対象に合わせた損害しか補償されないので注意しましょう。また、パソコン内部のデータやプログラム等は補償対象外なので、大切なデータはしっかりとバックアップをしておきましょう。

著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。


