保険料が高いから地震保険に入るのか迷う、続ける必要があるのか迷うという人も多くいるのではないでしょうか?地震保険に加入する必要はあるのか、加入する場合にお得に入る方法はないのかについて紹介します。
目次
地震保険の保険料は?どこの都道府県が高い?
地震による被害で補償を受けるには地震保険の加入が必要です。しかし、地震保険の保険料は東日本大震災以後4回値上げされており、「保険料が高くて加入を迷う……」という人もいるのではないでしょうか?
どうにか安くしたいという思いはあるでしょうが、地震保険の保険料は都道府県と建物の構造、保険金額、保険期間(契約年数)、耐震等級割引などの割引率によって決まり、どこの保険会社で契約しても保険料は変わりません。都道府県ごとに保険期間が1年の場合の保険金額1000万円あたりの地震保険の保険料を紹介します。
※よくわからないという方は日本損害保険協会による地震保険特設サイトでも保険料を試算できます。
保険料=保険金額×基準料率
基準料率=基本料率×(1-割引率)×長期係数
基本料率(2022年10月1日実施の料率改定による)
イ構造:主として鉄骨・コンクリート造建物等の耐火構造
ロ構造:主として木造建物等※の非耐火構造
※「耐火建築物」、「準耐火建築物」および「省令準耐火建物」等に該当する場合は「イ構造」となります。
保険金額1000万円あたりの地震保険料は以下の表の通りです。(保険期間1年につき、単位:円)
都道府県 | 基本料率 | |
---|---|---|
イ構造 | ロ構造 | |
北海道 | 7,300円 | 11,200円 |
青森県 | 7,300円 | 11,200円 |
岩手県 | 7,300円 | 11,200円 |
宮城県 | 11,600円 | 19,500円 |
秋田県 | 7,300円 | 11,200円 |
山形県 | 7,300円 | 11,200円 |
福島県 | 11,600円 | 19,500円 |
茨城県 | 23,000円 | 41,400円 |
栃木県 | 7,300円 | 11,200円 |
群馬県 | 7,300円 | 11,200円 |
埼玉県 | 26,500円 | 41,100円 |
千葉県 | 27,500円 | 41,100円 |
東京都 | 27,500円 | 41,100円 |
神奈川県 | 27,500円 | 41,100円 |
新潟県 | 7,300円 | 11,200円 |
富山県 | 7,300円 | 11,200円 |
石川県 | 7,300円 | 11,200円 |
福井県 | 7,300円 | 11,200円 |
山梨県 | 11,600円 | 19,500円 |
長野県 | 7,300円 | 11,200円 |
岐阜県 | 7,300円 | 11,200円 |
静岡県 | 27,500円 | 41,100円 |
愛知県 | 11,600円 | 19,500円 |
三重県 | 11,600円 | 19,500円 |
都道府県 | 基本料率 | |
---|---|---|
イ構造 | ロ構造 | |
滋賀県 | 7,300円 | 11,200円 |
京都府 | 7,300円 | 11,200円 |
大阪府 | 11,600円 | 19,500円 |
兵庫県 | 7,300円 | 11,200円 |
奈良県 | 7,300円 | 11,200円 |
和歌山県 | 11,600円 | 19,500円 |
鳥取県 | 7,300円 | 11,200円 |
島根県 | 7,300円 | 11,200円 |
岡山県 | 7,300円 | 11,200円 |
広島県 | 7,300円 | 11,200円 |
山口県 | 7,300円 | 11,200円 |
徳島県 | 23,000円 | 41,100円 |
香川県 | 11,600円 | 19,500円 |
愛媛県 | 11,600円 | 19,500円 |
高知県 | 23,000円 | 41,100円 |
福岡県 | 7,300円 | 11,200円 |
佐賀県 | 7,300円 | 11,200円 |
長崎県 | 7,300円 | 11,200円 |
熊本県 | 7,300円 | 11,200円 |
大分県 | 7,300円 | 11,200円 |
宮崎県 | 11,600円 | 19,500円 |
鹿児島県 | 7,300円 | 11,200円 |
沖縄県 | 11,600円 | 19,500円 |
地震保険料が高い地域は?
上の表の通り、地震保険料は都道府県によって変わります。2022年10月1日以降始期での保険料で最も高いのは千葉県、東京都、神奈川県、静岡県です。各都道府県が1等地、2等地、3等地に分けられており、1等地<2等地<3等地の順に保険料が高くなります。なお、保険料の大幅な値上げを避けるために激変緩和措置が適用されており、同じ等地であっても基本料率に差異があります。
イ構造 | ロ構造 | ||
---|---|---|---|
1等地 | 北海道、青森県、岩手県、秋田県、山形県、栃木県、群馬県、新潟県、富山県、石川県、福井県、長野県、岐阜県、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県 | 7,300円 | 11,200円 |
2等地 | 福島県、宮城県、山梨県、愛知県、三重県、大阪府、和歌山県、香川県、愛媛県、宮崎県、沖縄県 | 11,600円 | 19,500円 |
3等地 | 茨城県、徳島県、高知県 | 23,000円 | 41,400円 |
埼玉県 | 26,500円 | 41,100円 | |
千葉県、東京都、神奈川県、静岡県 | 27,500円 | 41,100円 |
地震保険料を安くするには?
地震保険料はどこの保険会社でも同じですが、最大5年の長期契約をすることや割引制度を活用することで保険料を安くすることができます。
長期係数
地震保険は保険期間が1年よりも2年~5年の長期契約の方が保険料が安くなります。その計算に用いる長期係数は以下の通りです(2022年10月1日実施の改定に基づく長期係数)。
保険期間 | 長期係数 |
---|---|
2年 | 1.90 |
3年 | 2.85 |
4年 | 3.75 |
5年 | 4.70 |
保険期間が5年の場合、4.7年分の保険料で地震保険に加入することができます。
割引制度
地震保険には耐震性能が優れている建物に対して割引が適用されます。割引は以下の4種類があり、重複しての適用はされません。
免震建築物割引
項目 | 内容 |
---|---|
対象 | 免震建築物と評価された居住用建物およびこれに収容される家財 |
割引率 | 50% |
確認書類 | 住宅性能評価書等 |
耐震等級割引
項目 | 内容 |
---|---|
対象 | 耐震性能が耐震等級1~3に該当する居住用建物およびこれに収容される家財 |
割引率 | 耐震等級3:50% 耐震等級2:30% 耐震等級1:10% |
確認書類 | 住宅性能評価書、耐震性能評価書等 |
耐震診断割引
項目 | 内容 |
---|---|
対象 | 耐震診断または耐震改修により、建築基準法に定める現行耐震基準に適合していることが確認された居住用建物およびこれに収容される家財 |
割引率 | 10% |
確認書類 | 耐震診断または耐震改修の結果により減税措置の適用を受けるための証明書、国土交通省の定める基準(平成18年国土交通省告示185号)に適合することを証明した書類等 |
建築年割引
項目 | 内容 |
---|---|
対象 | 1981年6月1日(建築基準法に定める現行耐震基準実施日)以後に新築された居住用建物およびこれに収容される家財 |
割引率 | 10% |
確認書類 | 建物登記簿、重要事項説明書(宅地建物取引業者が建物の売買、交換または貸借の相手方等に対して交付)等 |
※実際の確認書類などの具体的事項については保険会社または代理店にご確認ください。
地震保険に入っておくべき理由
保険料が高くて地震保険に入っておくべき理由について紹介します。加入を迷っている方はこれを参考にして考えてみてください。
公的支援だけでは足りない
地震などの大きな自然災害が発生したときには被災者に対して公的支援がありますが、それだけでは再建に足りずに自分で何らかの備えが必要だというのが現状です。
例えば、公的支援のメインとなるものの一つに被災者生活再建支援制度がありますが、この支援金で支払われるのは最大でも300万円です。この金額では住宅の再建築や再購入には足りないでしょう。
対象世帯
10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等の自然災害により
①住宅が「全壊」した世帯
②住宅が半壊、または住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯
③災害による危険な状態が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続している世帯
④住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯
⑤住宅が半壊し、相当規模の補修を行わなければ居住することが困難な世帯
基礎支援金 (住宅の被害程度) | 加算支援金 (住宅の再建方法) | 計 | ||
---|---|---|---|---|
①全壊 ②解体 ③長期避難 | 100万円 | 建設・購入 | 200万円 | 300万円 |
補修 | 100万円 | 200万円 | ||
賃借(公営住宅を除く) | 50万円 | 150万円 | ||
④大規模半壊 | 50万円 | 建設・購入 | 200万円 | 250万円 |
補修 | 100万円 | 150万円 | ||
賃借(公営住宅を除く) | 50万円 | 100万円 | ||
⑤中規模半壊 | - | 建設・購入 | 100万円 | 100万円 |
補修 | 50万円 | 50万円 | ||
賃借(公営住宅を除く) | 25万円 | 25万円 |
※世帯人数が1人の場合は、各該当欄の金額の3/4の額
実際、内閣府の防災情報のページによると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は平均して約2500万円なのに対し、公的支援として受給できるのは善意による義援金をあわせても約400万円にとどまりました。また、生活の再建のためには建物を新築するだけでなく家具や家電の購入が必要となります。東日本大震災の際には、被災者生活再建支援制度を申請した人の45.5%が家電・家具・寝具の購入など、住宅再建以外に50万円以上の費用をかけています(出典:平成24年度被災者生活再建支援法関連調査報告書)。
さらに、平成28年度被災者生活再建支援法調査報告書によると、平成28年の熊本地震の被災地域を対象としたアンケートでは、被災者生活再建支援制度を不満と感じた理由に対する回答(複数回答)で、76.5%が「金額が少なく必要な経費がまかなえない」と答えており、また、34.6%が「生活の再建に目途がつかない」と答えています。もちろん、「必要な経費がまかなえた」、「生活の再建に目途がついた」として満足している人も多くいますが、反対に金額が足りずに不満と感じた人も多くいるのです。
必要な経費がまかなえた | 生活の再建に目途がついた | 支給されるまでの時間が早かった | 手続が簡単である | 制度の内容がわかりやすい | 申請できる期間が長い | その他 | 無回答 | 回答者数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
585 | 556 | 490 | 446 | 369 | 189 | 38 | 31 | 1,238 |
47.3% | 44.9% | 39.6% | 36.0% | 29.8% | 15.3% | 3.1% | 2.5% | 100.0% |
金額が少なく必要な経費がまかなえない | 支給されるまでの時間がかかった | 手続が複雑である | 生活の再建に目途がつかない | 制度の内容がわかりにくい | 申請できる期間が短い | その他 | 無回答 | 回答者数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
537 | 253 | 244 | 243 | 206 | 84 | 48 | 5 | 702 |
76.5% | 36.0% | 34.8% | 34.6% | 29.3% | 12.0% | 6.8% | 0.7% | 100.0% |
出典:平成28年度被災者生活再建支援法調査 熊本地震の結果のみを抽出
保険会社の利潤がない
民間の保険会社が販売する一般的な保険には、保険料の中に保険会社の利潤が織り込まれています。しかし、地震保険は政府と共同で運営する公共性が高い保険であるため、保険料の中には保険会社の利潤が織り込まれていません。地震保険は利益追求のための商品ではなく、「被災者の生活の安定に寄与する」という目的のために設けられている制度なのです。
地震保険にはどれくらいの人が入っている?
地震保険に加入する人はどれくらいいるのでしょうか?損害保険料率算出機構によると、2022年度の地震保険の付帯率(当該年度に契約された火災保険(住宅物件)契約件数のうち、地震保険を付帯している件数の割合)は69.4%です。2010年度の付帯率は48.1%と50%を割っていましたが、東日本大震災を機に2011年度に53.7%と50%を超え、そこからじりじりと付帯率が上昇していっています。
都道府県別にみると、2022年度に地震保険付帯率が高いのは、高い順に宮城県(89.3%)、高知県(87.5%)、熊本県(85.9%)、宮崎県(84.3%)、鹿児島県(84.1%)です。逆に、低いのは、低い順に長崎県(54.8%)、沖縄県(57.6%)、東京都(61.9%)、北海道(62.7%)、佐賀県(63.2%)です。低い都道府県でも50%以上付帯されています。
付帯率が高い都道府県 | 付帯率が低い都道府県 | ||||
---|---|---|---|---|---|
順位 | 都道府県 | 世帯加入率 | 順位 | 都道府県 | 世帯加入率 |
1 | 宮城県 | 89.3% | 43 | 佐賀県 | 63.2% |
2 | 高知県 | 87.5% | 44 | 北海道 | 62.7% |
3 | 熊本県 | 85.9% | 45 | 東京都 | 61.9% |
4 | 宮崎県 | 84.3% | 46 | 沖縄県 | 57.6% |
5 | 鹿児島県 | 84.1% | 47 | 長崎県 | 53.6% |
地震保険都道府県別付帯率(2022年度)
都道府県 | 付帯率(%) | 都道府県 | 付帯率(%) |
---|---|---|---|
北海道 | 62.7 | 滋 賀 | 69.2 |
青 森 | 71.3 | 京 都 | 67.3 |
岩 手 | 75.5 | 大 阪 | 70.3 |
宮 城 | 89.3 | 兵 庫 | 69.4 |
秋 田 | 75.1 | 奈 良 | 74.1 |
山 形 | 69.6 | 和歌山 | 71.9 |
福 島 | 80.7 | 鳥 取 | 77.7 |
茨 城 | 66.3 | 島 根 | 68.6 |
栃 木 | 73.3 | 岡 山 | 68.4 |
群 馬 | 66.3 | 広 島 | 75.8 |
埼 玉 | 65.5 | 山 口 | 69.4 |
千 葉 | 64.8 | 徳 島 | 76.6 |
東 京 | 61.9 | 香 川 | 76.1 |
神奈川 | 63.5 | 愛 媛 | 76.0 |
新 潟 | 73.0 | 高 知 | 87.5 |
富 山 | 63.5 | 福 岡 | 76.6 |
石 川 | 64.7 | 佐 賀 | 63.2 |
福 井 | 70.8 | 長 崎 | 54.8 |
山 梨 | 74.2 | 熊 本 | 85.9 |
長 野 | 68.7 | 大 分 | 75.1 |
岐 阜 | 79.3 | 宮 崎 | 84.3 |
静 岡 | 68.3 | 鹿児島 | 84.1 |
愛 知 | 76.6 | 沖 縄 | 57.6 |
三 重 | 74.6 | 合 計 | 69.4 |
出典:損害保険料率算出機構統計集_2022年度版地震保険統計
火災保険の方を見直してみよう
紹介した通り、地震保険の保険料はどこの保険会社で加入しても変わりません。しかし、地震保険は火災保険とセットで加入するものであり、火災保険の方は保険会社によって保険料が変わります。そのため、火災保険の方を見直して火災保険と地震保険の合計の保険料を安くするという考え方に切り替えるのがよいでしょう。
とはいえ、火災保険を販売する保険会社はいくつもあり、そこに1社1社見積もりを依頼していくというのは大変です。そこで便利なのが火災保険の一括見積もりサービスです。住宅の情報や希望する補償内容などを入力することで一度に複数社の火災保険の見積もりを取ることができます。各社の見積もり結果を比較して納得のいく保険料・補償内容の火災保険を探しましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。