「形あるものはいつか壊れる」とよく言いますが、住宅設備において多くの人が壊れやすいと感じているものには何があるのでしょう。最近の設備は昔より壊れにくく長持ちするようになっていますが、それでも消耗品などは定期的なメンテナンスや交換は必要です。そのような住宅設備が故障してしまった場合の火災保険の利用可否についても紹介します。
目次
故障しやすい住宅設備(住宅トラブル)
住宅に備わっている設備は多岐にわたり、特に近年の住宅事情においては電気的設備が多く設置されています。建物に固定されて簡単に取り外しができない設備の中でよくあるトラブルを紹介します。各設備の寿命の目安が把握できていれば突然、故障して使えなくなってしまう前に交換などの対応を行っておくこともできそうです。また、製品の交換費用なども計画して準備することもできます。
1.トイレ(ウォシュレット)のトラブル
トイレの水が止まらない
トイレタンクがあるタイプのウォシュレットトイレなどでは、トイレタンクの中に「水を流すための部品」と「水をためるための部品」がいくつか設置されています。トイレのトラブルで多い「トイレの水が止まらない」という不具合はこれらの部品が故障しているケースが多くあります。タンクの中の部品は、常に水の中に部品がある状態のため消耗品となり定期的なメンテナンスが必要な部分です。比較的自分で直すことも容易の場合もあるようですが、部品の交換など自分で直すことが難しい場合は業者に依頼しましょう。
水が流れない
「トイレの水が流れない」というトラブルは、いくつかの原因が考えられます。こちらもトイレのタンク内の部品に原因がある場合が多いです。止水栓が止まっている、ボールタップが壊れている、浮き球が壊れているなどの部品に原因があることが考えられます。壊れている箇所が確認出来たらメーカーから部品を調達し、自分で交換して直すことも出来る場合もあります。自分で直すことが難しい場合は業者に依頼しましょう。
トイレのつまり
最近では、商業施設等で見かけることの多いタンクがないタイプのタンクレスのウォシュレットトイレを設置しているという家庭も増えてきました。こちらは、タンクがあるトイレの場合よりも節水効果が高いですが、給水管から直接水を流す仕組みのため強い水圧が必要になります。タンクレスのトイレは、少ない水と強い水圧で流すため、「流す量が多い」「水圧が足りない」「蓄積された汚れ」などでトイレのつまりや配管のつまりが起きやすく水漏れなどのトラブルがタンクがあるタイプより多いようです。
タンクがあるタイプもタンクレスのトイレもトイレがつまる多くの理由は「流す量が多い(大量の紙や便)」もしくは「排水管に問題が起きている」という場合が多いです。流す量が多くつまってしまっている場合は、自分で対処できることも多いですが、排水管に問題がある場合は自分で対処することが難しいことが多いので業者に修理の依頼を行いましょう。
水漏れ
給水管からの水漏れという被害もあります。これはパッキンの老朽化やトイレタンク内部の破損、便器本体の損傷などの原因が考えられます。比較的自分で直すことも容易の場合もあるようですが、部品の交換が必要であったり水漏れの原因を見つけることが困難であったり、自分で直すことが難しい場合は業者に依頼しましょう。
ウォシュレットトイレの交換時期と寿命
ウォシュレットトイレの寿命は大体7年~10年とされています。交換が必要になる時期を目安にトイレのリフォーム代を貯めておく事や、突然のトラブル防止のための定期的なメンテナンスは行っておくと良さそうです。
タンクレスのトイレが交換時期前に故障してしまった場合、一部分だけの修理が難しいため総取り換えとなってしまうケースがあります。新品のウォシュレットトイレ費用と交換費用が必要になり数十万円と費用が高額になることが予想されるのでタンクレスのデメリットを理解し自分で出来る清掃やメンテナンスを心掛けることでトラブルを防ぐことができるでしょう。
2.システムキッチンのトラブル
最近では、シンクやガスコンロおよびIHクッキングヒーター、水栓設備が一体化し備え付けとなっているシステムキッチン型の住宅が増えてきています。中にはビルトインタイプのオーブントースターや食洗器が一体化していたりもします。システムキッチンでよくあるトラブルでは、ガスコンロの火が点かなくなった、IHクッキングヒーターの電源が入らない、蛇口からの水漏れなどがあげられます。キッチン周りの設備の多くも消耗品のため一般的に言われている交換時期を目安にリフォーム代の準備などを考えておくとよいでしょう。
ガスコンロのトラブル:交換目安10年~15年
- 火が点かなくなった
- 火力が変わらない
- 異臭、異音がする
IHクッキングヒーターのトラブル:交換目安10年~15年
- 温まらない
- 電源が入らない
- 温度調節ができない
- 煙が出る
水栓のトラブル:交換目安10年程度
- 蛇口からの水漏れ
- 水栓レバーの動きが悪い
- 異音がする
排水管のトラブル:交換目安10年程度
- 水漏れがある
- 異臭がする
- 流れが悪い
3.浴室設備のトラブル
ユニットバスの耐久年数は、使用状況や製品によって異なりますが、おおよそ15年~20年程度と言われています。住宅の水回り部分として代表的な浴室は清掃などの掃除など日々のケア、メンテナンスを行わないとカビや錆、臭いなどの問題が生じる時期も早くなります。浴室設備の交換を少しでも遅らせるためには日々の清掃やケア、メンテナンスが大切な場所でもあります。
ユニットバスのトラブルには、壁や床に亀裂や歪みが生じており修理が必要なケース、温度調節ができない、シャワーヘッドからの水漏れなど大掛かりな修理やリフォームが必要なトラブルから自分で修理することが可能なトラブルまで様々です。いずれにしても湿度が高い場所であるため換気や使う人の日々のメンテナンス次第が重要な場所です。
また、浴室に備わっている換気扇のメンテナンスも重要です。換気扇はユニットバスを長持ちさせるために重要な設備となります。そのためにも換気扇自体の清掃にも気を配りましょう。換気扇の交換時期はおおよそ8年~10年程度とされています。浴室暖房乾燥付きの換気扇も増えてきていますが、こちらの寿命も10年程度とされています。
火災保険で修理できる?
多くの人が住宅設備の中でトラブルが起きやすいと感じている場所は、水回りの設備に集中しているようです。火災保険は住宅に起こるさまざまな損害を補償する保険です。しかし、どのような場合でも火災保険で修理できるというわけではありません。火災保険で住宅の損害を修理することができるのは、「偶発的な事故や災害によって受けた損害」の場合です。
火災保険で修理できる場合
落雷が原因による障害「落雷補償」
住宅に備わっている建物に固定されて簡単に取り外しができない設備の偶発的な事故や災害による損害は火災保険の「建物」の契約で補償を受けます。水回りの設備であっても落雷で電気的な部分に損害を与えてしまったというような場合には、火災保険の「落雷補償」で補償を受けられる可能性があります。落雷が原因でトイレやキッチンなどの設備に障害が生じているという場合には、補償について保険会社に問い合わせてみましょう。
水漏れ被害「水濡れ補償」
トイレや浴室設備の排水管から水漏れを起して床が水浸しになってしまったというような場合には、水に濡れた床や壁の修理費用や水に浸かって故障してしまった家電の修理費用などは火災保険の「水濡れ補償」で補償を受けられる可能性があります。
水回りの設備の故障により補償となるのは、水漏れによって損害を受けた床や壁、家電などの修理費用だということに注意しましょう。火災保険で修理できない主な場合で説明しますが、水漏れを起している設備の修理費用や排水管の修理費用は補償対象外です。
漏電やショートなどが原因の故障「電気的・機械的事故担保特約」
火災保険には「電気的・機械的事故担保特約」という特約がある保険会社があります。「電気的・機械的事故担保特約」は、建物に固定されていて簡単に取り外しができない設備が対象で、建物が対象の特約です。ウォシュレットトイレやシステムキッチンなどは、建物に固定されている機器になりますので、漏電やショートが原因で故障した場合には「電気的・機械的事故担保特約」で修理できる場合があります。
ただし、「電気的・機械的事故担保特約」は、設備を設置してから10年以内の設備に限定されている保険会社もあります。新築の住宅であれば電気的・機械的事故担保特約への加入を検討する際に、機器が設置されてからの年数を考慮する必要はありませんが、設置から年数がたってからの契約の場合は注意しましょう。
水道管凍結による故障「水道管凍結修理費用保険金」
給排水管設備の故障は火災保険の補償対象外となりますが、保険会社によっては「水道管凍結修理費用保険金」などの費用保険金がある保険会社もあります。水道管凍結修理費用保険金は、建物の専用水道管が凍結によって破損を受け、これを修理するときの費用が実費で支払われます。1事故あたり10万円などの限度額が設けられています。
火災保険で修理できない主な場合
住宅設備の経年劣化や寿命によって起きた交換費用や損害は補償対象外となることを知っておきましょう。火災保険が支払われない主な理由について確認しておきましょう。
経年劣化の場合
損害が経年劣化によって発生したものの場合は補償の対象外です。住宅に備わっている設備にはそれぞれメーカーによって定められた耐久年数・寿命があります。設備の寿命による不具合が起きた場合の交換費用は火災保険で補償されません。自分の家の設備の耐久年数・寿命に合わせて交換費用の準備をしておくことなどを考えておきましょう。
排水管そのものの修理費用は補償されない
既に「水濡れ補償」で説明したことの繰り返しになりますが、水回り設備の排水から水漏れを起している場合、床や壁紙、電化製品などの修理費用や再購入費用は補償の対象となりますが、給排水設備そのものの修理費用は補償の対象外です。
ただし、水道管修理費用保険金などの名前の特約が契約に含まれている場合は、建物の専用水道管が凍結によって損壊して修繕したときに保険金の支払を受けることができます。
また、自分の故意や不注意による損害や経年劣化による損害の場合は補償の対象外となるので自分の責任が及ぶ範囲については適切にメンテナンスを行っておきましょう。
他の人に損害を与えてしまった場合は?
自宅で起こったトラブルで他人に損害を与えてしまい、損害賠償責任を負ったという場合にも火災保険で対応できる場合があります。特に、マンションなどの集合住宅では、自分の部屋の水漏れが他人の部屋にまで及んでしまい損害を与えてしまうようなケースがあります。このような場合は、「個人賠償責任保険」で補償します。
「個人賠償責任保険」は日常生活において、契約者自身またはご家族の方が他人にケガをさせてしまったり他人のものを壊してしまったりして損害賠償責任を負った場合に備える保険です。水漏れで他人の部屋に損害を与えてしまったというようなケース以外にも自宅の電気的設備の故障が他人の住宅に影響し損害を与えてしまったような場合、自転車で人をはねてしまったという場合や飼い犬が他人を噛んでケガをさせてしまったという場合にも利用できます。個人賠償責任保険は火災保険の特約で契約する以外にも自動車保険や傷害保険の特約で既に契約している場合があるため確認してみましょう。
まとめ
特に近年の住宅事情においては電気的設備が多く設置されています。よくあるトラブル事例を参考にすることで日々のメンテナンスもより効率的にできるようになるでしょう。また、少しでも長く使えるようにケア方法にも注意を払う事でメーカーが定めた耐久年数・寿命よりも長く使う事ができるかもしれません。
しかし、それでも形あるものは日々、消耗していきます。たまに、住宅のリフォームや住宅設備の故障の全てを火災保険で修理できると勘違いしている人もいますが、火災保険はあくまでも「偶発的な事故や災害によって受けた損害」に対して補償される保険ですので、補償となる場合を理解しておきましょう。