火災保険の基礎知識

罹災証明書とは?どこで発行される?

投稿日:2019年10月3日 更新日:

自然災害や火災の被害を受けた後、火災保険を使ったり被災者支援を受けたりするのに罹災証明書の提出が必要となる場合があります。罹災証明書とはどのようなものか、どこで発行されるものなのかなど罹災証明書に関する基礎知識を紹介します。

罹災証明書とは

罹災証明書とは火災や風水害、地震などで被災した家屋などの被害の程度を証明する書類です。被災者の申請により各市区町村が家屋などの被害の状況を調査して、「全壊」「大規模半壊」「半壊」などの被害の程度の認定を行います。災害対策基本法により、市町村長は災害が発生した場合に、被災者から申請があったときは遅滞なく住家やその他種類の被害の状況を調査して罹災証明書を交付しなければならないとされています。被災者が各種支援の適用を受ける際の判断材料として使われることも多く、火災や自然災害の被害に遭ったらできるだけ早く申請した方がよいでしょう。

罹災証明書はどこで発行される?

罹災証明書の発行の申請場所は火災かその他の自然災害かで異なります。火災の場合は所轄の消防署、自然災害の場合は各自治体の担当部署に申請することで交付を受けることができます。

申請から交付までの流れ

罹災証明書の発行の申請から交付されるまでの大まかな流れを紹介します。

step
1
被害状況が分かる写真を撮る

申請に必要となるので、事前に被害状況が分かる写真を撮っておきましょう。複数方向から被害部分が明確に分かるように撮りましょう。被害状況が分かる写真は罹災証明書の申請のほか、火災保険の請求にも必要となってくるので複数枚用意しておくとよいでしょう。

step
2
消防署や自治体に申請する

火災の場合は消防署に、自然災害の場合は自治体に罹災証明書の発行の申請を行いましょう。申請には身分証明書や被害状況が分かる写真、印鑑、本人以外の場合は委任状が必要となります。可能であれば事前に必要となるものを消防署や自治体に尋ねておくとよいでしょう。

step
3
被害状況の調査

国が定めた調査方法によって委嘱を受けた調査員(通常は建築士)が調査を行います。大規模な災害や糸魚川の大火のような広範囲の火災の場合は調査が行われるまでに時間がかかる場合があります。

step
4
被害の程度の認定

調査の結果によって「全壊」「大規模半壊」「半壊」などの被害の程度が認定されます。被害を受けた事実を確認できないと被害の認定がされなかったり軽い区分での認定となったりします。被災後の写真があればそれをもとに認定が行われることもあるので、Step1の通りに被災後の被害の状況の写真を撮ることが重要となります。

step
5
罹災証明書の交付

被害の程度の認定に基づいて罹災証明書の発行・交付が行われます。

被害の程度の認定基準は?

被害の程度の判定は内閣府が定める「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」に基づいて行われます。災害の種類ごとに被害認定方法が定められていますが、全体としては以下の損壊基準判定または損害基準判定のいずれかで被害認定が行われます。

全壊大規模半壊半壊
損壊基準判定
住家の損壊、焼失、流失した部分の床面積の延べ床面積に占める損壊割合
70%以上50%以上70%未満20%以上50%未満
損害基準判定
住家の主要な構成要素の経済的被害の住家全体に占める損害割合
50%以上40%以上50%未満20%以上40%未満

半壊に至らない一部損壊の場合、現行の制度では国の支援対象外となっています。しかし、9月に発生した台風15号での千葉県の被害など特例措置で一部損壊でも支援を受けることができることがあります。

被災後に受けられる支援・制度

被災後に罹災証明書の発行によって受けられる支援や制度について紹介します。

給付

被災者生活再建支援金

被災者生活再建支援法に基づき、自然災害により居住する居住する住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に、被災者生活再建支援金が支給されます。

支給される支援金は住宅の被害状況に応じて支払われる基礎支援金と住宅の再建方法に応じて支払われる加算支援金があります。

基礎支援金

被害の程度全壊解体長期避難大規模半壊
支給額100万円100万円100万円50万円

加算支援金

再建方法建設・購入補修賃貸(公営住宅以外)
支給額200万円100万円50万円

※基礎支援金、加算支援金ともに世帯人数が1人の場合は支給額が4分の3になります。

義捐金

集められた災害義捐金の配分についても罹災証明書に基づいて行われることが多いです。全壊など被害の程度が大きいほど配分額も多く、一部損壊など被害の程度が小さいほど配分額も少なくなる傾向にあります。

融資

住宅金融支援機構融資

災害により住宅が「全壊」、「大規模半壊」または「半壊」した旨の罹災証明書の交付を受けている場合、住宅復旧のための建設資金または購入資金に対して住宅金融支援機構から災害復興住宅融資を受けることができます。

利用条件や金利情報、必要書類などについては住宅金融支援機構の公式サイトをご確認ください。

災害援護資金

都道府県内で災害救助法が適用された市町村が1以上ある災害について、その災害で負傷または住居、家財に被害を受けた場合に年利3%(据置期間中は無利子)で市町村から融資を受けることができます。貸付限度額は世帯主の負傷状況や住居、家財の損害状況に応じて変化し、最大で350万円です。

減免・猶予

被害状況によって税金や保険料、公共料金などの減免や猶予を受けられる場合があります。対象は所得税や住民税、固定資産税、後期高齢者医療保険料、国民年金保険料などです。申請書の提出や確定申告が必要となるので、被害を受けた場合は忘れずに申請・申告を行いましょう。

現物支給

災害救助法に基づく応急仮設住宅

住宅が全壊、全焼、流出などして居住する住家がなく、自らの資金で住宅を得ることができない人を対象として応急仮設住宅の紹介を受けることができます。後述の住宅の応急修理を受ける場合は紹介を受けることができません。

住宅の応急修理

災害のために住居が半壊、半焼の被害を受けて、そのままでは居住できないものの応急的に修理すれば居住可能となり、かつ、資力が少なくて自力で修理ができない場合に自治体が必要最小限の修理を行う制度です。応急仮設住宅の入居者は対象外となります。

まとめ

火災や自然災害による被害を受けた場合、さまざまな公的支援を受けたり保険金を請求したりするのに罹災証明書が必要となることがあります。罹災証明書は火災の場合は消防署に、自然災害の場合は自治体に交付の申請を行います。公的支援を受けたり義捐金の支給を受けたりするのに必要となることが多く、災害の被害に遭った場合には忘れずに申請を行うようにしましょう。


堀田健太

著者情報

堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。

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