火災や自然災害に備えるために加入する火災保険ですが、マンションの火災保険の場合は燐家や近くの部屋で発生した火災の影響を受ける可能性などマンションならではのリスクを考えなくてはいけません。そのために必要な補償や特約を紹介します。
目次
マンションの火災保険の必要性
マンションの場合、自分以外の多くの人が住んでいる集合住宅だからこそ様々なリスクと常に隣り合わせです。
部屋が両隣・上下と隣接しているからこそ、万一火事が発生した場合被害を受けたり、逆に漏水などで階下へ被害を与えてしまったりと、マンションならではの賠償のリスクは戸建て以上に備えておく必要があります。
もらい火のリスク
交通事故になどによって損害が生じた場合は、加害者に損害賠償責任が発生するため、損害賠償請求をすることが可能です。
しかし、失火(過失による火事)の場合は、失火者責任法が適用され、失火者に重大な過失がない限り損害賠償責任が発生しないため、失火者には損害賠償請求はできないことになります。
したがって、隣家からもらい火を受けても、燃えてしまった自分が住んでいる専有部分や、消火作業によって濡れてしまった家財の損害については、全て自己負担となります。
もらい火のリスクに備えるために、専有部分や家財に火災保険を付けておきましょう。
火災は年々増えています!
消防庁によると、令和5年の火災原因の1位はたばこ、2位は焚火、3位はコンロです。
これらのような失火原因に繋がることに注意しなければいけませんが、火災保険でも備えておきましょう。
出典:総務省消防庁 消防統計(火災統計)
漏水のリスク
マンションならではのリスクとして、築年数経過による老朽化した給排水管設備からの漏水事故があります。
キッチン下や洗面所の排水管や洗濯機から漏水すると、床、壁、家財などが水浸しになったり、階下にも損害が生じることがあります。
床や壁の建物自体の損害は火災保険の専有部分、家財の水濡れは家財の火災保険、階下への損害は個人賠償責任特約で備えておく必要があります。
漏水事故は増えています!
漏水に関する事故は2021年は落ち着いてはいるものの全体的には増加傾向です。
階下にも損害が影響するような漏水の原因は、排水管や洗濯機の他に、給湯管やトイレのロータンクなどが挙げられます。
マンションの場合は、集合住宅だからこそ自身の補償だけでなく賠償責任のリスクについても検討しておきましょう。
出典:損害保険料率算定機構 「2023年度 火災保険・地震保険の概況」
おすすめの特約
上記で挙げた「もらい火」と「漏水」の際に使用できるおすすめの特約を3つ紹介します。
類焼損害特約
万が一失火により燐家に延焼してしまった場合は、重大な過失がない限り失火責任法が適用され燐家への損害賠償は問われません。
しかし、法的な賠償責任がなくても、自身が原因で隣の人に大変な迷惑をかけてしまったのですから、道義的な責任は果たしておきたいところです。
そういった場合、類焼損害特約が付帯されていれば、法律上の損賠償責任がなくても燐の住宅や家財を補償することが可能です。きちんと損害賠償責任も果たすことで、お隣との関係性も維持できるのではないでしょうか。
原因調査費用特約
マンションの一室(専有部分)からエントランス(共有部分)に水漏れが発生した場合、どこが金銭の負担をするのかを検討する為に原因箇所を特定する必要があります。
その原因調査の為にかかる費用が補償されます。この特約は水濡れによる損害発生有無に関わらず、養生、清掃・片づけ、原因調査費用、天井開口費用、床下開口費用、給水管交換費用などが補償の対象となります。
個人賠償責任特約
偶然の事故によって他人の生命や身体を害したり、物を壊してしまった際に、その法律上の損害賠償責任を補てんする特約です。
階下への漏水はマンションでよくある事故ですが、階下への損害が生じた場合は個人賠償責任特約が必要となります。その他にも、近年増えつつある自転車や動物に起因する事故など日常生活上の様々なシーンで使用できます。
補償範囲はどこまで?
マンションの火災保険は、一戸建ての火災保険と異なり、補償範囲が「専有部分」と「共有部分」に分かれています。
みんなのスペースである「共有部分」はマンションの管理組合が加入する火災保険の補償範囲であり、居住者が単独で所有している「専有部分」はその部屋の居住者が加入する火災保険の補償範囲となります。
例えば、マンションで火災が発生し、共有部である外壁やバルコニーが焼損、汚損を被った場合は、管理組合が加入している火災保険で補償することとなります。
共有部分がどんな内容の火災保険に加入しているのかは、管理組合に確認してみましょう。
「専有部分」と「共有部分」
では、マンション居住者と管理組合がそれぞれ加入する「専有部分」と「共有部分」はどのように分かれているのでしょうか。
「専有部分」と「共有部分」の範囲は、各マンションで定められている管理規約に記載されており、それぞれの所有区分を確認することができます。一般的には次のように区分されています。
専有部分とは
室内の住戸部分を指します。
天井、壁、床、枝管、玄関の内側、お風呂、トイレ、キッチン、クローゼットや押し入れなどの収納スペースが該当します。
共有部分とは
主にマンション建物本体部分であり、専有部分以外に属する箇所を指します。
駐車場、管理人室、集会室、立体駐車場、給水塔、配電室、玄関ホール、廊下、階段、エレベーターホール、共用トイレ、バルコニー、内外壁、湯沸室、パイプスペース(本管)、フェンスなどが該当します。
専有使用権があるが共有部分として区分されるのは、窓枠、ガラス、サッシ、網戸、ベランダ、玄関の外側などがあります。
家財の補償
火災保険の家財の対象は家に固定されていない家財や家具が対象となります。
マンションの事故の中でも、漏水事故は保険金支払い事例が多い事故です。漏水した場合、室内の家財も水浸しになることもありますので、漏水のリスクに備えておきたい場合は家財もセットで加入しておきましょう。
また、隣家で火災があり自分の家に延焼はなかったものの、消火活動もしくはスプリンクラーが稼働したことで家財も水浸しなる可能性もありますので、家財の補償も検討しておきましょう。
必要な補償の選び方
マンションの火災保険は、火災、爆発、盗難、台風、落雷などの基本の補償にプラスして、水災や突発的な事故(破損・汚損)などのリスクを自由に組み合わせて備えることができます。
オールリスクに備えられる補償内容であれば安心ですが、補償内容が手厚い分保険料は上がってしまいますので、必要な補償だけを検討するようにしましょう。
例えば、水災リスクの低いマンションの高層階の場合、洪水のリスクは低いので、水災補償は外すことで保険料を節約することができます。
ハザードマップ
水災補償を検討する際のツールとしてハザードマップがあります。
まず前提として、水災補償は洪水などの水災によって地盤面から45cmを超えて床上浸水した場合に、お支払いの対象となります。
ハザードマップでは洪水による浸水がどのくらいになるかの予測を確認することができます。ハザードエリアの場合は水災補償を付帯しておきましょう。
また、自然災害で予測される水害についての情報が記されているため、土地を購入する際のツールとしても使用すると良いでしょう。
水災等地
水災補償を検討する際には、居住地の水災等地を確認しておきましょう。
水災等地とは、2024年10月の火災保険改定に伴い、いままでは全国で一律であった水災保険料が地域ごとのリスクに応じて市区町村ごとに5単位で5分割されることとなりました。
水災等地は損害保険料率算出機構の水災等地検索にて、お住まいの居住地を選択するだけで確認することが出来ます。
水災リスクが一番低い「1」から一番高い「5」に区分されているので、「5」だった場合は水災補償を付帯して備えておきましょう。