地震で建物自体にはあまり被害がなくても液状化現象によっても建物が傾いてしまうことがあります。東日本大震災でも震源から遠く離れた千葉県の新浦安駅周辺などでも液状化現象の被害がありました。地震が原因の液状化現象による被害は地震保険で補償されるのでしょうか。
液状化は損害の程度によっては補償対象
地震を原因とする液状化による損害は、地震保険の補償の対象となります。ただし、一定以上の損害が認められる必要があります。東日本大震災後、従来の方法での調査に加えて、建物の傾斜または最大沈下量に着目して被害状況を調査し、程度によって「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の判定がなされる方法が追加されました。一部損に満たない場合は保険金が支払われません。木造建物と鉄骨造建物の液状化による損害の認定基準は以下の通りです。
損害の程度 | 損害状況 | 保険金 | |
---|---|---|---|
傾斜 | 最大沈下量 | ||
全損 | 1度超の場合 | 30cm超の場合 | 地震保険の保険金額の100%(時価額が限度) |
大半損 | 0.8度超1度以下の場合 | 20cm超30cm以下の場合 | 地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度) |
小半損 | 0.5度超0.8度以下の場合 | 15cm超20cm以下の場合 | 地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度) |
一部損 | 0.2度超0.5度以下の場合 | 10cm超15cm以下の場合 | 地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度) |
従来の方法による損害の認定基準(建物の主要構造部の損害に着目した方法)については以下の記事にてご確認ください。
地震保険の基礎知識
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そもそも液状化とは
地震による液状化の被害でも損害の程度によって地震保険の補償対象になることをお伝えしましたが、そもそも液状化現象とは何なのでしょうか、またどのような場所で起こりやすいのでしょうか。
液状化現象とは、地下水位の高い砂の地盤に強い地震動が加わり、地層自体が液体状になる現象のことです。埋立地や干拓地、昔の河道を埋めた土地、砂丘や砂州の間の低地などで発生しやすい現象です。都市化が進み、埋め立てられた地域の広がりで被害が大きくなることが懸念されています。
液状化現象の危険性が高い地域かどうか調べる方法としては、各自治体が作成・公表している液状化危険度マップを確認することが挙げられます。液状化危険度マップは、液状化マップ、液状化ハザードマップ、液状化防災マップなどの名称がつけられている場合もあります。一度調べてみてはいかがでしょうか。
日本で液状化現象が起きた例
日本において液状化現象が発生した事例を紹介します。
- 2018年9月 北海道胆振東部地震
札幌市清田区里塚・北広島市大曲並木地区などで発生しました。 - 2016年4月 熊本地震
阿蘇カルデラ内の黒川沿いにおいて、液状化や噴砂、側方流動が発生しました。 - 2011年3月 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)
数多くの地域で確認されましたが、関東地方においても1都6県96市町村で液状化被害が確認されました。 - 2004年10月 新潟県中越地震
小千谷市や長岡市、与板町、柏崎市など、水田や湖沼を埋め立てた箇所等で液状化の発生が確認されました。 - 1995年1月 兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
神戸市のポートアイランド・六甲アイランドで大規模な液状化現象の発生が確認されました。
液状化が起こりやすい地域の場合は地震保険で備えよう
液状化現象が起こりやすい地域については、震源が遠く離れていて建物にひび割れ等の被害が生じないような地震でも建物に傾きや沈下などの被害が生じる場合があります。地震による液状化の被害は地震保険によって補償を受けることができるので、地震保険の加入も検討しましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。