家を買う場合、火災保険にも加入する人がほとんどだと思います。特に、住宅ローンを借りる場合は火災保険への加入が条件となっているのが基本です。しかし、火災に弱い木造の場合は保険料が高額になりがちです。省令準耐火構造の基準を満たすように建築すれば保険料は安くなるかもしれません。
火災保険料は建物の構造によって変わる
火災保険の保険料を決める要素の一つに建物の構造があります。建物が燃えにくい構造であれば保険料が安く、燃えやすい構造であれば保険料が高くなります。
住宅物件の場合、建物の構造はM構造(マンション構造)、T構造(耐火構造)、H構造(非耐火構造)の3種類に分けられ、M構造が最も保険料が安くH構造が最も高くなります。通常の木造住宅の場合はH構造と分類されて保険料が高くなってしまいますが、省令準耐火構造で建築すればT構造に分類されて保険料が安くなるのです。
また、地震保険についてもイ構造が適用されて、都道府県によっても変わりますが、通常の木造のロ構造に比べて保険料が約40~50%安くなります。
省令準耐火構造とは
木造でも省令準耐火構造であれば保険料が安くなるとお伝えしましたが、省令準耐火構造とはどのようなものなのでしょうか。
省令準耐火構造の住宅とは、建築基準法で定める準耐火構造に準ずる防火性能を持つ構造として、住宅金融支援機構が定める基準に適合する住宅です。具体的には、以下の1~3のいずれかの条件を満たすものです。
- 機構の定める省令準耐火構造の仕様に基づき建設された木造軸組工法の住宅又は枠組壁工法(2×4)住宅
- 省令準耐火構造として機構が承認したプレハブ住宅
- 省令準耐火構造として機構が承認した住宅または工法
詳細については、フラット35のサイト内の説明ページをご確認ください。
省令準耐火構造の住宅の特徴
省令準耐火構造の住宅は通常の木造より火災に強いですが、具体的にはどのような特徴を持っているのでしょうか?
隣家などから火をもらわない(外部からの延焼防止)
隣家などからの延焼を防ぐために、屋根や外壁、軒裏を耐火性の高い構造となっています。屋根は瓦やスレートなど不燃材料で葺く、外壁は防火サイディング壁にするといったことが行われます。
火災が発生しても一定時間部屋から火を出さない(各室防火)
万が一部屋から火災が発生しても、簡単に燃え広がらないように一定時間部屋から火を出さない構造となっています。各室を区画する構造となっているのに加えて、室内の内側(壁・天井)には火に強い石膏ボードを使用します。
部屋から火が出ても延焼を遅らせる(他室への延焼遅延)
火が壁の内側や天井裏を伝わって燃え広がりにくくするために、壁や天井内部の要所(壁の内部などの部材同士が接触している部分)に木材や断熱材のファイヤーストップ材が設けられています。
省令準耐火構造の住宅にデメリットはある?
火災に強く、火災保険料が安くなる省令準耐火構造の住宅ですが、何かデメリットはあるのでしょうか。考えられるのはコスト面とデザイン面です。
省令準耐火構造として認められるには、様々な燃焼防止の工夫が必要となります。そのための追加工事として費用が多くかかります。場合によっては火災保険料が下がるよりも追加工事費の方が高くなってしまうこともあり得ます。その場合は、通常よりも火災に強いという面をどれだけのメリットとして考えるかになってくるでしょう。
また、省令準耐火構造として認められるように設計するとデザインの自由度が下がります。部屋の各室が区切られている必要があり、内壁の素材なども限られてしまいます。
まとめ
木造であっても省令準耐火構造の住宅であれば、火災保険・地震保険の保険料を安くすることができます。追加工事費用の発生やデザイン面の制約もありますが、金額面での判断だけでなく火災に強いというメリットも考えてみるとよいでしょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。