転勤で家を空けることになった、実家を相続したけどだれも住む予定はないなど理由は様々ですが、空き家を所有することになった方もいるかと思います。空き家を所有することになった場合、火災保険には加入するべきなのでしょうか?
目次
空き家に考えられるリスク
空き家であれば火を使わないから火災保険は必要ない、という考えは誤りです。空き家は人が住んでいる住宅よりも管理が徹底されていないことが多く、放火の被害に遭いやすいです。また、放火されなくても、電気系統からの火災や自然災害の被害に遭う可能性もあります。そのような場合に火災保険に入っていなければ保険金を得ることができません。
また、空き家の所有者が第三者に対して賠償責任を負う場合も考えられます。屋根の一部がはがれて近隣の住宅に被害を与えたり、塀が倒れて道路をふさいでしまったりした場合です。そのような場合に備えて保険に加入する必要はあります。
放火のリスク
チラシがポストから溢れているなど、管理が行き届いていないような空き家では、放火犯に狙われやすいというリスクがあります。人が住んでいない住宅だという事が外から判断しやすくなっているだけでなく、火をつけやすいもの(チラシなど)がその場に散乱しているような状態では放火しやすい状況になっています。
そのため、一般の住宅より放火の被害に遭いやすいという側面があり、火災保険で備えておく必要性が高いです。また、放火の被害に遭わないように定期的な管理で放火犯に狙われにくくしておくことが重要です。
電気系統や隣家からの火災リスク
空き家でも漏電などにより火災が発生してしまう事があります。自分の家が火元で隣家へ延焼した場合、失火責任法により損害賠償責任は負いませんが、隣家に見舞金の支払を希望する場合などを考えると数百万円の費用がかかってしまう場合もあります。
また、隣家からの延焼(もらい火)による火災の心配もあります。隣家からの延焼火災の場合、同じく、失火責任法により火元に損害賠償請求をすることはできません。ですから空き家の持ち主が自分で備えるしかなく、火事による人的被害がなかったとしても火災後の後始末費用は自分で負担しなければいけません。
自然災害による損害リスク
一時的に空き家にしている家などでは、空き家となっている時に自然災害による損害を受けてしまうリスクも考えておく必要があります。自然災害で受けた住宅への損害は、火災保険に加入があれば火災保険で補償を受ける事ができます。転勤などによる一時的な空き家で再び住む予定がある人などは火災保険で自然災害リスクにも備えておきましょう。
賠償責任を負うリスク
空き家では建物の老朽化による倒壊や飛散で隣家や通行人などに損害を与えてしまうなど、所有者が第三者に損害賠償責任を負ってしまうリスクもあります。そのような場合にも火災保険の特約として契約できる個人賠償責任保険(住宅物件の場合)や施設賠償責任保険(一般物件の場合)で備えておくことが大切です。
空き家に火災保険はかけられる?
空き家に火災保険をかけることを決めたとして、そもそも火災保険に加入できるのかという問題があります。空き家を引受していない保険会社や共済もありますが、建物が廃屋のようになっているなど管理されていない状態でなければ「一般物件」として契約が可能です。
「一般物件」として、とはどういうことでしょうか?火災保険は建物の用途によって保険料が変わります。用途によって事故のリスクが異なるからです。個人の建物では住居専用として使用する「住宅物件」と店舗や事務所などの住居以外に使用する「一般物件」に大別されます。空き家は居住用の建物とみなされず、店舗や事務所と同じ一般物件として契約するのが一般的です。この場合、住宅物件より保険料が高くなります。
空き家であっても一般物件ではなく住宅物件として契約できる場合もあります。普段は空き家だけど、家財が備え付けてあり定期的に宿泊しているなどの場合は住宅物件として契約できる場合があります。また、転勤で一時的に空き家になっているが、戻ってきて引き続き居住する予定があるという場合も同様です。いずれにせよ保険会社による判断となりますので、保険会社や代理店に相談してみるとよいでしょう。
空き家は「住宅物件」としての火災保険加入が難しくても「一般物件」として火災保険契約が可能です。その場合、保険料が住宅物件で契約するより高くなります。使用用途により、保険会社によって対応が異なりますので、保険会社や代理店に確認しましょう。
地震保険には加入できる?
日本は地震が多く、東日本大震災以後は地震保険の加入率も上昇してきています。地震を原因とする建物・家財への損害は火災保険だけでは補償されず、地震保険への加入が必要なため、空き家にも地震保険をかけたいという人がいると思います。それでは地震保険に加入することができるのでしょうか?
空き家で地震保険に加入できるかは、一般物件としての契約か住宅物件としての契約かによって異なります。一般物件の場合は地震保険に加入することができず、住宅物件の場合は地震保険に加入できます。なぜなら、地震保険は生活の再建を助けることを目的とするものだからです。
個人賠償責任保険や施設賠償責任保険も検討しよう
空き家において、屋根の一部がはがれて近隣の住宅に被害を与えるなどで損害賠償責任を負う可能性があること、そのリスクには、個人賠償責任保険(住宅物件の場合)や施設賠償責任保険(一般物件の場合)で備えることができるということは既に説明しました。他人の家を壊してしまった場合や人にけがをさせてしまった場合は損害賠償額が高額で預貯金では支払いきれない可能性もあります。万が一に備えて火災保険に個人賠償責任保険や施設賠償責任保険もプラスして契約することも検討しましょう。
空き家の火災保険(まとめ)
田舎で資産価値がある物件ではないから火災保険はいらないと考える方も、賠償責任を負う可能性がある、火災や自然災害等で倒壊しても撤去費用がかかるということを認識して改めて火災保険への加入を検討してください。
【空き家の火災保険】
分類 | 住宅物件 | 一般物件 |
---|---|---|
建物の使用状況 | ・一時的な空き家で、将来、居住する予定 ・別荘などで季節的に住居として使用されている | ・住む予定がない空き家 |
保険の種類 | 住宅火災保険/住宅総合保険 | 普通火災保険/店舗総合保険 |
地震保険 | 加入できる | 加入できない |
賠償責任保険 | 個人賠償責任保険 | 施設賠償責任保険 |
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。