火災保険の基礎知識

火災保険の「給付金」をもらうためには?給付金はいくらもらえる?

投稿日:2022年12月1日 更新日:

火災保険から「給付金」がもらえると聞いたことがある人もいるかもしれません。火災保険から給付金がもらえるとはどういうことでしょうか?どんな時に支払われるのか、いくら受け取れるのか、何に使えるのかなどについて解説します。注意点もあるので確認しておきましょう。

火災保険の給付金は「保険金」

火災保険は、火災や自然災害、盗難、日常のトラブルなど補償範囲は幅広く住宅に関わるさまざまな損害に備えることができる保険です。火災保険に加入があれば、火災や自然災害などの被害で住宅に損害を受けた時に火災保険から保険金を受け取ることができます。「給付金」とは火災保険の「保険金」のことであり、受けた損害の実損額給付金額(保険金額)を上限に支払われます。

給付金額(保険金額)とは、火災や自然災害などで住宅に損害を受けた時に火災保険から支払われる保険金の限度額です。給付金額(保険金額)は、給付金(保険金)の支払い限度額です。給付金額(保険金額)は火災保険加入時に設定します。

保険金額の設定について▶

火災保険の「給付金」とは

  • 「給付金」は「保険金」のこと
  • 住宅に損害を受けた時に損害の実損額が給付金(保険金)として支払われる
  • 支払われる給付金(保険金)は給付金額(保険金額)が上限

給付金(保険金)はどんな時にもらえる?

火災保険は、「火災」保険という名前から火災にしか使えないと思っている人も時々いますが、火災以外にも風災や水災、雪災などの自然災害で損害を受けた場合にも給付金(保険金)を受け取ることができます。給付金(保険金)の支払いは、火災保険でその損害の契約を行っていることが必要になります。下記は火災保険の補償内容になります。

なお、地震や噴火、それらによる津波を原因とする損害は火災保険では備えることができず、別途地震保険に加入する必要があります。

火災保険の補償内容

損害の種類内容
火災、破裂・爆発、落雷失火・延焼・ボヤなどの火災、ガス漏れなどによる破損・爆発の損害、落雷による損害を補償。
風災・雹災・雪災台風等の強風による損害、雹(ひょう)や霰(あられ)による損害、豪雪の際の雪の重み、雪の落下などによる事故または雪崩により生じた損害を補償。
水災台風、暴風雨、豪雨などによる洪水、高潮、土砂崩れなどにより生じた損害を補償。
水濡れ給排水設備の故障や他人の戸室で生じた事故による水濡れ損害(水漏れ)を補償。
物体の落下・飛来・衝突車の飛び込みや飛び石など建物外部から物体が落下・飛来・衝突したことにより生じた損害を補償。
盗難家財の盗難や盗難に伴う鍵や窓ガラス等の建物の損害を補償。
騒擾・集団行動等に伴う暴力行為集団行動などに伴う暴力行為・破壊行為による損害を補償。
破損・汚損など子どもが室内でボールを投げ、窓ガラスが破損してしまった等、事前に予測して防ぐことができず、突発的な事故によって生じた建物や家財の損害を補償。

よくある火災保険の給付金(保険金)支払いケース

火災や自然災害による損害で実際にどれくらいの件数・金額の給付金(保険金)が支払われているのかを損害保険料率機構「火災保険・地震保険の概況(2023年度版)」より紹介します。

事故種別2020年度2021年度2022年度
件数
(件)
保険金
(百万円)
件数
(件)
保険金
(百万円)
件数
(件)
保険金
(百万円)
火災、破裂・爆発7,76235,8097,81636,9317,96338,134
落雷36,94712,47037,02712,21443,51514,478
風災・雹災196,41894,417116,44847,566218,640108,617
雪災78,74845,72587,06255,09497,18059,206
水災4,44425,1962,55512,3964,79720,510
水濡れ57,69339,20254,29836,54657,06638,850
その他277,11146,363282,83544,820322,90952,111

出典:損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況(2023年度版)」を加工

給付金(保険金)支払いが多い「風災・雹災・雪災」被害

上記の表をみると、「風災・雹災・雪災」補償の給付金(保険金)請求の件数と支払金額が多いことが分かります。火災保険の「風災・雹災・雪災」補償は、台風などの強風で屋根瓦が飛んでしまった、雹(ひょう)で窓ガラスが割れてしまった、降り積もった雪の重みでカーポートがつぶれてしまったというような被害は火災保険の風災・雹災・雪災補償で補償を受け、給付金(保険金)を受け取ることができます。

風災補償で補償される事例

保険の対象
建物家財
台風による強風で屋根瓦が破損した×
強風で飛んできた物が壁にぶつかって破損した×
強風で屋根瓦が飛び、そこから入る雨で電化製品が壊れた
(屋根瓦)

(電化製品)
強風でカーポートが破損した×
強風で飛んできた物が自動車にぶつかって破損した××
強風で軒下に置いてあった自転車が倒れて壊れた×

雹災補償で補償される事例

保険の対象
建物家財
雹で窓ガラスが割れてしまった×
雹で太陽光発電のソーラーパネルが破損した×
雹で雨どいが破損した×

雪災補償で補償される事例

保険の対象
建物家財
雪の重みでカーポートがつぶれた
(※自動車は対象外)
×
雪崩に巻き込まれて自宅が倒壊した
融雪洪水で床上浸水の被害を受けた××

※融雪洪水は水災補償での補償になります。

以外と多い「落雷」被害

雷が落ちる事を「落雷」と言い、雷が鳴っている時には雨が降る事が多くあります。日本で2005年~2017年の間で落雷害は、1,540件発生しており、8月に最も集中しています(気象庁_落雷害の月別件数)。落雷によって屋根に穴が開いてしまった、落雷による急激な電圧の変化が原因で過電流が流れて電化製品が故障してしまったという場合に落雷補償で補償を受け、給付金(保険金)を受け取る事ができます。

落雷補償で補償される事例

保険の対象
建物家財
落雷によって屋根に穴が開いた×
落雷による過電流で電化製品が故障した×
落雷によって感電しやけどした××

近年、増加傾向にある「水災」被害

台風やゲリラ豪雨、大雨による洪水などが原因で床上浸水の被害を受けた場合などには、火災保険の水災補償で補償を受け、給付金(保険金)を受け取ることができます。床下浸水では基本的に補償対象外となっています。また、洪水による被害だけでなく、大雨などによる土砂災害についても水災補償での補償対象となります。

水災補償には一般に下記の支払基準が設けられています。支払基準に満たない場合は給付金(保険金)は支払われません。

支払基準

水災補償の支払基準

  • 建物(家財)の保険価額に対して30%以上の損害を受けた場合
  • 「床上浸水」または「地盤面から45cmを超える浸水」によって損害が生じた場合

なお、床上浸水とは、畳やフローリングなどの居住部分の床を超える浸水のことをいい、地盤面とは、建物が周囲の地面と接する位置のことをいいます。ただし、地盤面について、地下室など床面が地盤面より下にある場合は、その床面をいいます。

水災補償で補償される事例

保険の対象
建物家財
大雨による洪水で床上浸水の被害を受けた×
大雨による土砂崩れの被害を受けた
大雨による洪水で床下浸水の被害を受けた××

給付金(保険金)の使い道は自由?

火災保険の保険金の使い道は自由です。火災保険の契約は「○○というときには××の保険金を支払う」という内容であって、受け取った保険金をどのように使うかまでは決められていません。つまりは受け取った保険金の使い道は自由です。修理費用や再購入費用に充てるのが一般的ですが、娯楽に使ってしまってもそれ自体には問題はありません。何に使ったのか保険会社にレシートを提出したり修理以外のことに使ったからと言って詐欺罪に問われたりすることはないのです。

しかし、一部の保険会社では、2022年10月以降の契約について、建物を対象とした保険金請求の場合には保険の対象を復旧しないと給付金(保険金)が支払われなくなっています。そうした保険会社でも復旧することを確約し、保険会社が認める場合は事前に支払われる場合がありますが、建物の復旧に使うことが前提となりますので注意しましょう。

いずれにしても、住宅の損害で受け取った保険金は修理費用に充てるべきです。火災保険の保険金を請求する際には損害が発生した箇所の修理費用の見積書等を出す必要があります。復旧するために必要な費用として保険会社は保険金をいくら支払うか決めているので受け取った保険金は復旧費用に充てることが至極当然と言えるでしょう。

注意ポイント

2022年10月以降の契約において、一部の保険会社では建物を対象とした保険金請求の場合、保険の対象を復旧しないと保険金が支払われなくなっています。

注意したい「免責金額」について

火災保険には免責金額というものがあります。免責金額とは「自己負担額」のことです。免責とは保険会社が責任を逃れるという意味ですから、保険会社が給付金(保険金)の支払いの責任を逃れる金額になります。損害で火災保険会社に給付金(保険金)の支払いを請求しても自己負担しなければいけない範囲が発生することになります。

免責金額の2つの方式

火災保険の免責金額の設定にはフランチャイズ方式と免責方式(エクセス方式)の2つの方式があります。フランチャイズ方式は、一昔前の火災保険の風災補償に20万円の金額設定で標準的についていました。一定の金額までは全額自己負担で、一定の金額を超えたら全額保険金が支払われる、という方式です。最近の火災保険はもう一方の免責方式が多いです。これは、一定の自己負担額を定めて、損害額からその自己負担額を除いた金額を保険金として支払われる、という方式です。

「フランチャイズ方式」と「免責方式」の具体例

※免責金額は「5万円」で設定

損害額フランチャイズ方式免責方式
損害額3万円保険金:0円
自己負担:3万円
保険金:0円
自己負担:3万円
損害額15万円保険金:0円
自己負担:15万円
保険金:10万円
自己負担:5万円
損害額30万円保険金:30万円
自己負担:0円
保険金:25万円
自己負担:5万円

火災保険の「免責金額」とは

  • 「免責金額」は「自己負担額」で火災保険契約時に設定
  • 免責金額は大きいほど保険料は安くなる

火災保険請求の流れ

火災保険の給付金(保険金)の請求を行う場合、損害箇所の写真を求められることがあります。保険会社としても、どの個所にどの程度の損害が発生したかという証拠もなしに請求のまま給付金(保険金)を支払っていたら詐欺を防ぐこともできないので当然ともいえます。被害を受けた証拠として家全体や損害箇所などの写真を複数枚撮っておきましょう。

給付金(保険金)請求には損害箇所の写真が必要!

給付金(保険金)請求の流れ

step
1
保険会社に連絡

まず、契約する保険会社に損害を受けたことを連絡してください。契約者氏名、保険証券番号、事故内容、被害状況などを伝えることとなります。

step
2
保険会社から必要書類等が送られてくる

保険会社に連絡すると、保険金の請求に必要な書類や案内が送られてきます。内容をしっかりと確認するようにしましょう。

step
3
保険会社に必要書類の提出

保険会社からの案内に従って必要な書類を用意して保険会社に書類を提出しましょう。保険会社指定の保険金請求書、修理費用の見積書、被害の状況がわかる写真などが必要となります。

step
4
保険会社による鑑定人の調査

鑑定人が被害状況の確認・調査を行います。調査結果と契約者からの申請書類などをもとに保険金の支払対象か審査を行い、支払われる保険金の金額が確定します。

step
5
保険金の入金

保険金の金額が確定したら、契約者指定の口座に保険金が支払われます。

給付金(保険金)の請求期限は3年

火災保険の給付金(保険金)の請求期限は一般に3年です。既に損害箇所を直してしまい修繕済みであっても火災や自然災害によって損害を受けたということが立証できるのであれば保険金の請求は可能です。

ただし、3年以内であっても下記の場合は給付金(保険金)が支払われません。

1.経年劣化の場合

経年劣化による損害は火災保険の補償の対象外です。建物の老朽化によって屋根や雨どいが破損したというような場合は給付金(保険金)は支払われません。

2.故意・重大な過失がある場合

契約者や被保険者が故意に火をつけた場合や故意でなくても重大な過失がある場合は保険金は支払われません。

3.地震・噴火・津波が原因の損害の場合

地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする損害については火災保険では補償されません。火災保険とセットで加入する地震保険の契約が必要です。

まとめ

火災保険の給付金とは保険金のことです。火災保険は火災や自然災害、盗難、日常のトラブルなど補償範囲は幅広く住宅に関わるさまざまな損害に備えることができる保険で、住宅に損害を受けた場合に給付金額(保険金額)を上限に給付金(保険金)を受け取ることができます。

給付金(保険金)を受け取るためには、その補償に契約していること、支払い条件をクリアしていることなどが必要になります。給付金(保険金)の使い道は自由となっていますが、一部の保険会社では、2022年10月以降の契約につい建物を対象とした保険金請求の場合には保険の対象を復旧しないと給付金(保険金)が支払われなくなっていたりします。給付金(保険金)が支払われる条件について不安な人は契約する保険会社に確認してみるとよいでしょう。

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  • この記事を書いた人

インズウェブ

「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず火災保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。

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