地震保険の基礎知識

地震保険はいらない?地震保険が必要な人とは?

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地震大国である日本ですが、「地震保険はいらない」「地震保険をやめた」というような声を聴くことがあります。どのような理由から「地震保険はいらない」と言っているのでしょうか?また、逆に地震保険の必要性が高い人とはどのような人なのでしょうか?

地震保険の基礎知識

地震保険の必要性を考える前提として、まずは地震保険に関する基礎知識を整理しておきましょう。

何が被害を受けたら支払われるのか

地震保険の対象となるのは居住用の建物と居住用の建物に収容されている家財です。工場や店舗などは地震保険の対象となりません。また、以下のものについても地震保険では対象となりません。

  • 1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石・骨とう
  • 通貨
  • 有価証券(小切手、株券、商品券等)
  • 預貯金証書
  • 印紙
  • 切手

何による被害に対して支払われるのか

地震保険は地震・噴火・津波を原因とする火災・損壊・埋没または流失による被害を補償する保険です。例えば、以下のような被害で支払い基準に達した場合、保険金が支払われます。

  • 地震による揺れで外壁や基礎にクラックが生じた
  • 地震による揺れで建物が倒壊した
  • 地震による揺れで家具・家電が倒れて破損した
  • 地震による揺れでストーブが倒れ、火災になった
  • 地震で津波が起こって建物が流れた
  • 噴火による噴石や火山灰などで建物が倒壊・埋没した
  • 噴火による火砕流で建物が燃えた

どれくらいの保険金が支払われるのか

地震保険では建物や家財の被害の程度(全損、大半損、小半損、一部損)に応じて、契約時に設定した地震保険金額の〇%という形で保険金が支払われます。損害の程度が一部損に満たない場合は保険金は支払われません。

地震保険金額というのは地震保険の保険金の上限額です。地震保険金額は火災保険の保険金額の30%~50%の間で設定することになっています。ただし、建物は5000万円、家財は1000万円が限度です。

支払われる保険金
地震保険の保険金額の100%
(時価額が限度)
建物の基準家財の基準
地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、
または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合
地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合
支払われる保険金
地震保険の保険金額の60%
(時価額の60%が限度)
建物の基準家財の基準
地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、
または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合
地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合
支払われる保険金
地震保険の保険金額の30%
(時価額の30%が限度)
建物の基準家財の基準
地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、
または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合
地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合
支払われる保険金
地震保険の保険金額の5%
(時価額の5%が限度)
建物の基準家財の基準
地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、
または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合
地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合

地震保険が「いらない」と言われる理由

地震保険を「いらない」と感じる人はどのような理由からそう感じているのか、その理由を紹介します。

被害の全額が補償されるわけではない

上でも紹介しましたが、地震保険で支払われる保険金は被害の程度に応じて決められた割合の額です。被害の実損額が支払われるわけではありません。

また、全損の場合であっても支払われるのは地震保険の保険金額の100%です。地震保険の保険金額は火災保険の保険金額(通常、建物や家財の評価額と同額)の50%までしか設定できないので、最大でも建物や家財の50%までしか補償されないことになります。

保険料が高額である

地震保険の保険料が高いということも地震保険がいらないと言われる理由の一つになっています。保険料は建物の構造や都道府県などによって異なりますが、例えば、東京都で木造の建物の場合、地震保険の保険金額100万円あたり4,110円/年の保険料となります。

保険料の割引の適用前かつ最も高い分類での保険料例ではありますが、リスクの高い地域では保険料負担が重くなり、結果として地震保険がいらないという意見につながっています。

地震保険の保険料については日本損害保険協会の地震保険特設サイトでシミュレーションすることができます。

住宅に耐震・免震などの対策を施している

最新の耐震・免震性能を持った住宅の場合、比較的大きな震災があっても被害がそれほど大きくならないことが考えられます。一部損にとどまる場合、支払われる保険金は地震保険金額の5%なので保険料が高額であることと合わせて地震保険がいらないという意見につながっていると考えられます。

それでも地震保険が必要な理由

地震保険がいらないという意見もありますが、それでも地震保険は多くの人に必要とされており、世帯加入率も火災保険への付帯率も年々上昇しています。地震保険が必要とされる理由としては以下のものがあります。

地震の揺れだけでなく火災や津波への備えが必要

地震による被害は揺れによる直接的なものだけではなく、地震が原因で発生した火災や津波によるものもあります。これらによる被害についても地震保険での補償となり、火災保険の火災補償や水災補償では補償されません。

住宅が優れた耐震性能を持っていても地震による火災や津波に巻き込まれて全損するということは十分に考えられます。そうした被害に備えるためには地震保険への加入が必要となるのです。

公的支援や義援金だけでは不足する

地震等の大きな自然災害の被害にあった場合の代表的な公的支援として、被災者生活再建支援制度というものがあります。しかし、この支援制度で支払われる支援金は最大でも300万円です。この金額だけでは住宅の再建築や再購入には不足します。

基礎支援金
(住宅の被害程度)
加算支援金
(住宅の再建方法)
①全壊
②解体
③長期避難
100万円建設・購入200万円300万円
補修100万円200万円
賃借(公営住宅を除く)50万円150万円
④大規模半壊50万円建設・購入200万円250万円
補修100万円150万円
賃借(公営住宅を除く)50万円100万円
⑤中規模半壊建設・購入100万円100万円
補修50万円50万円
賃借(公営住宅を除く)25万円25万円

※世帯人数が1人の場合は、各該当欄の金額の3/4の額

実際、内閣府の防災情報のページによると、東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は平均して約2500万円なのに対し、公的支援として受給できるのは善意による義援金をあわせても約400万円にとどまっています。

公的支援+義援金では約2100万円不足する

被害を受けても住宅ローンがなくなるわけではない

地震によって住宅を失ったとしても住宅ローンの返済義務がなくなるわけではありません。災害の規模が大きければ何らかの救済が行われる可能性もありますが、私有財産である住宅の保全は自助努力で行われるのが原則であり、返済が自動的に免除されるということはありません。地震に対する備えの基本は地震保険となります。

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地震保険の必要性の高い人、低い人

ここまでの内容を踏まえ、地震保険の必要性が高い人、低い人はどのような人なのかをまとめます。

必要性の高い人

  • 住宅ローンがまだ残っている人
  • 被災後に生活を立て直すだけの貯えがない人
  • 地震や噴火、津波、土砂崩れのリスクが高い地域に住む人
  • 火災の延焼のリスクが高い地域に住む人

住宅ローンがまだ残っている、被災後の生活の再建が難しいなど経済的なリスクがある人は地震保険の必要性が高いと言えるでしょう。地震の発生確率が他と比べて低いとされる地域もありますが、それでもゼロではありません。実際に地震が起こった際に生活が厳しくなるのであれば地震保険の必要性は高いでしょう。

また、日本全国どこでも地震のリスクはありますが、津波や土砂崩れ、火災の延焼のリスクが高い地域に住む人は必要性が高まります。揺れ自体で被害を受けなくてもこれらによって住宅が被害を受ける可能性があります。地震が原因の被害は火災保険では補償されないので注意が必要です。

必要性の低い人

  • 被災後に自力で生活を立て直せる貯蓄がある人
  • 生活を立て直すまで親類などに頼ることができる人

地震等の被害にあっても経済的なリスクが生じない、貯蓄などから十分に賄えるのであれば地震保険の必要性は低いと言えます。被害を受ける確率が「低い」というのでは必要性が低いことにはつながりませんので注意してください。実際に被害を受けてしまったときに経済的なリスクが生じるかで考えるようにしましょう。

まとめ

地震保険について、被害の全額が補償されるわけではない、保険料が高い、建物の耐震性が高いなどの理由で必要がないと考える人もいます。しかし、地震保険に加入していれば被災後早期にまとまったお金を受け取れます。また、耐震性に優れていても津波や周囲からの延焼のリスクもあります。公的支援のみで生活を再建するのは難しいため、地震等の被害で経済的なリスクが生じるのであれば地震保険に加入する必要性が高いと言えるでしょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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「保険(Insurance)」とインターネット「ウェブ(Web)」の融合から、サイト名『インズウェブ(InsWeb)』が誕生しました。自動車保険の見積もりを中心として2000年からサービスを提供しています。現在の運営会社はSBIホールディングス株式会社となり、公正かつ中立的な立場で自動車保険のみならず火災保険に関する様々なお役立ち情報も提供しています。

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