豪雪地帯にお住まいの方は設置時に特に気を付けることだと思いますが、雪の重みによってカーポートが倒壊してしまうことがあります。普段あまり雪の降らない地域で大雪が降ったときには耐積雪荷重性能の面からも特に注意が必要となります。もし、カーポートが雪の重みで倒壊してしまった場合、保険を使うことはできるのでしょうか?また、雪の重みで倒壊しないように気を付けるべきことについても紹介します。
火災保険で補償されるかも
カーポートが雪の重みによって倒壊してしまったという場合、火災保険の風災・雹災・雪災補償によって補償を受けられる可能性があります。カーポートは建物の補償の対象となるので、家財のみ契約しているという場合や建物の補償に風災・雹災・雪災補償をつけていないという場合などでは補償対象となりません。自分がどのような契約をしているのか分からないという場合は一度保険証券などで確認してみましょう。
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免責金額に注意
火災保険の風災・雹災・雪災補償で注意が必要なものとして免責金額があります。免責金額とは自己負担額のことで、火災保険の免責金額にはフランチャイズ方式と免責方式の2つの方式があります。昔の火災保険でよく設定されていたフランチャイズ方式の場合、損害額が20万円に満たないと保険金を受け取れないので特に注意が必要です。
フランチャイズ方式
フランチャイズ方式の場合、損害額が一定の金額以下の場合は全額自己負担で、それを超えた場合は全額保険金が支払われるという方式です。火災保険では基本的に20万円が基準となっています。つまり、損害額(カーポートの修理費用)が20万円未満の場合は保険金が支払われず、20万円以上となる場合は全額保険金として支払われます。
免責方式(エクセス方式)
免責方式の場合、一定の自己負担額を定めて、損害額からその自己負担額を除いた金額を保険金として支払われるという方式です。自動車保険の車両保険を契約している場合、(1回目と2回目以降の区別はありませんが)それと同じような方式と思えばよいでしょう。設定できる免責金額は保険会社によって差があり、最近は0円、5千円、1万円、3万円、5万円、10万円、20万円などのいくつかの金額が示され、その中から選択するパターンが多いです。免責金額が大きいほど、自己負担額が大きくなりますが保険料は安くなります。
損害額別の保険金の例
損害額 | フランチャイズ方式 (免責金額20万円) | 免責方式 (免責金額3万円) |
---|---|---|
5万円 | 保険金:0円 自己負担:5万円 | 保険金:2万円 自己負担:3万円 |
15万円 | 保険金:0円 自己負担:15万円 | 保険金:12万円 自己負担:3万円 |
25万円 | 保険金:25万円 自己負担:0円 | 保険金:22万円 自己負担:3万円 |
車の損害は自動車保険の車両保険
カーポートが雪の重みで倒壊してしまったという場合、カーポートの下に止めてあった車も損害を受けることが考えられます。しかし、車は火災保険の対象に含まれていないので火災保険では補償されません。車の損害については自動車保険の車両保険の契約があればそこから補償を受けることができます。
このケースで車両保険を使った場合、翌年度の自動車保険の等級が下がってしまいます。1等級ダウンなので交通事故などでの3等級ダウンよりも影響は小さいですが、保険料が上がってしまいますので注意しましょう。また、車両保険には一般型とエコノミー型とがありますが、一般型でもエコノミー型でも補償の対象となりますのでそこは安心してください。
カーポートはどれくらいの積雪に耐えられる?
一般的なカーポートは積雪20cmまでは耐えられるようになっています。そのため、積雪が20cmを超える前に雪下ろしをすることが必要です。多くの地域ではこの性能で十分ですが、雪が多い地域ではこの強度では不足です。地域ごとの積雪量に合わせて積雪50cmまで耐えられるカーポートや豪雪地域用に積雪150cmや200cmなどでも耐えられるものも用意されています。
なお、この積雪量ですが基本的に新雪の重さを基準としています。時間が経つと雪自身の重さで圧縮されたり一度解けて再度凍ったりして同じ積雪量でも重さが増していきます。そのため、雪が積もったらできるだけ早めに雪下ろしをするようにしましょう。
雪の状態 | 新雪 | こしまり雪 | しまり雪 | ざらめ雪 |
---|---|---|---|---|
特徴 | 降ったばかりの雪 | 降り積もって数日たち、やや固くなった雪 | 雪の重みでさらに固くなった雪 | 解けた雪の水分などを含み、大きくざらざらした氷粒状態の雪 |
1㎥の重さ | 約50~150kg | 約150~250kg | 約250~500kg | 約300~500kg |
カーポートの雪対策は?
カーポートが倒壊してしまうとカーポートの下に止めている車にも損害が発生してしまいます。また、カーポート付近に人がいる状況で倒壊すると大変危険です。カーポートが雪の重みで倒壊してしまわないようにはどうしたらよいのか、いくつか対策を紹介します。
早めの雪下ろし
先述しましたが、カーポートの耐積雪量は新雪での積雪量を想定しています。雪の状態によって同じ積雪量でも重量が増していきます。まだ軽い新雪のうちに雪下ろしを済ませてしまいましょう。雪下ろしをする際は以下の点に注意しましょう。
専用の道具を用いる
カーポートの雪下ろしは雪下ろし棒などの専用の道具を用いて行いましょう。スコップなどで行うと屋根に傷がついたり塗料がはがれてしまったりする恐れがあります。雪下ろしに備えてホームセンターなどで入手しておきましょう。
水やお湯をかけない
雪を解かすために水やお湯をかけるのはやめましょう。雪は水分を含むとさらに重くなってしまい、状況を悪化させる恐れがあります。また、凍ってしまうと雪下ろしもしづらくなってしまいます。水やお湯で解かすのではなく、専用の道具で雪下ろしするようにしましょう。
融雪剤を使わない
融雪剤を使うとカーポートや車のさびの原因となる可能性があり、使用はおすすめしません。融雪剤の主な成分は塩化カルシウムですが、これが車やカーポートのさびの原因となってしまいます。カーポートだけでなく車の近くで融雪剤を使うのはできるだけ避け、もし付着してしまった場合はすぐに洗い流すようにしましょう。
カーポートの上に乗らない
基本的にカーポートは人が乗ることは想定して作られていません。すでに雪の重みで負荷がかかっているところに追加で負荷を加えることになるほか、雪面で滑りやすくなっており大変危険です。カーポートの破損やケガの元となりますので、カーポートの上には乗らないようにしましょう。
サポート柱をつける
車の出し入れが楽な片側2本足のカーポートの場合、雪が降る前に柱がない方にサポート柱を取り付けることをおすすめします。屋根を均等に支えられるようになるため、カーポートの強度が増します。足が片方のみにある方が普段は便利ということもあり、着脱式のものが人気です。
設置場所を考える
すでにカーポートを設置した後で変えるのはなかなか難しいですが、これから設置するという場合は屋根から雪が落ちてこない場所に設置するようにしましょう。屋根からの落雪は固まって重みが増したものがある程度まとまって落ちてくることになります。それがカーポートに直撃すると破損の原因となります。カーポートの設置は雪が落ちてくる場所からは離れた場所にするようにしましょう。
まとめ
大雪の影響でカーポートが倒壊してしまったという場合、火災保険で補償を受けられる可能性があります。建物の補償で風災・雹災・雪災補償を含めている必要があるのでご注意ください。また、免責金額の設定と損害額の大きさによっては保険金を受け取れないこともあります。どのような設定になっているのか分からない場合は保険証券を確認するか、契約している保険会社・代理店に問い合わせましょう。最後に、カーポートの倒壊を防ぐには早めの雪下ろしが大切です。愛車を守るためにも面倒がらずに早め早めの対応を心掛けていきましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。