地震大国の日本ではいつ大きな地震の被害に遭ってもおかしくはありません。地震による被害に備えて地震保険に加入している人もいると思いますが、実際に被害を受けてしまった場合、どのように地震保険を請求すればよいのでしょうか。
目次
地震保険の対象となる損害
まずは、どのような損害を受けた時に地震保険の請求ができるのか説明します。地震保険の対象となるのは、地震・噴火またはこれらによって起こった津波を直接・間接原因とした火災・損壊・埋没・流出で、保険の対象となっている居住用の建物や家財に生じた損害です。具体的には以下のような損害が対象になります。
補償を受けられる事例
- 地震による揺れで外壁や基礎にクラックが生じた
- 地震による揺れで建物が倒壊した
- 地震による揺れで食器が割れた
- 地震による揺れで家具・家電などが倒れて破損した
- 地震による揺れでストーブが倒れ、火災になった
- 地震による揺れで液状化現象が起こり、建物が傾いた
- 地震や火山の噴火で津波が起こって建物が流出した
- 噴火による溶岩流や噴石、火山灰、爆風によって倒壊・埋没した
- 噴火による火砕流で建物が燃えた
- 地震や噴火による土砂崩れで建物が流出や埋没した
なお、上のような事例のすべての損害で保険金が支払われるのではなく、損害の程度が一程度を超える必要があります。損害の認定基準は以下の通りです。
損害の程度 | 建物の基準 | 家財の基準 |
---|---|---|
全損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合 |
大半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合 |
小半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合 |
一部損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合 |
一部損に満たない損害については保険金が支払われません。
支払われる保険金
上で紹介した損害の程度に応じて保険金が支払われます。支払われる保険金は以下の通りです。
損害の程度 | 保険金支払い額(建物・家財) |
---|---|
全損 | 地震保険の保険金額の100%(時価額が限度) |
大半損 | 地震保険の保険金額の60%(時価額の60%が限度) |
小半損 | 地震保険の保険金額の30%(時価額の30%が限度) |
一部損 | 地震保険の保険金額の5%(時価額の5%が限度) |
なお、地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30%~50%の範囲で、上限金額は建物が5,000万円、家財が1,000万円です。
地震保険の保険金請求の流れ
実際に地震等で損害が発生したときに、どのような流れで保険金の請求・支払が行われるのか紹介します。保険金の請求・支払の流れは以下の通りです。
- 加入している保険会社に連絡する(契約者側)
- 保険会社による事故受付(保険会社側)
- 被害状況確認のための訪問日の調整(契約者側・保険会社側)
- 保険会社委託の鑑定会社の鑑定人が被害状況の確認(保険会社側)
- 調査結果から支払保険金を算出(保険会社側)
- 支払内容の確認・了承(契約者側)
- 保険金の支払(保険会社側)
- 着金の確認(契約者側)
保険金の請求期限は3年
特に大規模な地震等の場合、様々な理由ですぐには保険金の請求をするのが難しいことがあります。そのような場合でも、保険金の請求期限は3年なので安心してください。心身ともに落ち着いて保険金の請求ができる状況になったら保険金の請求を行いましょう。ただし、保険金は請求しないと受け取れないので忘れてしまわないように気をつけましょう。
よくある質問
地震保険の請求に関してよくある質問とその答えをまとめました。
被害の査定結果に納得がいかない場合は?
地震保険の保険金は、全損・大半損・小半損・一部損という被害状況に応じて支払われますが、被害状況の査定結果に納得がいかない場合も出てくることがあるでしょう。
その場合は、損害個所に見落としがないか再度確認したり、保険会社に連絡して再度被害状況の確認をしてもらえないか交渉したりしましょう。大規模な災害の場合は多くの住宅を確認する必要があるので見落としが発生することもあり得ます。再度の査定結果にも納得がいかない場合は、日本損害保険協会にそんぽADRセンターが設置されているので、そこで相談をしてみてください。
地震等で損害を受けた場所は片付けてもいい?
特に大規模な地震などでは、訪問による被害状況の確認までに多くの日数がかかる場合があります。その場合、被害個所の片づけや修理を行ってもよいのでしょうか?答えとしては、片付けや修理を行っても大丈夫ですが、損害個所の写真撮影が必要です。どの程度の被害を受けたのかの記録がないと被害状況の確認ができません。写真は、被害を受けた建物や家財の全体を撮影した写真と損害個所を確認できる写真を撮影してください。
地震で被災した後にまた余震による被害を受けたら?
地震の場合、本震で被害を受けた後に余震で被害が拡大することがあります。また、2016年の熊本地震のように、最大震度7の前震が発生した後に、さらに最大震度7の本震が発生する可能性もあります。地震保険では、地震災害発生後72時間以内に起きた地震については一つの地震としてカウントされることとなっています。
まとめ
地震等の被害を受けた時は、保険会社に連絡して保険金の請求を行いましょう。訪問による被害状況の確認の上で、損害の程度に応じて定められた保険金が支払われます。保険金の請求期限は3年なのですぐに請求できない場合でも安心して、落ち着いてから請求を行ってください。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。